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君との話  作者: tc


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3/7

彩り

あの日の夜、僕は勇気が出なくてさ、君を抱き寄せることさえもできなかったんだ。

告白する勇気はあったのに、おかしいね。


その日から僕の灰色の日常は、鮮やかになった。

朝の曇り空でさえ彩りがあるように感じられた。

君もきっとそうだったとしたら、嬉しいななんて僕は思いながら


2人のやりとりは、前より少し熱を帯びてた。


君と僕は、毎週日曜日デートに行っていたね。

僕と出会う前からの約束で、暫く土曜日は予定が埋まってるって君は申し訳なさそうに言ったっけ。

僕は君を困らせたくなくて、「行っておいで、日曜日には独り占めできるから」なんて気丈に振る舞ったけど、心のどこかでは淋しさを感じていたよ。


日曜日で次の日が仕事ということもあって、夜遅くまでのデートはできない代わりに朝からドライブに出たりしたね。

デートの前の日は、2人の好きな曲のプレイリストを作ったり、洋服を考えたり、年甲斐にもなく今恋してるんだなって実感した。


2人のデートで欠かせないのは、出会いのきっかけの海、あの日の海ほどじゃないけど海を見てると心が落ち着くねなんて2人で話してた。


海が綺麗に見えるスポットに着いたのに、潮が引いていた時も「また一緒にくる口実ができたね」なんて君が言うもんだから、僕も「絶対ね!」なんて言ったりもしたな。


思いつきで、城跡とかも見に行ったね。

僕が「城を見学するときは、攻める人の気持ちで楽しんだらいいんだって」と言うと君は槍を構える振りなんかして、息を切らしながら2人で大笑いしたのもいい思い出だ。


夜の動物園も2人で行ったりしたね。

まだ少し肌寒い季節に、周りが暗いのもあって君が怖がるもんだから「じゃあ、手繋ごう、そしたら何かあったときすぐ守れるし」なんて尤もらしい、恥ずかしいセリフを僕は言って、君の手を握った。

君の体温を手から感じられて、僕はすごくドキドキしてたと思う。


この幸せな時間がこれからもずっと続くことを思い描いて、僕は君の笑顔をこの特等席で見ていけるんだって、確証もない謎の自信に溢れてたな。



あの日君は珍しく職場の愚痴を溢したね。

意地悪されて、何度も泣かされた上司とやっと離れられたのに、次の異動でまたその上司のいるところに行くことになったとか、その上司にどんなことを言われたとか。

僕は君に同調して、味方になることしかできなかったな、本当は職場まで行ってやっつけてあげたかったけど。


別れ際、僕は君を抱き寄せた。

「好きだよ、頑張れ」って、僕の最大限の応援を君に送った、君も「ありがとう」って言ってその日は終わって行った。


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