1-6:新人組の顔合わせ
2026/05/13 用語微調整
昼の日差しが差し込む冒険者ギルド待合室。その片隅のテーブルにまだ若い5人の冒険者がやや緊張した面持ちで集まっていた。その中で4人は少女だがそれぞれ知り合いというわけでもないようで特に会話もしていない。ただ一人の少年はそのうちの一人とは知り合いのようでチラチラと視線を送っているが相手にされず所在なげに黙っている。
彼らがそろそろ発言するべきかをうかがっていたその時、ギルドの扉が開いて一人の少年が入ってきた。そのままカウンターへ向かって受付嬢へ声をかけ、受付嬢は彼らの座るテーブルを示す。そしてその少年は彼らのテーブルへとやってきて挨拶をした。
「はじめまして。ディーンさんから紹介されてきました。17番隊の皆さんですよね」
ややホッとした表情で立ち上がってそれに応えたのはただ一人の少年だった。
「ああ。よく来てくれた。女ばかりに俺一人でどうしようかと思ってたんだ。自己紹介しようとしたら『みんなが揃ってからにしましょう』とか言われるし」
ガッチリと握手をしてブンブン振りながらそう言う少年は心底安心しているようだ。
「ねえカール。みんな揃ったんだから、その自己紹介からはじめようよ」
隣から声をかけたのはカールと呼ばれた少年と知り合いと見える少女だ。
「ああ、そうだな。じゃあオレから。名前はカールで16歳。職業は軽戦士だ。勇者様からは一応リーダーに指名されている。君の名前は?」
カールが装備しているのは要所を金属で補強された革鎧だった。腰に佩いた剣はチャールから見てもかなり使い込まれた感じがする。
「あ、僕はチャール。15歳で薬師です。半端だけど一応回復系の呪文もつかえます」
カールに振られてやや慌てながらチャールが自己紹介をしてカールの隣、一番外側に腰を掛けた。
「アタシはディア。カールとは幼馴染で一つ上なんだ。魔法使いだよ」
次に自己紹介をしたのはカールの隣りに座っていたいかにも魔法使いというローブ姿の少女だった。魔法使いというにはちょっと元気な感じだ。
「わたしの名前はシンディー、17歳。見ての通りわたしも戦士ね」
流れで座っていた順番で自己紹介したのは落ち着いた雰囲気の少女だった。大きめの盾を持っているのを見ると防御が主体の重戦士だろう。
「わたくしはフリーデ。16歳で神官ですわ。得意なのは回復魔法ですわね」
さらに隣りにいたのは自信有りげな神官服の少女。その手の錫杖はチャールもよく知っている教会で使われている様式だ。
「エルゼ、18歳。どうやら最年長ですね。私は野伏ですけど一応鍵開けや室内の罠も対処できるよう訓練しました」
最後に自己紹介をしたのは動きやすそうな軽装の大人しげな少女。服装も地味であるが性格も控えめなようだ。
「よし、一通り自己紹介は済んだな。じゃあオレ達の初仕事の打ち合わせといくか。まあ勇者様の仲間が選んでくれた初心者向けの依頼だがな」
カールはそう言って一枚の依頼書をテーブルに置いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
依頼の目的地である洞窟に侵入した一行は小声で打ち合わせつつ奥へ進んでいた。
「入口にいた見張りのゴブリンは大したことなかったですわね」
「エルゼが先行して奇襲に有利な地点を見つけてくれたからでしょう。油断は禁物ですよ」
二列で進む最後方で軽口を叩くフリーデを前方のシンディーがたしなめる。
「見張りを置く程度には用心してるんだ。十分注意してくれよ。索敵はどうなってる?」
「アタシの魔法の範囲内では奥に数体いるけど動きはないわよ。見張りを倒したのに気付いて待ち構えてるのか気付かず油断してるのかはわからないけど」
中央で指揮を取るカールの言葉に隣のディアが返す。どうやら近くに敵はいないようだ。
「あっ!」
「どうしたチャール、なにかあったのか?」
最後尾で声を上げたチャールにカールが問いかける。
「いえ、すみません。珍しいキノコが生えてたもので。ちょっと採取してもいいですか」
「紛らわしいですわね。そんなのは帰りになさいませ」
隣のフリーデはチャールに対してちょっと当たりがきつい。彼女から見ると『教会にいたというのに神職を目指さなかっただめなやつ』という評価のようだ。宗派が同じだけに厳しいのかもしれない。
「この洞窟は村の人たちがキノコを栽培してたというからな。条件は良いんだろうが今は奥のゴブリンを優先しよう。村の人によるとそれほど深くないらしいしな」
カールもキノコについてはフリーデに同意してさらに奥へ進んでいく。
「あ、ちょっと待って。急ごしらえだけど罠が仕掛けてある」
先頭でシンディーと並んでいたエルゼが罠を発見した。仕掛けられてから間もないし偽装も時間をかけた様子がないようだ。
「慌てて仕掛けたってことは待ち構えている確率が高いか。もうすぐ一番奥のはずだよな。ディア、攻撃魔法の射程に入ったら先制攻撃だ。チャールも見えなくてもいいから弓撃っとけ」
「わかったわ。……あと10歩ぐらいね……いくわよ」
ディアが呪文を唱えて火球を飛ばすのに合わせてチャールも見えないながらも前方に矢を放つ。
「ギャッ!」
炸裂した火球はゴブリンたちに直撃はしなかったようだ。待ち伏せても意味がないと思ったか一斉に襲いかかってくる。
「オレが前に出るからエルゼは下がれ。シンディーはできるだけ止めろ。他のみんなは距離取って援護を」
カールが指示を出してすぐに乱戦に突入した。狭い洞窟内は小柄なゴブリンたちには有利であり、剣を振りにくそうにしているカールとシンディーも結構苦戦している。すり抜けてきたゴブリンをフリーデが錫杖で殴りつけるような場面まであったが、かろうじてゴブリンを一掃することには成功した。
「あ、こっちの壁が崩れてますね。何か奥へ繋がってるみたいです」
フリーデの魔法とチャールの回復薬で負傷の治療をしている間に周囲を確認していたエルゼがまだ新しげな通路を見つけた。
「どうするの、カール」
「……ゴブリンはこの先から来たのかもしれない。調べに行こう」




