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半端者の回復術者  作者: 散散満
第1章:教会育ちの少年

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1-5:初心者研修会

 穏やかに晴れたとある日、人里離れた森の中を男ばかり数名のパーティーが進んでいた。指揮を取っているのは意外にもその中で一番若いまだ少年と呼べるような軽装の男だ。


「多分これが狼の通った跡ですね。こちらの方にいるはずです。ニコさん、魔法での警戒お願いしますね」


「了解リーダー。こっちの方向だけでいいかい」


 答えたのは柔和な感じの青年だった。こちらも軽装で魔法使いらしく杖を持っている。


「はい。目標は凶暴化した狼ということだから普段のような警戒もしていないと思います。普通の狼はもっと慎重で集団相手なら襲ってきませんから」


 少年はそれなりに山と動物には詳しいようだ。


「では僕が先頭で跡を辿ります。マーカスさんが僕の後ろで警戒してください。ニコさんがその後で引き続き索敵、オデロさんがその後で、背後の守りがリンジーさんで行きましょう」


 マーカスと呼ばれた男は大柄な金属鎧で大きな盾を持った重装備の戦士、オデロは神官風の服装の男、リンジーも金属鎧だがマーカスよりは速度重視の軽量型。全員が指揮を取る少年よりも年上の青年だったが気にすることもなく少年の指示通りに動いている。


「いました。100歩ほど先です。まだこちらに気づいている様子はないですがかなり気が立っている様子ですね」


 索敵魔法を使っていたニコが目標を補足したことを告げる。


「こっちに気がついたら逃げると思います? それとも襲ってくるか」


 リーダーがそう尋ねるのにはオデロが返した。


「僕は襲ってくると思いますね。そもそも人里近くまで現れて数人でいるのに迫ってきたからこその討伐依頼でしょう。こちらが集団でも見つければ襲ってくるでしょう」


「そうですね。では前進しましょう」


 一行が追跡を再開してそうそうにニコが警告を発する。


「気づいたようです。やはりこちらに向かってきますね」


「マーカスさん、リンジーさん、前へ。ニコさんは攻撃魔法の準備を。オデロさんはマーカスさんに防御力強化を!」


「おう!」


 リーダーの少年が指示を飛ばし全員が行動を開始するが隊列を変更している最中にも狼が現れて先頭になったマーカスに飛びかかった。マーカスは盾を構えてそれを防いで押し返し、後方から走り込んだリンジーが剣を振るうが狼は後方へ飛んで躱す。そこへリーダーの少年が弓を向け矢を放つがこれも横に飛んで避ける。そこへニコが魔法で作った石弾を複数まとめて撃ち放ち数発が狼に当たる。凶暴化している狼はそれにも怯まずさらにマーカスに飛びかかるが先程よりもやや動きが遅く、マーカスは盾を使って今度は地面に叩きつけるように殴る。動きが止まったところにリンジーが首元を貫き、狼はどうっと倒れた。


「なんとか倒せたようですね」


 リーダーの少年がおそるおそるという感じで狼の様子を窺う。その横からマーカスが大剣を突き出して狼の胸を突く。


「ギャンっ!」


 一声悲鳴を上げて今度こそ狼は絶命した。


「よーし、討伐終了だ。では反省会と行こうか、チャール」


 リンジーはリーダーの、いや、リーダーをやっていた少年に話しかけた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「まずだな、お前さんは言葉遣いが丁寧すぎるぞ。リーダーをやるんならもっとドンと構えて偉そうにしてるぐらいでちょうどいい」


 チャールにそう話しかけたのはこのグループの本来のリーダーであるリンジーだった。一同はやや開けた場所まで移動して火を起こし食事をしながら話をしている。なお狼は解体して牙や毛皮を確保しているが病気を恐れて肉類は地に埋めた。


「僕は商家の出身で教会で働いていましたからね。こういう話し方が染み付いているんですよ。リーダーの器でもないし」


 答えるチャールだがそれほど反省している様子もない。今回はチャールの冒険者修業の仕上げとして指揮を取らされたが本業は薬師で補助(サポート)役なのだ。


「まあこれも経験というやつだ。他のやつも気になったところがあったらどんどん言ってやれ」


 リンジーも指導員という立場上苦言を言うが実際はあまり細かいことは気にしていないようだ。


「狼の通った跡を見つけて追うのはなかなかでしたが、その分周囲への警戒がおろそかでしたね」


 そう言ったのは魔法使いのニコだった。


「いや、それはニコさんの索敵魔法を信頼していたからで。山歩きは素材採取で慣れてましたし」


「信頼するのと油断するのは違うぞ。さっきの追跡でもニコが狼を見つけたあとはオレが先頭に変わるべきだったと思う。まあいざというときには襟首引っ掴んで後ろに放り投げるつもりだったがな」


 言い訳をするチャールをたしなめたのはマーカスだった。


「回復役が真っ先に怪我をしたらダメですからね。僕は今回は予備だったんですから注意しないと」


 パーティーの本来の回復役オデロも賛同するのにチャールは唸るぐらいしかできない。


「まあ一応修了試験は合格だ。勇者(ディーン)が選んだ新人たちのパーティーに加わって経験を積むんだな」


 リンジーがチャールの合格を宣言する。


「ありがとうございます。僕の他のメンバーはどんな人なんです?」


「俺も詳しくは知らないが、戦士のカールとシンディー、魔法使いのディアに野伏(レンジャー)のエルゼ、回復役(ヒーラー)がフリーデっていうらしいぞ。ちなみにカール以外は女だ。いろいろ大変かもしれないが頑張れよ」

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