1-4:冒険者への道
勇者パーティーによるチャールの『半回復』の効果検証はまだ続いていた。
「僕が試したときはそもそも魔法の発動率だってだいたい半々だったんですよ。それが今回連続して成功したっていうのは『勇者の仲間』に入れてもらったからなんでしょうか」
「これはあたしの予想なんだけど……っと、チャールくんって割り算はわかるかしら」
なにかを言いかけた回復役のアンジェがチャールの能力を確認する。
「ええ、僕は商売やってる家の四男坊で、兄たちになにかあったときのために読み書き計算は仕込まれましたから。割合の計算だって大丈夫です」
それを聞いたアンジェは安心したように話を続けた。
「それなら話しやすいわね。あなたの『半回復』っていうのは『減っているHPの半分だけ回復する』っていうものらしいっていうのはもう話してるわよね。でも、減っているHPが半分で割り切れない数字だったら余りは切り捨てられているみたいなの」
「えっと、それは魔法の発動率とどう関係してくるんでしょう?」
アンジェの説明を聞いてもチャールはいまいちピンときていないようだ。
「えっとね、例えばさっきのエドワードさんのHPなんだけど計算すると……あと10回『半回復』を使ったら最大HPが10255に対して10254、残り1ポイントまで回復するわ。というとどうなるかわかる?」
それを聞いてチャールはあっという顔をする。
「そうか、残り1Pの半分、二分の一は切り捨てられてしまって回復しない。それが魔法が発動しないっていうことなのか」
「さっきエドワードさんに使ってた半回復の回復量を見てたら奇数の場合は切り捨てだったわ。確認はして無いけど多分そうなると思う。チャールくんが試したときって軽い怪我の人ばかりだったんじゃないかしら。それこそHPでいうなら減ったのが1か2ぐらいの」
「そうですね。教会では大きな怪我人は兄弟子や司祭様が担当しますから。見習いの僕が担当するのは転んで膝を擦りむいた子供とか仕事中に折れた釘で怪我をした大工さんとかぐらいですし」
「それならやっぱり軽い怪我でしか試したことがなかったのね。普通の人だと子供ならHP10ぐらい、普通の大人で50超えるぐらい、頑丈な人なら100程度ってところなのよ。そこそこの怪我でもHPの減少量で言ったら1か2程度になると思うわ」
「それじゃあ村で仕事をしているときはやっぱり今まで通りってことですか」
「残念だろうけどそうなるわね。ちなみに冒険者として鍛えるとHPは500ぐらいまでは伸びるのよ。あたしたちは『勇者の仲間』としての加護でその数倍から十倍ぐらいになってるけど」
「じゃあ僕が他の魔法を覚えられないっていうのはなぜなんでしょう。初歩の『回復』も覚えられないんです」
「あら、そんなこともあるの。そうね、ちょっと詳しく調べてもいいかしら」
「はい、ぜひお願いします」
もしかしたら回復魔法を覚える方法がわかるかもしれないと期待しながらチャールが答える。
「じゃあ……『ステータス・A』」
アンジェはそう唱えるとチャールの方をじっと見ている。そのアンジェに変わってディーンが説明してくれた。
「いまアンジェが使っているのは『ステータス・C』よりも更に詳しく対象の情報を確認できる技能なんだ。細かいことまでわかるけど情報が多すぎて普段使うには向いていないんだ。身長体重とかのデータまで見られるから迂闊に女性に使っちゃいけないよ」
「わかりました。使いません」
「まあこのあと『勇者の仲間』から外れてもらったら使えなくなるけどね。さて、アンジェ。なにかわかったかな」
「うん、『半回復』って習得可能レベルは低いのにSPの消費が恐ろしく多いみたいなの。駆け出しの魔法使いがこんなの覚えたらもうしばらくはなにも覚えられないわ」
「なんですか、そのSPって?」
「えーっと、簡単に言うと『技能を覚えられる枠』みたいなものね。たとえば初級魔法の『回復』ならこの枠を二つ使って覚えるのよ。普通の人は大体10ぐらいあるんだけど、チャールくんはもう残りが一つしかないわ」
「それじゃあ僕はもうずっと魔法を覚えられないんですか?」
ちょっと絶望した面持ちでチャールが唸る。
「修業を続けていけば持ってるSPも増えていくから無理じゃないわ。でも普通に仕事してるだけだとかなりの時間がかかりそうね」
「時間がかかる……」
多少は持ち直したチャールだが依然として明るい将来像が見えてこない。そんなチャールにディーンが声を掛ける。
「それでだね、ちょっと提案があるんだがチャール君は冒険者になるつもりはないかい?」
「僕が、冒険者ですか?」
チャールは面食らったような表情で聞き返す。
「うん、大きな怪我をある程度までなら回復できるけど小さな怪我には非効率というのは日常生活よりも冒険者向けだ」
答えるディーンに続いてエドワードが補足する。
「実は俺達は冒険者全体の底上げも目標にしていてね。何か変わった技能を持っているならいつか役に立つかもしれないと声をかけるようにしているんだ。俺達の紹介なら冒険者ギルドの育成メニューを受けられる。どうだろう、とりあえずやってみないか?」
言われたチャールは俯いてじっと考えている。そしてしばらくして上げた顔には決意の表情が浮かんでいた。
「わかりました。僕を冒険者にしてください」
そこから数カ月、チャールは冒険者としての基本をみっちり叩き込まれることとなる。
たぶん今後はそれほど細かく気にしなくて良い設定
『回復』:回復量100程度
『中回復』:同500程度
『大回復』:同2000程度




