1-3:勇者の能力
チャールが住む村からほど近い森の中で彼は『勇者』を名乗る青年ディーンの一行と再会していた。
「それじゃあ『勇者』っていうのは天より与えられた称号みたいなものなんですか」
以前に出会ったときにチャールが使った『半回復』の魔法に興味を持ったらしいディーンはまず自己紹介からはじめていた。
「まあそんなところだが、それに付随していくつかの特殊な技能も与えられているんだ。君の使った魔法もその技能を使うと実に興味深くてね」
ディーンはそこで少し間をおいた。
「説明するよりも実際に見てもらったほうが早いかな。実は『勇者』の仲間は勇者の技能の一部が使えるんだ。これから君を一時的に『仲間』にしようと思うがいいかな」
「ええ、問題ない、と思います。一時的にってことは元に戻れるんですよね。勇者様と一緒に戦えなんて言われたら困ります」
「それは問題なく仲間から外れてもらうこともできる。では……『チャールを仲間と認める』」
ディーンがそう宣言するとチャールの中に魔力に似た何かが入り込むような感触があった。
「えっと、なんがかちょっと身体が軽い気がします。あとなにか周りの音がよく聞こえるような」
「全体的に身体能力が強化されているから普段より遠くも見えると思うし、今は昼だからわからないが暗いところもある程度見えるはずだ。筋力も強化されているから自分の体も軽いだろう。だがそれだけじゃないぞ。こう唱えてくれ『ステータス・C』」
「えっと、『ステータス・C』」
チャールがそう唱えると視界の隅に上下に二本並んだ淡い緑に光る棒が現れた。その左にはそれぞれ『HP』,『MP』という文字が、右には数字で『85/85』『177/177』と出ている。
視覚的に表現するとこんな感じだ。
HP■■■■■■■■■■■85/85
MP■■■■■■■■■■■177/177
「これは一体……HPやMPって?」
問うでもなくつぶやいたチャールにディーンが答える。
「HPとは体力に近いが気力も含むみたいな感じで……まあ簡単に言うと『攻撃を受けても耐えられる許容量』だ。MPってのは魔力だな。数字は現在値と最大量だ」
言われてそちらに向き直るとディーンの頭上にも同じようなものが見える。ただその数字が5693/7866、7732/14643と文字通り桁が違っているし、棒の方も一色ではなく途中から赤色に変わっている。
「わたしの上にも見えるだろう。これは緑と赤の比率が残りとダメージ分になっていて咄嗟にも判断しやすいし、対峙した相手のも見えるから有利に戦える。勇者とその仲間だけが保つ技能だ」
チャールは言葉もなく頷きながら聞いている。
「それでだね、このあいだ君がハックに呪文を使っただろう。ハックの最大HPは大体5500なんだが、あのときは黒狼の攻撃が急所に入って一気に残り100近くまで減っていたんだ。それが君の呪文を受けたら2800ぐらいまで回復していたが、この回復量は上級呪文の『大回復』をも上回っている」
「まさかそんな。僕の『半回復』は軽い傷も癒せない魔法ですよ」
「だが事実だ。しかもあの時に君のMPはほんの僅かしか減っていなかった。そもそも君の魔力量では『大回復』は使えないはずだ。それにもかかわらずあの魔法は『大回復』以上の効果を見せた。実に興味深いよ」
「でも、昨日も救護所で使ってみたんですがやっぱり半分ぐらいしか発動しないし、軽い傷でも完全に癒せなかったし。なにかの間違いじゃ」
「だからそれを確かめてみたいんだ。ちょうどこちらも戦闘が終わったばかりでまだ負傷を回復していなかったしね」
そういうとディーンは仲間の方に顔を向ける。
「エド。ちょっといいかな」
「おう、要するにこの坊やに俺の怪我を回復させたいってことだろ」
その大柄な戦士の方を見るとHPは 3130/10255 と七割近く減っている。
「エドワードは体を張って相手の攻撃を受けて味方の負担を減らす役目でね。自然と怪我も多くなるんだがその分HPの最大値も高くなっているんだ。彼なら魔法の効果がわかりやすいだろう」
それを聞いてチャールも覚悟を決める。
「わかりました。ではやってみます……『半回復!』」
緊張しながらチャールが魔法を使うとエドの身体が淡い光に包まれ、怪我が治っていく。HPの数字を見ると6692/10255となっていた。
「すごいな。3600ちかく回復しているじゃないか。回復量ならハックの時以上だ。じゃあもう一度頼む」
ディーンの声も興奮気味だ。声を出していないが仲間の魔法使いや回復役も眼を丸くしている。そしてもう一度『半回復』を使うと8473/10255まで上昇した。
「今度の回復量はおよそ1800か。さっきの半分ぐらいだがそれでも『大回復』並みだ」
「あの、ちょっといいですか。あたしの予想だともう一度今の魔法を使ったら、エドワードさんのHPはたぶん9364になると思うんですけど」
割り込んできたのは回復役のアンジェだった。
「ふむ、実はわたしもそう思っていた。チャール、もう一度やってくれるか」
それに答えてチャールが『半回復』を使うとその通り、9364/10255となる。それを確認したアンジェが話しだした。
「予想通りでしたね。えっと、チャールさん。あなたの使う『半回復』の魔法はですね、おそらく『減っているHPの半分を回復する』ってものなんです」
今後大々的に使うつもりはないんですがHPが見えないと説明しにくいんで勇者の固有技能ということに。
ちなみに『ステータス・C』は『COMPACT』で最小表示。『ステータス・B』が『BASIC』で基本表示、『ステータス・A』が『ALL』で全表示と設定しています。これもたぶんこのあと使わない。




