3-2:魔法学園都市
パーティー全体の強化を図る17番隊の面々は、特にこの周辺地域で暗躍していると思われる不死者を操る者への対策を主眼として二組に分かれて行動していた。パーティーリーダーで軽戦士のカールと魔法使いのディアが向かったのはディアが学んだ魔法学校のある都市だった。
「学校では何度か魔法の武器も見せてもらったことがあるけど、普通に売られているものじゃないからね」
街に入って学校へ向かう途中の道すがらにディアがカールに向けて話しかける。
「まあそうだろうな。それでも何か入手に繋がる手がかりぐらいはあるだろ」
カールの態度にはそれほど気負った様子はない。実際これまでも不死者を相手に付与魔法と即席武器で何とかしてきたという実績もある。魔法の武器があるといいというのはカール自身の攻撃力強化というよりはむしろ補助系人員の負担を減らすという意味が強い。そのあたりはディアのほうも承知している。
「アタシは専門じゃないけど魔法の武具や道具を研究してる先生もいるから、報告書の提出ついでにグレンダ先生に訊いてみましょ」
話しているうちに学校の正門へとたどり着いたディアは守衛室で卒業生の証のメダルを見せ来訪目的を告げる。予定表で面会予定を確認した守衛が出した確認書に署名をしたディアたちは学内に入る。
「カールはグレンダ先生に会うのは久しぶりよね」
校舎内の廊下を歩きながらディアが訊く。
「そうだな、ディアと組んで冒険者をやるって決めたときに挨拶して以来になるかな」
「あの時は『とうとう結婚の報告に来たかと思ったわ』とか言われちゃったわよねー」
ディアがケタケタと笑いながら言う。
「オレとグレンダ先生ともディアが入学以来の付き合いだったからなあ」
「そうそう、アタシが入学するのに村を出るとき『護衛だ』って勝手についてきて、そのまま学園都市で冒険者になっちゃったのよね。それからアタシが外で魔法の練習するときは付き合ってもらうようになって。時々はグレンダ先生とも会ってたもんね」
話しながら歩いていた二人はある扉の前で止まって名札と在室の表示を確認し、扉をノックする。
「ディアです。報告書の提出にきました」
ほんの少しの間を置いて中から女性の声が返ってきた。
「開いてるわよ。お入りなさい」
「失礼します」
ディアが返事をして扉を開けて室内に入り、それにカールが続く。
「久しぶりね。一緒の人は……もしかしたらカール君? ずいぶん逞しくなったわね」
「ええ、お久しぶりです。先生はお変わりありませんね」
魔法学校の教師というレベルであれば大抵は老化抑制魔法を習得しているしグレンダも例外ではないので数年程度で見た目が変わらないのはカールも想定内だった。なお男女問わず「長い時間を研究のために使うから」というのが老化抑制呪文を使う一般的な理由であるが、平均して女性の方が習得する年齢が若いという実態はある。
「先生、こちら今回の報告書です。あと、ちょっと相談したいことがあるんですが」
「あら、珍しいわね。じゃあ一通り見るからちょっと待ってね」
グレンダはディアから受け取った羊皮紙の束を素早くめくって確認する。羊皮紙は植物素材の紙よりは安いが十分に高価な品であり、報告書というレベルでも羊皮紙を使うというのは魔法に関する情報共有が重要視されているのがわかる。
「不死者に有効な魔力を帯びた魔法薬の調合書に、不死者を召喚するためと思われる魔法円の写しね。なんだか不死者づいてるわね」
一通り目を通し終わったグレンダが簡単に感想を述べる。
「そうなんですよ。それで、その魔法円を残した者がどうやらこの地域に潜伏しているらしいんです」
カールがそう答えるのにグレンダは目を丸くする。
「あら大変。それって冒険者ギルドの方へは話してあるの?」
「はい、アタシの方から報告してます。まだ上の方へ回ったぐらいだと思いますけど」
「そう。それならそのうち魔法学校にも調査協力の依頼が来るかもしれないわね。わたしは専門外だからたぶん担当にならないけど」
少し落ち着いたグレンダに対してカールが話しかける。
「まあそんなわけで、この地域で不死者が出る事件が増えそうなんですよ。それでオレの方も不死者に対抗できる魔法のかかった装備があったらいいなって」
「さっきいってた相談っていうのがそれかしら。そうね、魔法の武器防具っていうのはだいたい依頼作成ね。たまに魔法使いが実験で作って置いてあるのもあるけど、武器としては使いにくくて実用的なものは少ないわ。魔法使いは武器に詳しくはないから」
ここまではカールも予想していたことなのでうんうんと頷きながら聞いている。
「まあだけど抜け道はあるわ。実験で何か作りたいと思っている魔法使いに素材を提供するから自分の望む形状でと頼めば格安でできると思うわよ。ちょうど都合がいい実験したい魔法使いがいるかどうかだけど、不死者に効けばいいんなら属性問わず魔法がかかっていたらとりあえず当たるようにはなるから確率が上がるわ」
「わかりました。それじゃあそういう魔法使いさんを紹介していただけますか」
「そうね、知り合いに声かけておくから5日後ぐらいに来てくれる? それまでには報告書の処理も終わらせておくからディアも一緒に来てね」
「はい、先生。今日はありがとうございました」
グレンダの研究室を後にした二人は宿に向かって足を進めていた。
「あ、二人で住んでたお家がまだ残ってるわよ」
「おう、こっちに来たすぐに入った便所と炊事場が共同の安下宿だな。部屋も一人寝るのがやっとなぐらい狭かったし外にいる方が多かったけどな」
「そうよねー。アタシは学校の寮が空いたらすぐに移ったし、カールもちょっとしたらもう少しいい所に替えたのよね」
二人で思い出話をしながら宿に戻り、単独や二人でも可能なちょっとした依頼をこなしながら待つこと5日。
「グレンダ先生から紹介されましたライマーです。魔道具師を目指して修行中の学生です。性能は僕の好みで魔法の武器を作らせてもらえるんですよね」




