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半端者の回復術者  作者: 散散満
第3章:力を求める者たち

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3-1:個別強化構想

「不死者(アンデッド)を生み出す魔法使いがこの近くに潜伏しているっていうなら対策した方がいいよな」


 17番隊の面々が砦の不死者研究施設事件から三日ほど経って再度集合したとき、挨拶もそこそこにリーダーのカールが切り出したのはそんな話だった。


「普通の武器が通用しなかったのが悔しいのと魔力水の木刀でぶん殴ったのが気持ちよかったらしくてずっとその話してるのよねー」


 魔法使いのディアがそんな風に混ぜっ返す。それぞれ自由行動なのにずっと一緒だったのかなどとツッコむ人間はもはやこのパーティーには存在しない。


「魔力水は緊急だったし作っちゃったけど同じ材料を魔力回復薬(マジックポーション)にも使うからちょっともったいないんだよ。他の方法があるならその方がいいね」


 調薬師のチャールもそう言う。彼はこの自由行動中は消費した素材の補充に採取した素材の売却や加工に追われていた。


「そうそう、魔力水の調合方法(レシピ)、ありがとうね。報告書(レポート)にまとめたからあとで確認と署名(サイン)よろしく」


 ディアがチャールに礼を言う。彼女は自由行動中に魔法学会へ提出する報告書をまとめていた。魔力水の製法と実地での効果報告書以外に研究所で見つけた魔法円の報告書も同時にまとめている。


「それでな、ディアが魔法学校へ報告書の提出に行くっていうからオレも護衛がてらついていって魔法の武器でも探そうと思ってな。うまくいけば試作品が転がってるかもしれないんだと」


「アタシが勉強してた5年ぐらいの間でも1回見たことあるだけだからね。『なんか思いついたんで作ってみた』っていう高熱を発する剣が引き取り手が見つかるまで見学できたの」


 カールとディアは魔法学校行きを決めているようだ。


「そうなんだ。僕は久しぶりにウチの教会へ行って書庫を見せてもらいたいなと思ってたんだけど」


「いいんじゃないか。確かここの西隣だったよな。魔法学校はここの南隣だから何かあっても一日で合流できるだろう」


「正確にいうと隣村の更にちょっと北の小さな集落だけどね」


 カールが言う『隣り』は街道を進んだ場合の次の村のことであり、当然ながら街道沿い以外にも集落は存在する。チャールが居た教会があるのはそういう集落の一つだ。


「それでさ、できればフリーデも一緒に来てほしいんだけど」


「え、なぜわたくしを?」


 いきなり話を振られた回復役(ヒーラー)のフリーデが目を丸くしている。


「アンジェさんの話だと魔法っていうのはたくさん使うほど身体が慣れてたくさんの魔法を使えるようになるらしいんだ」


「アンジェさんって『勇者パーティー』の回復役でしたわよね」


「そう。だから僕も『半回復(ハーフヒール)』をたくさん使えば他の魔法も使えるようになるはずなんだけど、怪我をしないと半回復はつかえないだろ」


「『半回復』は軽い傷だと発動もしないんでしたわね」


 フリーデはチャールの説明を相槌を打ちながら聞いている。


「だから村近くの森で獣を狩りつつ怪我したら魔法で回復というのをやりたいんだけど、せめてあと一人回復役がいると安全になるって思ってさ」


「それってわたくしにメリットがないと思うのですけど」


 フリーデは教会行きには乗り気でないようだ。


「まったく無茶なことを考えてますね。そういうことならわたしが同行しますよ。回復の間に盾になるならできますから」


 話を聞いていた重戦士のシンディーが割り込んできた。


「来てくれるんですか。それはありがたいです」


「チャールにはいろいろ助けてもらってますからね。たまには頼ってもらいましょう」


「それなら私も行きましょうか。山の中なら役に立ちますよ」


 野伏(レンジャー)のエルゼもチャールとの同行を申し出てきた。


「願ってもないです。これなら回復も僕一人でなんとかなるかな」


「別に行きたいわけではありませんけど、いらない子みたいに言われるのは不本意ですわ」


 チャールが漏らした言葉にフリーデが不満を漏らす。


「そういう意味じゃないんだけど、乗り気じゃないなら留守番しててもいいよ。大して面白いものもない田舎の村だし」


「そうですわね。そうさせていただこうかしら」


 フリーデもそれほど気を悪くしていたわけではないようで食い下がることもない。


「じゃあ僕はジェローム司祭にこれからうかがいますって伝令(メッセージ)出しておくよ。いきなり行ったら迷惑だろうし」


 そう言って席を立ったチャールは冒険者ギルドに併設の伝令人(メッセンジャー)受付カウンターへと足を向ける。


「ちょっと待ってくださいませ。今ジェローム司祭とおっしゃってましたけど、その司祭様って年齢40超えたぐらいの長身の方ではありませんこと?」


 フリーデに引き留められたチャールは当惑しながら答える。


「えっと、僕が村を出る前に40歳のお祝いをしたから年齢はだいたいあってるね。背の高さもシンディーぐらいはあったよ」


 シンディーは17番隊で一番の長身である。


「間違いないようですわね。ではわたくしも一緒に行かせていただきますわ」


「それは構わないけど、いったいなんで急に?」


 戸惑うチャールにフリーデがやや興奮した調子で答える。


「ジェローム司祭は教会では有名な愛書家ですのよ。彼の蔵書には貴重な魔法書も多くあるという話ですの。それを見られるというなら行かないという選択肢はありませんわ」


「う、うん。じゃあ村に行くのは僕とシンディー、エルゼ、フリーデの4人だね。それで連絡しておくよ」


 今度こそ伝令人カウンターに向かおうとしたチャールを今度はカールが呼び止めた。


「そっちの滞在先も決まったんなら教えといてくれ。オレとディアへの連絡があるならディアの師匠のグレンダ宛にしてくれれば届くようにしておくから」


 こうして17番隊は少しの間は分かれて行動することになった。

連載中どこかで別行動をさせたかった。チャールにハーレム展開させたい方じゃなくてカールとディアを二人にさせたくて。その辺の描写は後の回になるけど。

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