2-8:砦の攻略
2026/08/01 主人公の職業を『薬師』から『調薬師』に変更、装備のミスを変更
チャールの作った魔力水が不死者に対して有功であると確認できた17番隊の一行はいよいよ砦の近くまで到達していた。
「なんだか実体のある相手が増えてきたよな。俺たちでも届くのはいいんだけど」
魔力水を染みこませた木刀で不死狼を殴りつけつつカールが言う。不死狼は幽霊のように一撃で霧散はしないが、もともと並の狼よりも動きが鈍い不死狼が更にギクシャクした動きとなっては追撃も容易だった。
「やっぱり砦が不死者の発生源になってるんでしょうね。近づいたら実体のある相手が増えるっていうのは霊体系は飛んで遠くまで行けるだけだと思うわ」
「そうですね。そもそも不死者系の魔物が多過ぎです。動物がゾンビ系に噛まれてゾンビ化することもありますが、動きが鈍くなったゾンビ動物は肉食動物に食われてしまいますし」
魔法使いのディアと野伏のエルゼがそれぞれ見解を述べる。
「じゃあこいつらも誰かが操っているのかな」
「ここまでの様子では行動に統制というものが感じられませんわ。なにかの発生要因があったとしても制御はされていないと思いますわよ」
調薬師のチャールと回復役のフリーデもそんな会話をしている。
「じゃああれは例外なのかしらね」
重戦士のシンディーが指さした先には砦入口の両脇に立っているスケルトンがいた。
「うーん、確かにあれは入口を守っているみたいに見えるな。誰かに命令されてるっぽいぞ」
カールも同調するが横からチャールが口を出す。
「油断せずに進まなくてはならないのは変わらないよね。ディア、魔法で中の様子はわかる?」
「うーん、さすがに元は砦だけあって索敵避けの魔法円があちこちに彫られてるのよね。アタシの魔力だとちょっと見通せないわ」
ディアがそう答えるとカールが軽く手を叩いて言った。
「よし、相手が統制をとれた行動をしてくると警戒しつつ中の様子を確認しよう。まずは入口のスケルトンを何とかするぞ。魔力水の矢で狙えるか?」
「私は大丈夫です」
「僕もいけるよ」
弓矢を得物にしているエルゼとチャールが答える。
「では私は右を。チャールは左を頼みます。私が合わせますので合図を」
「じゃあいくよ。3,2,1,ゼロ!」
火矢の油の代わりに魔力水を染みこませた矢が放たれ、スケルトンそれぞれの頭骨に命中した。スケルトンたちは少しだけガクガクと動いた後に支えを失ったように崩れ落ちる。
「やったな。じゃあ入るぞ」
カールが中を素早く確認して門をくぐると小さい広場になっていた。砦としてはここに集合して出陣する場所であり、逆に攻められたときはここで足止めする場所であろう。周囲を囲う高い壁にはそこを狙える矢狭間も見えるが矢が飛んでくる様子はない。
「待ち構えているということはないようだな」
警戒しつつも急ぎ足で広場を横切り、次の区画への門に取り付く。そのときディアが警告を発した。
「ちょっと待って。門の向こうにまたスケルトンが2体いるわ」
門の扉に手をかけていたカールの動きが止まる。
「索敵は効かないんじゃなかったのか?」
「さすがにこれだけ近いとわかるわよ」
「そうか。じゃあ動きはわかるか?」
「立ってるだけで動きはないけど、スケルトンじゃ警戒してるかもわからないわ」
「それはそうだな。じゃあ開けるからみんなもいつでも動けるようにしておいてくれ」
カールはそう言うと扉を勢いよく押し開く。向こう側にいたスケルトンは彼らを確認するとゆっくりと動き出す。
「先手必勝!です」
飛び込む準備をしていたシンディーが一気に内部へ駆け込んで道中にかけた付与効果が残っていた片手半剣でスケルトンの一体を粉砕する。残る一体はそちらに向き直った隙にカールの木刀で打ち倒された。
「まだ気付かれていないのかな」
不意打ちのような形になったことでカールが疑問を口にするがそれがわかるものはいない。
「罠ということはないでしょうか」
「確証はないけどそれはないと思う。砦というのはできるだけ外側で相手を撃退するのが理想だからな。ここで待ち伏せがないのなら大丈夫と思う」
不安げなシンディーにカールが答える。実際にそのあとも警戒しつつ進んでいったが統制のとれた迎撃行動はなく重要地点に置かれたスケルトンが数体見られただけだった。
「中の警備はスケルトンばかりですわね」
「誰かがスケルトンを作って配置したんだったら、ゾンビとかを使うのは臭くていやだったんじゃないかな」
フリーデとチャールもちょっと警戒が薄れてそんな会話をしている。そしていくつかの区画を通り過ぎた一行はとうとう砦の建物へとたどり着いた。




