2-6:砦に巣くうもの
2026/08/01 主人公の職業を『薬師』から『調薬師』に変更
村から略奪をしていたコボルトたちの集落を制圧した17番隊の面々は、コボルトたちの装備に近くの砦を築いた国の紋章があるのに気がついた。おそらくは砦から持ち出したのであり、そして砦から出なければいけない何事かがあったのであろうと判断した一行は砦の調査へと向かっていた。
「魔物が来るわ。幽霊1体」
索敵魔法を使っていたディアが警告の声を発する。
「またか、あいつらは俺たちの武器が効かないからな。また魔法で始末してくれるか?」
リーダーの軽戦士カールがぼやきつつディアに振るが、それに回復役のフリーデが割り込んできた。
「ディアさんは索敵魔法を維持していてくださいませ。ここはわたくしが」
そういって詠唱を始めたフリーデは視界に幽霊が入るなりそれを解き放つ。
「死霊退散!」
解き放たれた魔力は幽霊を包み込むと具現化し、淡い光が生まれたかと思うと幽霊は音もなく霧散する。
「やあ、さすが未来の司祭さまだ。見事なものだね」
感心した様子で感想を述べるのは調薬師のチャールだった。
「あなたはもっとがんばってくださいまし。同じ神に仕える身であったのに初歩の回復呪文も覚えていないなんて」
教会で働いていたのに神職を目指さなかったチャールに対して同じ宗派のフリーデはいろいろと手厳しい。
「まあまあ、チャールは回復薬を作って役に立ってるんだから」
二人の会話に重戦士のシンディーがフォローに入る。前衛職にとっていざというときに自分の判断で使える回復薬が無料で手に入るのは非常にありがたい。
「次、来るわよ。たぶん不死狼ね」
索敵を続けていたディアが報告する。
「今度は生ける死体かよ。不死者系が多すぎないか」
「確かにちょっとおかしいわね。それはともかくあれなら物理が効くからよろしくね」
「はあ、腐った連中は変な汁が飛ぶからイヤなんですよね」
ぼやいているシンディーとカールが前に出る。不死狼は普通の狼よりも素早さが落ちており、二人ができるだけ武器の先端で当てるようにしても苦戦することは無かった。
「いったん休憩しよう。死霊や不死者がこうも多いと何か対策した方がいいだろう」
長剣をぶんぶんと振って汁や腐肉を落としながらカールがいう。
「死霊系には物理攻撃が効かずに魔法や魔法のかかった武器が有功ですが、私たちの武器は普通のものですね。カールさんやシンディーさんの剣なら魔力付与をかければ通じますが、私たちの弓矢では一本ずつに魔力付与するのは現実的ではないですし」
野伏のエルゼが現状を整理する。
「教会で祈りを捧げた聖水も効果的ですけど、あいにくと手持ちはございませんの」
フリーデが情報を一つ追加すると、チャールが思い出したようにポンと手を打った。
「それじゃあ作ってみようか、聖水モドキ」
「神職でもないあなたに聖水が作れるんですの?」
フリーデが言い返すのにチャールが答える。
「聖水じゃなくて聖水モドキ。確か最近の研究だと死霊系には魔力そのものの放出も効果的だってあったよね」
チャールは後半をディアに向けていう。
「ああ、そういえば最近のレポートにあったわね。アタシたち魔法使いだと普通に攻撃魔法で対応してるから読み飛ばしてたけど。あのレポートチャールにも貸してたんだっけ」
「そうそう。だから素材から抽出した魔力を放出するだけの魔法薬を試作してたんだ。材料はそろってるからスープを煮込むぐらいの時間があれば作れるよ」
それを聞いたカールが決断する。
「よし、効くかもしれないんならやってみよう。他にやることはあるか?」
「じゃあ火矢みたいに聖水モドキを染みこませる布を巻いた矢を作っておいてもらえるかな。あとはいい感じで振り回せそうな木の棒とか。聖水モドキを染みこませたら殴っても効果あると思うんだ」
「そういうことならいい感じの枝使って木刀作っておこう。ディア、魔法で乾燥させることもできたよな」
「はいはい、できるわよ。そういえばカールは昔から『いい感じの棒』を見つけてきては振り回してたわよね」
「男子っていうのはそういうものなんだよ。チャールだってそうだっただろ?」
「そりゃまあやったけど」
同意するチャールを見てカールはそうだろうといわんばかりのドヤ顔をしていた。
世界観というか魔法関連設定は旧作から流用してます。




