2-4:コボルトの村を襲う
2026/06/07 17番隊を正式名称に設定
2026/08/01 主人公の職業を『薬師』から『調薬師』に変更
魔物による農村への被害を調査していた17番隊の一行はそれがコボルトによるものだろうという判断をして、その拠点があると思われる方角へと調査に向かっていた。
「足跡が新しくなってきました。数も多くなってますし、たぶん拠点は近いと思います」
先頭に立って痕跡を追っていた野伏のエルゼが報告する。
「このまま近づくのはまずいよな。回り込めるか?」
リーダーのカールの問いに応じてエルゼが周囲を大きく見回し、何やらブツブツと独り言をいいながら少し考えて答えた。
「あちらの高台が風下で拠点がありそうな場所を見下ろすことができそうです。ちょっと斜面がきつそうですが」
「わかった。それでいこう。またしばらく案内してくれ」
カールがそう指示を出してエルゼは方向を変えて道なき道を進んでいく。
「うわあ、このあたりはいい薬草がたくさん生えてますね」
調薬師のチャールはちょっと立ち止まって植物を採集し小走りで合流するというのを繰り返している。
「あなたのその道草はいつものことですけど、ほどほどになさいませ」
チャールの行動に対して回復役のフリーデが苦言を呈するのもいつものことになっている。
「まあ遅れなければいいんじゃない。アタシも魔力回復薬にはいつも助けられてるし」
魔法使いのディアはチャールの寄り道にも寛容なようである。購入すればそれなりの価格がする魔力回復薬がパーティーにいる限り無料で手に入るのは魅力なのだろう。
「こっちですね。この斜面を登ればおそらくコボルトの拠点が見えるはずです」
先導していたエルゼが足を止めてそういうと金属鎧に身を固めたシンディーが顔をしかめる。
「これはわたしの基準だと斜面じゃなくって崖っていうわね。チャール、先に登ってロープ垂らしてくれない?」
「はいはい、ちょっと荷物お願いするね」
チャールは荷物をシンディーに預けるとロープだけを肩にかけスルスルと登っていく。エルゼも職業柄身軽ではあるがこういう場所では体重の軽い小柄なチャールが有利なのである。チャールが崖の上で木に結んで下に垂らしたロープを使って全員が登っていき、最後にシンディーも半ば引き揚げられる形で登る。
「ふう、やっとついた。いつもありがとう」
登り切ったシンディーがロープを引き上げていたカールとチャールに礼を言うが返事が返ってこない。いぶかしく思ったシンディーが顔を上げると高台の先を見下ろす厳しい顔の一同が目に入ってきた。シンディーもそちらに視線を向ける。
「……なるほど、これは厳しいわね」
エルゼの予想通りその高台からはコボルトの拠点が見渡せた。地面に大きめの穴を掘って土を周囲に盛って板の屋根をかけただけの粗末な住居が見て取れる。
「あれ何匹ぐらいがいるんだろうな」
「通説だとコボルトは4匹ぐらいでまとまって一つの巣に住むというわね」
カールの問いにディアが答える。
「ということは、あそこには1,2,3……7つの巣があるから……」
「一つに4匹として28匹。もっと詰めてれば30超えるし、空き家とか倉庫もあるなら20ぐらいかもね」
計算に強いチャールが返事をする。
「少なく見ても私たちの4倍、多く見れば6倍以上ですか。正面からいっては勝ち目はないですね」
「どうする? 依頼の内容は『できれば排除』だから一度撤退して応援呼ぶという手もあるが」
リーダーのカールが意見を募る。
「見た感じではまだ拠点を拡大しているようですから、できれば今のうちに片を付けたいですね」
エルゼが指さす方を見ると確かに作りかけと見える屋根のない穴がいくつか掘られている。
「あのー、そういうことならコレ、使ってもいいかな?」
チャールがそういってここまでの道中で採っていた植物を取り出す。毒々しい赤紫の花を付けた植物が根までまるごと採取されている。
「それってアタシの記憶だとちょーっとヤバいやつよね」
どうやらディアはその植物に心当たりがあるようだ。
「大丈夫。精製して人間に使わない限りは法に触れないから。今回はそのまま使うし相手が人間じゃないから問題ないよ」
「やっぱりヤバいやつじゃないか。……で、どう使うんだ」
カールはヤバさには目をつむることにしたようだ。
「うん、こいつの花の部分を乾燥させて火をつけると気持ちよく身体の力が抜ける煙が出るんだ。風上で大量に燃やしてやればほとんど無力化できると思うよ」
チャールは大変いい笑顔でそう説明するがフリーデは疑問符を浮かべている。
「ですけどあの拠点は結構広い範囲になりますわよ。そんなに上手くいきますかしら」
「そうだね。だからもっとたくさん欲しいんだけど手伝ってもらえるかな。花以外も薬に使えるけど、今回は花だけ採ればいいからさ」
「よし、仕方ないな。みんなで草取りといこうか」
そういうカールもややうんざりした表情を浮かべていた。




