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半端者の回復術者  作者: 散散満
第2章:新人たちの冒険

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2-3:農村の脅威

 畑や農機具小屋が魔物に荒らされるのをなんとかしてほしいという村からの依頼を受け、勇者傘下の若者パーティーは現地へと赴いた。


「キャベツの畑が荒らされちゃってねえ。一晩で全部持っていかれちゃったよ」


「ウチの果樹園もだ。乱暴に刈っていくから樹も傷んじまって困ったもんだぜ」


「山の材木が何本も()られちまった。あいつらも小屋建てたりするのかねえ」


「放牧してた山羊も気がついたら数が減ってるんだ。こっそり狩っていくってのはあいつら意外にずる賢いぜ」


 現地で村人たちに聞き込みをした一行は事前情報の通りにかなり大規模な被害が出ていることを確認した。


「これだけの被害が出ているというのに直接相手を見たという人がいないというのは意外ですね。そんなに身を隠すのが上手い魔物なのでしょうか」


「被害が大きいことを考えると臆病というよりは慎重なタイプだと思うわ。なにか食料を手に入れにくくなったから人間の村に手を出すようになったんじゃない」


 野伏(レンジャー)のエルゼと魔法使いのディアは魔物の行動についての考察をしている。


「村の人たちのほうが関わりたくなくて砦にも近づかないようにしていたみたいだしね。拠点になにかが起こっていてもわからないみたいだよ」


「それならわたくしたち自身で調べてみるしかありませんわね。どこから参りましょうか」


 薬師(くすりし)のチャールと回復役(ヒーラー)のフリーデはさらなる手がかりを求めているようだ。


「一番近い果樹園からでいいんじゃないかしら。どうせ全部回るんでしょう」


「そうだな。じゃあとっとと現地調査を開始するか」


 戦士組のシンディーとリーダーのカールがそう言って一同は行動を開始した。


◆ーー◆ーー◆


「なるほど、ほとんど盗られてるわね」


 果樹園に近づきその惨状を目にしたディアがそう口に出して言う。収穫時期にはまだ少し早いのだが見渡しても果実はほとんど見られない。


「樹の上の方はまだ少し残ってますわね」


 フリーデの言葉に一同が見上げると長身のシンディーでも届かないぐらいの高さにはまだ青い実が残っていた。


「あそこに届かないぐらいだと盗んだのはかなり大きい身体のやつかな」

 カールがそう言ったのにエルゼが異論を唱える。


「いえ、よく見ると高いところは枝ごと落とされてます。断面を見ると刃物をつかって斬られたようですね。低い位置のは直接もぎ取られてますから、それを考えると人間とだいたい同じぐらいの体格で手を使って道具を使える魔物です」


「人間サイズで刃物をつかってくるのはちょっと大変ね。どの魔物かわかるかしら」


「特定するにはまだちょっと情報が足りないね。他のところも調べてみようよ」


 実戦になれば最初にぶつかるであろうシンディーが気にする魔物の詳細についてはチャールがいうようにまだ情報不足であった。一同はさらなる情報を求めて隣の畑に移動したのであるが。


「……耕されちゃってるわね」


 ちょっと遠い目をしたシンディーがまさに作業中の畑を眺めながらいう。どうやら新しい苗を植えているようだ。


「村の方々にも生活がありますから、荒らされたからといって放置したままとはいかないでしょう。代わりの作物を育てないと」


 そんな話をしながら畑を眺めている彼らに気付いて農作業をしていた村人が話しかけてきた。


「やあ、畑荒らしをなんとかしてくれるのはあんたらかい。調子はどうだい」


「相手がどんな魔物なのか手がかりを探していたところです。こちらの様子はどんな感じだったのですか?」


 シンディーが問うのに村人が肩をすくめて答える。


「ひどいもんだったよ。作物は根本から切り取られて持っていかれたし、もう一面踏み荒らされて足跡だらけさ。きれいにするのが大変だったぜ」


「……どんな足跡だったのかしら?」


 足跡が消えたせいで苦労してるのよという言葉をぐっと飲み込みつつディアが尋ねる。


「ああ、爪のある獣のような足跡に靴を履いたような足跡も混じってたな。普通に人のと同じぐらいの大きさだったぞ」


「そうですか。参考になりました。ありがとうございます」


 シンディーがそう言って立ち去ろうとすると村人が横の方を指さしながら声をかけた。


「そうそう、あっちのほうの水路脇にもたくさんの足跡が残ってたぞ」


 それを聞いたエルゼがパッと明るい表情になる。


「ありがとうございます。行ってみます」


 そうして一行は水路の脇で足跡を発見してその検証を行っていた。


「水場が近くて地面が柔らかいからはっきり残っていますね。だいたい人間サイズでこの足跡だと相手はコボルトで間違いないでしょう」


 足跡の鑑定ではパーティーで一番のエルゼがそう断言する。


「体格は人間と同じぐらいで直立歩行する人型の魔物。犬のように飛び出た鼻と口が外見的な特徴だが犬の仲間というわけではなくトカゲに近いとも言われている。道具も使いある程度の社会性もあるが仲間以外への攻撃性が強く話し合いの通じない相手、というところで良かったっけ」


 チャールがコボルトについて書物で読みかじっていた情報を口に出す。


「だいたいその通りね。付け加えるなら自分たちで道具を作ったりはできないけど奪った道具や武器防具はつかっているわ。小屋を建てたりもできないけど穴を掘った上に屋根をかけて巣にするぐらいはしているそうね」


 魔法使いのディアがきっちりと学校で学んだ知識で補足する。


「武器防具を使う上に巣にこもられると厄介だな。たしか砦跡を拠点にしているんだよな」


 カールがそういうのにエルゼが小首を傾げながら答える。


「そう聞いていたんですが、ちょっとおかしいんです。砦跡があるのはこの横の丘の上のはずなんですが、足跡が向かっているのはあちらの丘のふもとの方なんです」


 エルゼが指さした丘のふもとを正面に見ると砦があるはずの丘の上はほぼ真横だ。


「砦にいる奴らと畑荒らしは別口なのかな。どちらにしても厄介な相手のようだから慎重に行こう」


 リーダーのカールがそう言うのをきっかけに一同は対策の話し合いを始めた。

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