2-2:ちょっと上の仕事
とある街の冒険者ギルドにあるロビーの一角ではカールをリーダーとするパーティーの面々が次の仕事について話し合いをしていた。
「まず最初にジョージさんからの伝言よ。『君たちも頑張ってるようだから難易度高めの依頼を用意したよ。きついと思ったら無理せず撤退してもいいからね』だって」
パーティーの頭脳担当である魔法使いのディアが勇者パーティーから回ってきた手紙を読み上げていく。
「そう言われるならぜひとも成功させなくてはいけませんわね。それでどんな依頼がありますの」
回復役のフリーデがそういって手紙を覗き込む。一応パーティーの全員が読み書きはできるが、やはりカールとシンディーの戦士二人はちょっと読むのが遅いのでこういう場面では一歩引きがちである。
「一番目は珍しい素材の採取で場所は……ここからそんなに遠くありませんわね」
「難易度高めってことはただの採取じゃあないんだよな。詳細はどうなってるんだ」
カールが質問するのには野伏のエルゼが答えた。
「採取するのは夏雪草ですね。高い山の上で群生する植物で、白い花が雪原のように見えることからその名がついたとか」
「山の上かあ。この近くって言うとどの山になるんだ?」
それにはやはり手紙を覗き込んでいた薬師のチャールが答えた。
「この山は僕の地元からも見える山だね。たしかに今ぐらいの時期は山頂付近が白くなってたよ」
「ちょっと待てチャール。お前の地元ってここから結構遠かったよな。そこから見えるってことは……」
「この国で一番高いと言われるあの山ですね。中腹には魔物も生息している難所です」
エルゼがそう言うのを聞いた戦士のシンディーが嫌な顔をする。
「わたしの金属鎧装備だと山登りはきついわね。他にはどんなのがあるの」
「護衛任務がありますわね。貴族のお坊ちゃんを辺境の別邸までお連れする仕事だそうですわよ」
「それもただの護衛任務じゃないんだろう。どんなところが難しいんだ?」
「後継者争いに負けた次男が中央から逃げ出すんだってさ。辺境までいけば味方も多いんだけど中央では長男派に抑え込まれて味方もほとんどいなく、暗殺騒ぎも何回かあったとか。『うまくやれば貴族にコネ作れるからおすすめだよ』とか書いてあるけど」
チャールがそう言うのを聞いてエルゼが小首を傾げる。
「あの、それって護衛がうまくいったら長男派に、失敗してしまったら次男派にと必ずどちらかに睨まれることになりませんか?」
「うー、難易度が高いってもしかして護衛そのものじゃなくて立場的なものが難しいって意味かよ」
それを聞いて頭を抱えて唸るカールにシンディーも同意する。
「どうやらそんな感じみたいね。わたしたちはまだコネを作るとかよりもいろんな相手に対抗できる力をつける方がいいんじゃないかしら」
「そうだな。相手が暗殺狙いで来るんなら派手なことにはなりそうにないし。そういうのも必要になるかもしれないが地力をつける方が優先だな」
カールが頷くのにエルゼが続ける。
「では残りはこれですね。ここから数日の距離にある村からで近くに住み着いたらしい魔物の調査と可能ならば制圧、排除です」
それを聞いたカールは明らかに乗り気である。
「そうそう、そういうのがいいんだよ。で、難易度の高いポイントは?」
「魔物の正体が不明だというのがまず一点ですね。畑が荒らされたり家畜が襲われたり農機具小屋が壊されたりといった被害は出ているのですが目撃した人がいないのです。刃物の跡もあったそうですし、たぶんある程度は知恵も回るのでしょう」
「なるほど、正体がわからないというのはちょっと怖いところだが人間を避けるんならそれほど強くもないんじゃないかな。他にはあるか?」
「被害の多さから見ると、魔物はかなり数が多そうだということです。一晩で畑一面がやられたりということもあったとか。被害にあった村人は『あれはたぶん数十体いるな』といっていますが真偽は不明ですね」
「数が多いというのはやっかいね。防御を固めてても周りを囲まれたらきついわ」
シンディーの言葉に同じく前衛のカールもうんうんと頷いている。
「数が多いだけならアタシの範囲攻撃魔法である程度は楽できるんだけど、どうも他にも問題があるみたいなのよね」
先の方まで読んでいたディアが紙面をトントンとつつきながら言う。
「魔物が拠点にしているところ、昔の放棄された砦らしいのよね。ある程度の知恵がある上に道具も使うし数もいて、拠点が防衛用の砦となるとかなり苦労しそうよ」
「うーん、それでもこの中ではこれが戦闘経験積むのには向いてると思うな。オレはこれがいいと思うが、他に意見はあるか?」
カールはそう言ってぐるりと全員を見回すが反対する意見は出てこない。
「よし、それじゃあこの仕事を受けることにしよう。手続きしてくるからディアも手伝ってくれ」




