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半端者の回復術者  作者: 散散満
第1章:教会育ちの少年

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1-9:開いた道筋

 サイクロプスの投石で通ってきた洞窟の口を埋められて逃げ道を塞がれた一行は防御力強化で投石を受け流しつつ筋力強化をかけて通路を掘り返す作戦を開始した。


「わかってましたけどちょっとこれはキツイです」


 こういう場面では必然的に前に出ることになる重装備のシンディーが大盾で投石を受け流しながら言う。盾を傾けて斜め後ろに流しているがそれでもかなりの衝撃を受けている。


「すまんがさすがにオレもこの装備だと怖い。いざとなったら盾持ちを代わるから頑張ってくれ」


 同じく戦士とはいえ要所を金属で補強した革鎧に小さな盾で攻撃重視型のカールが詫びる。それでもリーダーの責任感もあり並んで先頭には立っているし間に合わなければ自分で受ける覚悟もある。


「次の投石が済んだら火球を撃つから二人とも避けてね……はいっ」


 魔法使いのディアもタイミングを見計らって攻撃魔法を飛ばしている。狭い通路の向こうでもありサイクロプスに命中して怯んではいるが大きなダメージを与えた様子はない。


「やっぱりアタシの呪文じゃ効かないわね。まだ続ける?」


「嫌がらせにはなる。またタイミング見て頼む」


 いったん避けた位置から通路正面に戻りながらカールが指示する。


「隙間が空いたらフリーデを先に逃してもいいかな?」


 今度は積み上がったガレキをどかしていたチャールが問いかけるがそれには本人が反対した。


「わたくしだっていざというときの回復魔法という役目がありますのよ。どうしてわたくしを先に逃がそうとなさいますの」


「いや、この中では一番すり抜けやすそうな体型だから……ぐふっ」


 余計なことを言ったチャールが顔を赤くしたフリーデにポカリと叩かれている。


「くだらないこと言っていないで早くガレキをどかしなさいませ」


「だったら殴らないでくださいよ」


「おいおい、余裕があるのはいいが手は止めないでくれよ」


 言われるまでもなく手は動かし続けているのであるが正面を警戒しているカールからは見えていない。


「そろそろフリーデさんなら抜けられるぐらいの隙間が空きます。シンディーさんだとまだ無理ですけど」


 チャールとともにガレキの撤去を担当していたエルゼが進捗状況を報告する。


「ちょっと、エルゼさんまで何を言っているんですの!」


「軽装のフリーデさんならもう通れるけど重装備のシンディーさんにはまだ無理というだけです」


 そんなやり取りを聞いていたカールがやや重苦しく告げる。


「本当にいざというときはフリーデだけでも逃げてくれ。サイクロプスが穴を広げていくとも思えんが万一ここを抜けて村まで行ってしまったら一大事だ。最低でも誰か一人は報告しないとな」


「……承知しましたわ。ですが本当にだめだとならない限りはきちんと仕事をいたしますから。まだ回復魔法はよろしくて?」


「まだ怪我まではいっていません。終わったあとの筋肉痛がきつそうですけど」


 シンディーはなんとか盾で受け流してはいるが流石にサイクロプスの投石を受け続けるのはきついようだ。あちら側に転がっている石が少なくなったのか飛んでくる間隔がちょっと長くなっているのは一同にとって幸いであるが。


「もうすぐ終わりますよ。そろそろ退却に備えてください」


 エルゼが作業の終了が近いことを告げたタイミングでもう何発目になったかわからない石がシンディーの盾に弾かれた。


「やっと終わりね。はやく逃げましょう」


 そう言ってシンディーが振り返りかけたその時、予想外に早く次の石が飛んできて彼女に命中した。気を抜いたところに変な角度で受けてしまったシンディーはその場に倒れる。


「時間がかかると思ったらあいつ石を手元に集めてやがった。フリーデ、シンディーの回復を!」


 さらに連続で飛んでくる石を受け流しながらカールが叫ぶがフリーデからの返事はない。


「だめです。飛ばされた盾がフリーデさんに当たって気絶してます」


 エルゼの報告にカールは思わず悪態をついた。


「くそっ。チャール、回復薬(ポーション)を使ってやってくれ! あいつがこっちに移動し始めた」


 見ると獲物を仕留めたと思ったかサイクロプスが通路を這い進みはじめていた。チャールがもともと持っていた回復薬はこの戦闘の前にシンディーとカールに渡していて手元にない。慌てて倒れたシンディーに駆け寄り腰につけていた袋から瓶を引き出す。


「ああっ、やっぱり割れてる」


 すぐに取り出せるように外側にぶら下げていたのが災いしてシンディーの持っていた回復薬の瓶は飛ばされた衝撃で割れていた。瓶の欠片に残っていた僅かな回復薬をふりかけてみるが焼け石に水だ。


「効き目が半端だからあまり使いたくなかったんだが仕方ないな。『半回復(ハーフ・ヒール)』!」


 チャールが呪文を唱えると青ざめていたシンディーの顔に赤みがさしてくるが意識は戻らなかった。仕方なくチャールがシンディーを担いで退却を始めるが、筋力強化が残っていても体格差から引きずるようになってしまいなかなか進まない。


「あいつが通路を抜けるぞ。急いでくれ」


 カールは気絶したフリーデを背負って出口付近まで移動していた。ディアとエルゼはそれを受け取ろうと待ち構えている。


『グオォッ!』


 とうとう通路を抜けたサイクロプスが体を起こして一声叫びを上げる。一同を大きな一つの目で見回し、一番近いシンディーとチャールの方に向き直り、そして不意に後ろを向いた。


『ガァッ!』


 サイクロプスが悲鳴を上げ、その右腕が半ばから切り落とされた。


「危ないところだったがなんとか間に合ったようだね」


「ディーンさん!」


 サイクロプスの後ろから現れたのは勇者パーティーの一行だった。


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