表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冬野つぐみのオモイカタ ―女子大生二人。トコロニヨリ、ヒトリ。行方不明―  作者: とは


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/98

くらいへやで4 (カテノナ:S)

「どうでしょうか? もうそろそろですかね?」

 

 真っ暗な部屋の中にそう声を掛け、男は入って行く。

 自分が扉を開けたことで出来た小さな光の道筋の先、そこで男は小さく響く女の声を耳にする。

 だがそれは男のことを歓迎する挨拶の声ではない。

 それは、小さな小さな呟きの声。

 男が前にこの部屋を出る時から、彼女はずっと同じ言葉をただただ呟き続けているのだ。


「おやおや、これは驚いた。あれからそれなりに時間が経っていたと思ったのですが」


 未だ続くその声に、本当に大した信念だと男は感心する。

 ゆっくりと彼女の前へと向かう。

 しゃがみ込んで覗き込み、彼女と目を合わせる。


 睨みつける。

 その言葉でしか表すことの出来ない鋭い目つき。

 そんな眼差しを受け、男はまずは返事代わりに笑みを浮かべる。


「これはこれは、随分と力のこもった目つきですね」


 相手の反応を喜びながら、男は問われてもいないのに朗々と語り始める。


「この状態になってなお、これだけの明確な強い意思を表して来た人間。今までにどれだけいたでしょう? 大体の人間は、ただ泣いているか虚無感に苛まれているだけのどちらかでしたから」


 実に新鮮だ。

 その思いに男は嬉しさを隠し切れない。


「あぁ。素敵ですよ、千堂さん。やはりあなたは、今までの人間とは違うようだ。ふふ、見たところまだとても元気そうで。もう少し後でまた来てみるとしましょう」


 男は彼女に背を向けると、再び部屋に暗い闇を(まと)わせる。

 自分の後ろを追うように聞こえる小さな言葉達。

 それらをふさぐかのように、男は扉を再び閉ざしていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ