クエスト名称:金に目が眩む
目的のピラミッドに到着して、近場にあった杭にカターゴの手綱を繋いでおく。
カターゴ飼育屋のオヤジが、
「乗りたいときは、口笛を吹くと駆けて来る。いつでも乗れるぞ!」
むちゃくちゃなことを言った。
気球やカターゴなどの乗り物は、優れたゲーム理論によって、すぐに乗れるのだった。
「ユッキー! 勇者さま! こっちに入り口があるのら!」
鼻を利かせるちょちょ。
そのうしろについて行く真衣が、
「さ、ダンジョン攻略よ」
「僕はとりあえず、〔ファイト一発!〕で疲労度を回復しておこう……。真衣はカターゴに乗っていたから疲れてないだろうけどさ、僕は『歩き』だからな」
「なによ偉そうに。早く行くわよ」
と、ダンジョンに踏み入れたとたん!
《兇牙獣・ミイラット。兇暴化した死鼠。伸び続ける強靭な前歯で齧り襲う》
《亜人超獣・さまよう亡兵。主君に忠誠を誓う死霊が具現化。墳墓を守っている》
「早速かよ! 鼠が2匹、亡兵が3体だ!」
賢者のセプター改を構えて叫ぶ僕に、真衣が、
「うしろにもいるわ! 囲まれた!」
《大蟲獣・砂金コガネ。黄金色に輝く背面は金。倒すと、そのぶんの金が追加される》
「金だ! 黄金虫だぞ! 鼠と亡兵は倒さなくても、そいつだけは絶対に倒すぞ!」
貧乏パーティーに狙われたのが運の尽き。
むしろ鼠と亡兵はさっさと倒しちゃって、砂金コガネには仲間を呼ばせる。
「ファイア! ファイア! くそー、なかなか呼ばないな!」
砂金コガネの尻をファイアで炙ってやって、生かさず殺さず的な戦法をとる。
「惨いわね……金に目がくらんだ人間ほど、酸鼻なものはないわ……」
「ユッキー、可哀想なのら!」
「えっ、ちょっと、あれ!? なんか僕がすごい悪い人間になってるじゃん!」
はかりごとにはめられた気分だ。
酷評に晒されて、いやな心持ちで砂金コガネを炙っていたら……。
ズズン! ズズン! と地鳴りがして、
《亜人超獣・金ぴかゴーレム。金で形成されており、攻撃力・防御力共に金城湯池級》
5メートルはあろうか……デカ過ぎて、頭を天井に擦りながら、
ブウゥン!
うなりを上げる裏拳で僕をなぎ払った。
「ぎゃあんっ!」
ダンジョンの通路端まで吹っ飛んだ僕は、背中から壁に激突。空気の抜けたボールのように、ベタッ、と床に落ちた。
「ユッキー! 大丈夫!?」
「紙くずみたいに飛んでったのら!」
真衣とちょちょが駆け寄って来る。
そのすぐ背後で、
ズズン! ズズン!
金ぴかゴーレムの巨体が迫る!
「うしろ! うしろ! 真衣!!」
「そんなこと言ってないで、魔法を唱えなさいよ!」
煌焔ファルガサーベルを素早く抜刀した真衣、
「必殺! 『巨人斬り』!!」
飛び跳ねて、掬い上げるように金ぴかゴーレムを足下から両断! できない!!
さすがにヒットポイントが高く、防御力もあるので、一撃必殺はムリだ。
追加ダメージ効果もあるが、まだまだ倒れない。
僕だって負けてはいられない。
「サンディア!!」
雷魔法最上を唱え、賢者のセプター改の前に魔方陣が浮かび上がれば、青紫の雷光がほとばしる!
――ゴゴゴ……?
金ぴかゴーレムは、頭をポリポリ掻いている。痛くも痒くもないようだ。
「あ? 効いてない?」
「雷耐性があるみたい!」
「ユッキー! べつの魔法なのら!」
マジかよ!?
上位魔法になればなるほどスタミナを多く使うんだぞ。唱えたあとに言われても!
戦闘が長引けば長引くほど、疲労度も蓄積するし、スタミナの回復速度も遅くなる。
金稼ぎだからと言って、屈強なモンスターを相手にし続けていれば、こちらの身が持たない。
されど……。
現状は、僕が砂金コガネをいじめていたかのような構図になっていて、そこへ金ぴかゴーレムが助けに来たようなかたちに……。
いま退散すれば、これを認める事になってしまう。
なんとしても勝たなければならない!
「ファディアアアアァァァ!!」
スタミナが尽きる寸前まで、火炎放射を続け、
――ゴゴゴ!! ブウゥン!
叫ぶ金ぴかゴーレムの裏拳やタックルを、躱して躱して躱しまくる!
真衣の剣技、『巨人斬り』も炸裂して、回復魔法を5回唱えてやっと勝てた……。
正直に言って、いまは、金よりも経験値がほしい。
息を切らして先に進めば、ダンジョン内部は迷路になっている。
真衣曰く、
「シーフがいれば、特殊スキルによって迷路を軽々と攻略することができ、宝箱の存在や鍵のかかった宝箱のピッキング、トラップの察知や解除など、一通りのことが可能」
とのこと。
わざわざ僕に向かって言った。
どうせ賢者は荷物なんだ……、足手まといなんだ……。
でも、それもレベル30までだぜ。
レベル30に到達したら、僕は大賢者となって、融合魔法が扱えるのだ。
大賢者のみが修得できて、唱えることができる。
それまでいましばらく、辛抱する。
ダンジョンの中間地点になるのだろう。
こんな危険な場所で、爺さんがひとり、宿屋を営んでいた。
「なんでここに……?」
「RPGで、よくあるでしょ。この先もっと危険になるから、応急処置的に、宿屋があるパターン」
「ああ……あるある。宿泊料も安いし、そうかもな」
「もしかしたらサブクエストにも関係するかもだけど、依頼を受けてないから、わからないわね」
そんなこんなで宿泊して、体力、疲労度共に全快した。
ここまで来る間に、僕はレベル29に、真衣はレベル35に達していた。
最高レベル50の世界において、ここまでレベルが到達すれば、四天王どころか魔王だって軽く倒せる領域じゃないだろうか。
『はぐれ斬り』や『巨人斬り』のほかにも様々な剣技を体得した真衣。そのつよさは半端ない。
「それじゃ、ダンジョンの深層部まで一気に行くわよ。準備はいい?」
「オーケイ。レベル30まであと1だし、ラストまでは上がると思う。な、ちょちょ」
レベルアップに必要な経験値がわかる能力を持つちょちょにきくと、
「ユッキーはあと、大きいモンスターを12体くらい倒せば、次のレベルに上がるのら!」
「うん、余裕だな。サクサク進んで、攻略しようぜ!」
気合いを入れて、宿屋をあとに、階下の扉をあけたら、
「ヌハハハハ! 待っていたぞ、勇者ども!!」
四天王ガープが待ち構えるラストダンジョンだった。




