クエスト名称:薔薇に棘あり
宿屋でも、修正が行われた。
朝になって宿屋を立つとき、店の主人が、
「おはようございます。昨夜は、随分、お楽しみでしたね」
なにがお楽しみなものか。
サディズム&マゾヒズムじゃねーぞ!
勇者より女王さまの素質を覗かせた真衣が、
「ピラミッドに向かうわよ! ダンジョンを攻略して、〔勇気のしるし〕を入手するんだから! 40秒で支度して!」
早朝から、機嫌が悪い。
ナスカーサから南へ行くと、目的のピラミッドがある。
歩きよりも、気球でひとっ飛びなのだが、
「あそこに、カターゴが売っているわね。あれに乗って行きましょう」
カターゴは昨日見たので知っている。
モンスターを家畜にした生き物で、見た目はラクダっぽい。ナスカーサでは自転車のような移動手段として重宝がられている。
また、キャラバンやロームルで見たロバのような生き物コロンロに荷物を背負わせて運搬するのとおなじく、この地では、カターゴが荷物運搬の役目を担っているようで、飼育・保有しているのは商人が多い。
身近な存在だけど、実はその足はバイク並に速くて、
『カターゴ・レース開催!! 優勝者には賞金5万ゴールド! 参加者募集中!!』
カターゴ飼育屋にポスターが貼ってある。
これもサブクエストで、優勝したら5万ゴールドが手に入るんだろうなあ……と考え深くしげしげと眺めていると、
「ユッキー、手綱を引いて。さあ、行くわよ」
カターゴの背中に、ちょちょと真衣が乗っている。
そこにはカターゴが一頭だけ。二頭目は購入していないようだ。
「ちょっと! 僕が乗るのは!?」
「ユッキーは手綱を引く係よ」
「かかり!? なんで!」
「なんでって、あのね」
ため息を吐いた真衣は、僕を諭すように言う。
「昨日、私が、1パーセントくらいは考えてあげてもいいけどねって言ったんだから、奥さんになってと頼むところでしょうが。
それにね、李里に告白するって決めてんのに、ロームルでもそうっだけど、美女が現れたら、すぐ靡いちゃうとかどういう事よ? 浮気性なユッキーには、こうやってしつけをするしかないわ」
「そ、そんなあ……」
手綱を引く係が、手綱を握られるって、どういうこと……。
「ユッキー! カターゴを引くのら! 出発なのら!」
「いいポジションだな、ちょちょ……。こうなるんだったら、美女について行くんじゃなかった……李里ちゃんとの通信にも立ち会えなかったし、ヘソクリも取り上げられちゃって散々な目に遭った、最悪だ……」
後悔先に立たずとはまさにこのことだ。
しょぼしょぼと、ナスカーサを出発。
カターゴの手綱を引きながら、灼熱のミナロブ砂漠を歩く。
まるで西遊記のワンシーンみたいだ。




