クエスト名称:装備整調
敵前逃亡の末にわかったとこがある。
僕たちは、コールドビーク周辺のモンスターと、張り合えるレベルではないらしい。
ロームルから旅立って、コールドビークまで着陸なし。ノンストップの気球の旅は、敵が出現しなかったこともあり、まったくレベル上げをしなかった。
これが、いけなかった。
レベル上げを怠ったら、死ぬ。
コールドビークまでの道のりには、おそらく、様々なサブクエストがあって、それらを完遂していれば、スノードラゴンやスノーゴーレムに対抗できるレベル数になっていて、ちょうどよく釣り合うはず……。
だが、現状、そんなことをしてはいられないので、われらが頼れる勇者真衣が、2つの、ある戦法を提示した。
1つは、装備を整えること。
コールドビークの武器、防具、道具店へ、死にもの狂いで駆け込む。
最初に武器から紹介。
僕は〔ネスティックのワンド〕を売却して、〔賢者のセプター〕に変更した。
セプターとは王笏という意味で、王様や上級神官が使用する長い杖だ。背丈ほどある。
賢者という上級職が装備する杖を、金で買った。というか、金で購入可能だった。
真衣は、〔ニンジャソード〕を売却して、〔ファルガサーベル〕へ。
炎魔法ファルガの効果を持つ剣で、通常攻撃にファルガの効果がプラスされる。
雪・氷属性のモンスターに効果抜群だ。
次に防具。
僕は〔元気のローブ〕を売却して、〔魔性の法衣(女性限定)〕に。
肩や胸元、太ももなど肌の露出が激しい法衣だが、スタミナ消費率20%減の効果を持つ。ちなみに、男性限定もあって、そちらはスタミナ回復率20%増だ。
そして〔魔女のケープ〕を売却して〔スタミナのクローク(スタミナ量10%増)〕に。
クロークとは、マントに近い衣装で、体を包み込むものだ。特殊効果付きでお得だった。
真衣は〔ホワイトクロムアーマー〕を売却して〔冬椿の鎧(雪・氷耐性30%増)〕に。
紅色のクラシックな鎧で殊効果付き。これは鍛冶屋で作ったもので、僕が集めた植物素材・粘土素材・化石素材・四季素材を使用して拵えた。
偶然採取した四季素材、〔零度の氷〕と〔細氷〕を組み合わせたら、耐性が付加された。
肌の露出も抑えられて、コールドビークの土地では活動しやすいだろう。
盾は〔クロムシールド改〕のままだ。
最後にステータスアップのアクセサリーを紹介。
イタチのシッポが、〔イタチのシッポ・バージョン4〕になった。
バージョンアップにつれて、シッポが1つ増え、増えるごとに、ステータスアップの効果が選択できるらしい。1つのシッポに1つのステータスアップ効果である。
なので、バージョン2の素早さ1.5倍に、スタミナ回復のシッポを2つ追加した。
つまり、僕が装着しているイタチのシッポ・バージョン4は、素早さ1.5倍+スタミナ回復1.5倍の仕様になっている。
そしてやっぱり、僕はパンツ丸見えなのである。
真衣は〔流星ピアス〕を売却して、〔彗星ピアス〕へ。
素早さが、流星よりも若干アップ。
くわえて〔危機一髪回避のお守り〕も売却して、〔緊急回避のドロワーズ〕へ。
ドロワーズとは下着の一種で、ふっくらとしたパンツの事である。危機一髪回避のお守りの上位となるアイテムなのだが、どうしてパンツに、緊急回避の効果があるのか不明だ。
ナニを緊急回避するんだろうね。
ところで、お気づきだろうか? 売却、売却と連呼していたことに。
なんでもかんでも売却したのには理由がある。
「お金がないわ」
「どうすんだよ……裸じゃ闘えないぞ?」
「賢者の装備は大丈夫。そんなにお金かかってないし」
そのぶん、レベルは上がりにくいけど……、と言って、真衣は首をひねりながら、
「勇者の装備を揃えるお金が不足しているの。いまの装備では、このあたりのモンスターに歯が立たない」
ぶつぶつとつぶやきつつ、防具鍛冶屋で防具作成の工程表を眺めて、
「ユッキー、役に立つ素材、持ってない? 集めた素材で武器や防具を作成したほうが安上がりなんだけど、素材集めに手間と時間がかかって。時は金なりで、完成品をお金で購入したほうがいいと考えてたのが、ダメだったみたい……」
頼まれて僕は、素材コレクションを提供し、〔冬椿の鎧(雪・氷耐性30%増)〕を拵えたのだった。冬椿の鎧の通常価格は6000Gだが、素材を集めて鍛冶屋のオッチャンのところへ行くと、4000Gで仕事を請け負ってくれる。
ついでに言うと、通常の品とステータスはおなじだが、鍛冶屋で誂えたものは、グラフィックが変化してカッコいい。シルバー色の鎧を〔紅色粘土〕を使用して、紅色に変えた。
ほかにも、気球に乗っていた際、キラキラしたものをゲットしたら、これがなんと〔ほうき星のかけら〕というもので、〔彗星ピアス〕の材料だった。
しかし……。
こうまで切り詰めても、僕たちは相変わらず貧乏で、キャンプセットが買えない。
戦闘やフィールド移動で疲れると、疲労度が蓄積して、スタミナ回復に悪影響を与える。疲労回復するには宿屋に泊まればよい……ことは既に説明した通りだが、
「疲労度がヤバいから、宿屋へ行こう!」
と、いつでも引き返せる状況にあるとは限らない。
洞窟だとか、知恵の塔でもそうだろう。
そこで、戦闘時以外ならどこでも、その場をキャンプ地にして、疲労回復できるアイテムが……キャンプセットなのである。
しかし、貧乏なので買えない。
そこで、2つ目の戦法だ。
「クエクエでも、こんなことやったことあるでしょ?」
「なにがさ」
「フィールドで、町の周囲をグルグルとまわって歩き、モンスターとの戦闘で疲労したら、すぐに町に帰り、宿泊する。これの繰り返しよ」
とても、せこい。
たしかに僕もやったことあるけどさ。レベル上げの際に、町のアイコンを周回し、戦闘で傷ついたら、すぐ帰る。土地のモンスターとの力量に差分がある場合、有効な戦術となる。
けれど、せこい。さすが勇者、せこい。
「つべこべ言ってないで、レベル上げするわよ!」
「はいはい……」
「ユッキー! 勇者さま! 頑張るのら!! おいら、レベルアップに必要な経験値を言うのら!」
応援してくれるちょちょ。レベル上げに一役買って出ようというのだ。




