クエスト名称:身の程を知れ
翌朝。
知恵の塔、別名を賢者の塔へ向かう。
「勇者さまー」
「ちょちょ、早く乗りなさい」
気球の籠に飛び乗るちょちょ。
「待てよ! 僕はまだ乗ってない! 待ってくれえ!」
僕を置いて行こうとする真衣。
なぜか昨日から、ご機嫌斜めなのだ。
「チッ。早く乗りなさいよ」
舌打ちする勇者様である。
さて。真衣が立てた作戦というか計画の内容はこうだ。
「気球でひとっ飛び! 一直線で塔の頂上へ行くわ。近道できるところは近道する!」
そんなわけで、籠に乗り込み、出発進行。
肌を切るような寒風で身が縮む。
空中を舞う細氷が、白夜の光によって、神秘的な輝きを見せている。
ダイヤモンドダストだ。
「塔が見えて来た!」
白銀の大地に建つ塔は、遥か上空まで伸びている。
その外観は、神に挑戦するバベルの塔のごとく攻撃的で、天へ天へ、どこまでも続いている。
真衣の操る気球は、これを見上げるかたちで上昇する。
かなりの時間を要した。
「やっと頂上に到着し、」
たわよ、と言いかけた真衣は目を見張った。
頂上には入り口や窓はなく、屍が何体か転がっていた。
みんな、考える事はおなじようだ。
外壁に突き立てられたボロボロのツルハシや斧、攻撃魔法で焦げた箇所もある。頂上から塔内に侵入しようとして、力尽きたのだろう。屍は水分がぬけて、ミイラになっていた。
「僕たちも、ミイラ取りになるか?」
ズルをしようと企んだ真衣へ言うと、
「なによ、ふんっ!」
プイッとそっぽ向く。
そして、すぅーと気球は降下した。
やっぱり正々堂々と挑戦するのが王道だった。
やがて……。
「最初から、こうしとけばよかったんだ」
気球は雪原の上に着陸。僕たちは籠から下りる。
そのときだ。
いきなり、雪崩のような轟然たる音が無音の世界を引き裂いた。
目の前の地肌が盛り上がり、飛び出して来たのは、
《大型飛翔獣・スノードラゴン。雪や氷で体表を固めているため、攻撃が通りにくい》
「ついにドラゴンが! でけぇ!!」
雪や氷で翼や胴体を覆ているスノードラゴンは、僕たちに興奮し、太くて長い尾で雪面を叩き、空へ向かって、
――ヴァアアアアア!!
けたたましい雄叫びをあげた。
牙を覗かせた口中から、氷魔法ブルリガ級の氷刃がほとばしる。
「ユッキー! こわいのらぁ!!」
雄叫びにふるえあがるちょちょ。全身の毛を逆立てて、僕の胸に隠れる。
「相手に取って不足なし! 行くわよ!」
ニンジャソードを抜刀した真衣が、立ち向かおうとしたとたん。
僕たちの背後から、地響きを発して駆けて来る、
《亜人超獣・スノーゴーレム。雪の中から自然発生。ダメージを受けても自然回復する》
《樹木獣・アイスモンスター。スノーモンスターとも言い、硬質な氷で殴って来る》
2体のスノーゴーレムと3体のアイスモンスターが現れた!!
「げぇ! これはヤバい!」
不足どころか、対抗できないんじゃないかと肌で感じ、
「炎魔法、ファルガ!!」
スノーゴーレムに向かって唱える。
魔方陣から放射される火炎が、その脚部を溶かす。
――ヌゥゥゥゥ!
低いうなり声を上げて転倒するスノーゴーレム。だが、僕のほうも限界だ。
火炎放射し続け、返り討ちにするだけのスタミナがない。
と、スノーゴーレムの脚部が、徐々にだが再生しはじめた。
「自然回復してる!」
「だからメッセージ読みなさいよ! スノードラゴンもいるし、ここは逃げるが勝ち!」
「さっきの不足なし宣言は!?」
「闘いたかったら、ひとりでどうぞ!」
ニンジャソードを鞘に収めて真衣は、脇目もふらず逃げ走る。
「ぬわん! 僕も逃げるっ!!」
すぐ背後でスノードラゴンの咆哮が!
ザクザクザク! 雪面に突き刺さる氷刃が迫る。




