クエスト名称:教会で通信05・女の子と一緒にベッドIN
情報をまとめると、〔知恵のしるし〕はやはり、知恵の塔にあるようだ。
コールドビークにしるしがあると李里ちゃんが教えてくれなかったら、この予想すら立てられなかった。
ということで、真衣と僕は教会に行って、神父に500Gを支払い、通信をする。
なぜか真衣は、僕と李里ちゃんとの通信を認めてくれない。
だから僕はヘソクリを貯めて、いつか自腹で、李里ちゃんと通信するんだ!
「李里、コールドビークに到着したわ。〔知恵のしるし〕がある所にも目星がついた」
「ほんと? すごーい! こっちでもね、すごいことを発見したんだあ!」
「あら、なに? どんなこと?」
真衣の問いに、たくましく笑ってみせた李里ちゃんは、
「うんとね、四天王のドゥクサスとゼゼガンが、勇者を前にして、あまりにも無力だ……って言う研究者みたいなやつが魔王城にいて、そいつがね! 真衣のことを調査分析してたの!! そしてたら、
『勇者もつよいが、姫の祈りに依るところも大きい。祈りの対象者である勇者が相手にした、四天王をはじめ魔王軍の兵士たちは皆、ヒットポイントが減退していた』
ってまとめたの!」
誇らしげに言った。
「それ本当!? だったら驚くべき事だけど、同時に……李里、あなたとても危険な状況よ」
姫の祈り……。
この恩恵を受けている者と対治する敵は、ヒットポイントが減退する。
こんなチート的効果があったなんて。
倒されたドゥクサスとゼゼガンは寝耳に水だろう。
だが、それゆえに魔王は、李里ちゃんに祈りをさせないはずだ。
「ち、ち、ち!」
指をふってみせた李里ちゃんは、
「その研究者みたいなやつが、研究結果を口にしたとき、こいつの頭をバシン! て叩いた!」
なんと!?
「でね、クローゼットの中にズルズル引っ張っていって、閉じ込めちゃった!」
「やるわね、お姫さま」
口元をニヤリとさせる真衣である。
これで、姫の祈りの真実に気づく者はいなくなったわけだ。
「だから真衣、〔知恵のしるし〕を探しに行くとき、一生懸命に祈るよ!」
「ありがと、李里。絶対に勝つわ。明日、探しに行くから、お願いね?」
「任せて!」
ふふーん! と鼻息荒くした李里ちゃんは、とても頼もしかった。
だが……。
ちょっと待ってほしい。考えてくれ。
姫の祈りというチート的効果の恩恵を受けているのは誰だろうか?
李里ちゃんは、真衣のためにしか祈っていない。と同時に李里ちゃんは、この世界に僕が召還されたことを知らない。
……嗚呼…………嗚呼。
悲しいことだが……言わなくちゃしょうがない。
つまり、姫の祈りは、僕には一切関係のないことが判明しました。
このゲーム世界で一番ショックを受けた出来事だった。
次にショックだったのは、酒場、マジックシェアへ再度足を運んで、宿泊するために、
「部屋を借りたいんですけど」
と、マスターに声をかけたら、
「マジックシェアにようこそ。お、旅人かい? お食事、宿泊。どっちだい?」
先ほど、親しく会話したのに、その関係はリセットされていた。
店を出てしまうと、次の来店時には一見さんにもどってしまうらしい。悲しいことだ。
60Gを支払って、部屋を借りた。
シングルルームに、ダブルベッドだった。
「ユッキー。あんた、床で寝なさいよ」
「ちょっ、おい! ひどいだろうが!」
「だって、ダブルベッドよ!? いままではシングルベッド2台が当たり前だったのに!」
「だからって、僕に床で寝ろってあんまりだろう!? 一緒にぬくぬくしようぜ!」
「絶対にヤッ!! そういうことは……す、す、好きな人と、やることでしょ!?」
ぶわわっ! と耳まで真っ赤にして、真衣は赤面した。
そして、モジモジしながら、
「ユッキーが好きなのは、李里、なんでしょ? ほかの女の子は好きじゃないんでしょ……たとえば、私とか……全然、興味ないっていうか、眼中にないっていうか、そんのでしょ……? べつにいいんだけど……べつに気にしてないけど……べつに……」
むにゅむにゅと唇をうごかして、おねおね言った。
僕は、その真衣の態度にはなにかワケがあると察して、頭をはたらかせた。
その結果、
「わかった! いまは、李里ちゃんじゃなく、真衣を好きになる! だから、一緒に寝ようぜ!」
「死ねや!!」
真衣の拳が、僕の腹に深く沈んだ。
「サイテー! なに考えてんの!? 信じらんない……!」
その声は怒りにふるえていた。
「ううぅ……床で寝たくないんだもん……そういうしか、ないだろ……うぅ」
膝をついて床にまるくなって僕は、回復魔法を唱える。
戦闘以外で魔法を唱えるなんて、思いもしなかった。
「手足縛って寝るから! なんにもしないから! 床だけはなんとか、ご勘弁を!」
「勇者さま、おいらからも頼むのら!」
「おお、ちょちょ。僕のために……」
なんて好いやつなんだ。
僕とちょちょで一緒に頼み、頭を下げると、真衣は怒りを沈めて、
「ベッドの、こっちから半分は絶対領域……もし、これを越えたら……」
言って、ギロリ。凄みのある睨みを利かせる。
そのプレッシャーに僕は背筋が凍った。
「わ……わかった。うん。絶対に越えない。寝返りもしない」
指一本、髪の毛一本でもその領域を犯したら、いのちはないと悟った。
ベッドに横になって、僕の足下にちょちょがまるくなって寝る。
白夜ということで、外は明るいのなんの。なかなか寝付けない。
くたくたに草臥れているのに寝付かれない。
というのも、胸が重いのだ。
「……真衣……起きてるか?」
「なに?」
即答だった。僕を警戒しているようだ……。
「あのさ。胸が重くて寝付けないんだ」
「はあ?」
背中を見せていた真衣が、寝返り打って、こちらに顔を向けた。
息のかかる、すぐ近くに真衣の顔がある。
「いやさ。この世界で最初にアバターを作成しただろ? そんときさ、おっぱいを大きくしちゃって、苦しい……」
「はあ……? バカじゃないの?」
呆れ顔の真衣だ。
「おっぱいが、のしかかって、息苦しい。肩も凝るし。それに、性別も女の子にしちゃって、そのせいで頭がクラクラするんだよ」
「なんで?」
「……ニオイ、かな。女の子のニオイ。甘くて独特なんだよ。自分の体からも匂いがするし、真衣からも……四六時中、このニオイを嗅いでるから……」
僕がそう言うと、真衣はアホらしいとため息を吐いた。
「真衣は、そんなことないのか? おっぱいが大きくて苦しいことないの?」
「ない」
やっぱり即答。というか、あしらう感じで答えた。
「……そうかあ。女の子はすごいなあ……。あ、僕がアバターの作成前に、真衣のおっぱいの谷間に潜り込んだの、あれ、ゴメンな」
「なによ、急に」
訝しげに眉をよせた真衣に、僕は、
「いや……ただ、悪いなと思ったから謝った」
素直な気持ちを述べる。
すると真衣は、きょとんとした顔をして見せたかと思えば、
「……バカ」
こみ上げてくる恥ずかしさを押さえ切れない様子。
火照った顔から、くすぐったい気恥ずさをいこぼして、すぐに掛け布団をかぶった。
「寝なさい」
嬉色の声が布団の中からする。
「なんだよ、バカって……??? でも、女の子になってうれしいこともある。ちんちんがないから、股がスースーして蒸れない!」
「雰囲気もなにもないのね、ユッキー。サイテー」
ドガッ!
口と足が同時だった。
蹴られて僕は床に落ちた。




