例外にしないで
裁定天秤は、塔橋を量れなかった。
巨人の庭へ降りた二枚の皿より、谷を渡る塔の方が大きい。白い皿は何度も傾き、最後には六人の成功を示す光を片側へ無理に押し込めた。
正答、一つ。
天秤の上に、学院の文字が浮かぶ。
「一つじゃない」とリナ。
認定者は塔橋を見上げた。
「結果は認める。巨人は跪き、塔は橋になった」
「なら合格?」
「特例合格を提案する」
従者が銀葉を二枚開く。
事故で永久障害を負った二人が、五人の能力者と偶然揃い、未決宮最深部で一度だけ成立させた救済例。今後の正答固定制度には適用しない。
「救済例」
リナは銀葉のその三文字を親指で隠した。
「あなたたちを再び危険へ入れず、成果を認めるための文言だ」と認定者。
「安全な案だよ」とマヤ。
「うん」
リナは否定しなかった。
事故の傷を使えば、もう戦わずに済む。セシルも遠庭への道を得られるかもしれない。
セシルは銀葉へ手を伸ばさない。杖を塔橋の継ぎ目へ置き、そこに残る六つの痕跡を示した。
「ニコの切断面。マヤが衝撃を渡した塔脚。イオが反転した胸郭。ハルの牙。リナの答案に書いた二つの景色。私が噛み合わせた眼蓋石」
「六つ揃わなければ成立しなかったことは認める」
「偶然なら、位置は残りません」
眼蓋石は今も胸郭へ噛み合っている。重力布は塔脚まで一本の擦れ跡を残す。未来環境が消えたあとも、現在の行動で作ったものは消えていない。
「再現には同じ巨人が必要だ」と認定者。
「同じ巨人でなくていい」とリナ。
「何を同じにする」
「危機と、採点の条件」
双環裁定城を指す。
谷の向こうに、二つの環状城壁が回っている。形は鏡写し。閉じ込められた者を出し、城壁を開き、全員で帰るという同じ課題を二度行える。
「私の答案と、セシルの答案を、同じ四つで採点して」
「セシルは発動できない」
「発動しない答案を書く」とセシル。「遺物の位置、自分の歩行、参加者が自分で選ぶ中止条件まで含める」
「他者の能力に依存する」
ニコが答える。
「僕の能力は僕が選ぶ。セシルの答案に従うんじゃない」
マヤも続く。
「参加するかも、触る先も、私が答える」
「私が内側へ入る」とイオ。
「僕が投げる」とハル。
「事故被害者だから免除するのは合理的です」とセシル。
「反対ではないのか」
「合理的だと言っただけです。選びません」
リナが銀葉を閉じた。
「例外にしないで」
「一点差で負けるかもしれないぞ」
「一点差で勝つかもしれない」
「そこは迷わないのね」とセシル。
「首席にだけは負けたくない」
「同感」
認定者は長く塔橋を見た。
「同じ四基準。完遂、安全、再現、時間と適応。二案とも基準へ届かなければ不合格。事故への同情加点はしない」
「それで」と二人が同時に答えた。
双環裁定城の二つの入口が開く。




