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オブリビエイト・リインカーネーション〜前世の記憶が無い転生者は自らの過去を探す〜  作者: 波来
第一章第二幕 開戦

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宙機船

《宙機船》


正式名称、試作航宙間移動用機動戦略型母船。


現在内乱がよく起こるウラル帝国から逃げてきた技術者、及びハイゼラード王国の精鋭たちによってなんとか実用化に漕ぎ着けそうになった定期的に動かなくなる空飛ぶ船のようなもの。


ものを浮かせるためには大きさに比例するように燃料を消費するため、大きければ大きいほど、魔力による稼働だろうとなんだろうと、燃費が悪いことは確かなのだが、その分多くのものを積める事が出来た。


大きいものを浮かせる技術は確立しているのだ。


しかしハイゼラード王国に小さいものを浮かせる魔法技術は無く、古代の魔法を解析して使える者がいるかいないか……といった状態である。


元はと言えば近隣航宙域における巡視船としての運用を目指していたが、安定して航宙間移動に適した速度を出せず暴走してしまう事から現在高速連絡移動用として王家に預けられている。


それが学院から王城を挟んで反対側の敷地にある魔法技術省開発局の倉庫に保管されている。

よほどの事がない限り動かされることのないし、動かすことのできない代物ゆえ、ここに保管されている。


王城からそこへと走って向かう。

大きめの地下倉庫に入ると、そこには長さ100mほどの前方に行けば行くほど細くなる、流線型の形をした気球を上部に取り付けた船のようなものがあった。


船体自体は鉄と木を組み合わせて作ったような見た目をしているが素材は違う。

とは言え見ただけでは分かりようもないので、その情報を頭の端に追いやった。


中央部には入口らしき扉があり、そこからタラップが下されていた。


「早く乗り込むぞ!」


「騎士団の面々はすでに乗り込ませてあります。先日の事件から正式に王家として調査を行い、実力のあるものを乗せています。何かあったときは真っ先にこちらに避難してください。できれば、陛下にはここに残ってて欲しいのですが……」


「わかっとる。だが私が行ってみなければ的確な判断は下せん」


「ですが……」


「それに、私には優秀な跡取りがいる。万が一があろうとこの国はなんとかなるさ」


「全く……」


ドーン侯爵がため息をつく。

大貴族として、そして身内として国王を見てきたドーン侯爵。


「あいつの能天気さと自由さは真似できんな」


「ははは……、父上がどうも……」


「なに、トップあれぐらい自由でなければ自由な国にはなっとらんよ。良い国王だ」


「とはいえそれに頭を悩ませる人は多いですけどねぇ〜」


「なに、慣れたもんだ。第3王子殿も、乗りましょうか」


「ですね。行きましょう」


タラップを上り中に入る。


さすがは王家管理の元保管されていたものというべきか、数年近く動かしてすらいなかったものだと言うのに、埃ひとつない状態だった。


中は高速移動用に固定された椅子が数百個置かれているだけで、これといった装飾などは施されていない。


「本当は近々歴史博物館にでも譲渡しようと思っていた代物だったが、役に立ちそうで良かった……いや、こんな使い方になるとは思っていなかったがな」


「だろうな。俺もこんな使い方をする事になるとは思っていなかった」


『みなさま、乗り込みは完了いたしましたでしょうか』


コクピットの方から声が聞こえる。


「大丈夫だ、出してくれ」


『了解しました。全員シートベルトの着用をお願いします。下手をすれば、死にますので」


『え』


「はよ座ってシートベルトを締めんか」


「はぁ……」


よくわかっていないゼニスとフリーナ、ゴードンとミリアとデザリアは首を傾げながら席に座り、シートベルトを締める。

ガコンと動き出したかと思えば、少し下へ潰されるような感覚に襲われる。


「うおっ」


「なによこれ」


「なんか……へんな感覚だぜ」


窓から見ると景色が下の方へと下がっていた。


飛んでいるのだ。

まぁまぁな速度で浮かび上がっていることでGが掛かっているのだ。


「お父さんはこれを知ってたの?」


「俺も侯爵という国家の中心に名を連ねる存在として計画には関わっていたからな。存在とスペックは知っていたさ」


「ふーん……」


「俺はそもそもこんな物があるなんて知らなかったけどな……」


「当然だ。そもそもの計画が国家機密なのだからな。他国に一足遅れた宇宙開発になんとか追いつこうという計画だったが……まぁこれがそのままにされているからわかるだろう?


「まぁ……うん」


計画は随分前に頓挫、それの名残りなのだ。

もしまたいつか、同様の計画が再提出され、受理されれば引っ張り出され分解されるなりするだろうし、そのためにも残されてあったのだ。


上昇すること1分ほど。

向かって右側には窓の外には王都の街並みが見える。

左側には王城が見えた。


「それよりそろそろ出発だ、腹に力入れて耐えろ」


「あ、あぁ」


ドーン侯爵の忠告にゼニスとフリーナがシートベルトをきっちり締める。

ゆらゆらと前へと進む感触がある。


「え、こんなおせえのか?」


「そんなわけあるか。王城の近くでエンジンを噴かせば王城が吹き飛ぶわ」


「……?」


どう言うことが分からないと言う表情を浮かべ、どう言うことか聞こうとしたその時。

コクピットの方から再び声が聞こえた。


『それでは、発進します』


その言葉と同時に、彼らは前からとんでもない力に襲われ、背もたれに押しつけられる。


「ウゴゴゴゴゴゴゴ」


「………………」


「ゴボゴボゴボ……」


まさに惨状。

初めての感覚、そしてとんでもない力に襲われ、気絶する者が2名、泡を吹いて倒れる者1名。


「こいつは……やべぇ……な……!」


「あぁ……! なかなかに……厳しいものがある……!」


生き残っていたのはゼニスとゴードンだった。

学院で身体を鍛えていた者同士、これぐらいならばなんとか耐えれていた。


「だが……これは……!」


「はは……」


顔をしかめながら2人はなんとか意識を保っている。

そこに。


「お前たちは何をやっとるんだ……」


「まぁ初めて乗ったのだから仕方あるまい」


いつもと変わらぬ様子で話をする国王陛下とドーン侯爵。


「な……なんでこんな中平然と話してんだよ……!」


「ち、父上ってそんなに……鍛えてましたっけ……!?」


「いや? 別に? あぁ、そうか。お前たちはこの機能知らないのか」


国王陛下がドーン侯爵の方を見ると、ドーン侯爵が話し始める。


「ゼニス、ゴーディハイム殿。椅子の右側面にある赤色のボタンを押してみてくれ」


ゼニスとゴードンは顔も動かせない状況なので手探りで右側面のボタンを探す。

しかし……、


「いやどれだよっ!」


そこには複数のボタンがあった。

顔を動かせないのでどれが赤色とかは分からない。


「ゼニス……私の席の赤色のボタンはどこにある……!」


「ちょっと……待ってろ……」


ゴードンの右隣に座っていたゼニスが顔をほんの少し傾け、目を限界までゴードンの方に向ける。

ゴードンが触っていたのは緑色のボタン。

その右側に赤色のボタンがあった。


「あと一つ……前側のボタンが……赤色だ……」


ゴードンが赤色のボタンを押すと、フッとゴードンの身体にかかる圧力から解放される。


「おぉ……生きてるって素晴らしい……」


ゼニスはゴードンの座席のボタン配置を見ながら、自分の座席の右側面を触る。

前から滑らせて、ボタンを探す。


「これか……っ!」


ボタンを押すと、ゼニスもまた身体に襲いかかる圧力から解放される。


「はぁ……死ぬかと思った……」


「はっはっは、まぁ初めては誰でもそうじゃろうな。私も初めて使った時は気絶した」


「まぁ……これはよほど鍛えてないと大概の人気絶しますがな……」


「さて、じゃぁ室内の高圧状態を抑制する魔法を……」


「「そんなものがあるなら最初からやれよ!!」」


ゼニスとゴードンが息ぴったりのツッコミを入れる。


「これは高圧状態にならねば動かせんのじゃよ。前方からの圧に対抗して同程度の圧を後方から出すから動き始めた頃にやっておっては前に吹き飛ぶわ」


要は前からの圧を後ろから同じだけかけ相殺するらしい。

だから先に起動すると乗客が前に吹き飛ぶのだそうだ。


「パイロットよ。頼む」


『了解しました』


「よし、これでOKだな」


国王陛下が立ち上がる。

先程までものすごい圧力がかかっていた船内が地上と全く変わりない環境へとなった。


「すげぇな……」


「ゼニス、外見てみろ」


「なんだ……ってうわっ!」


ドーンに呼ばれ、宙機船の右側の窓から外の景色をゼニスは見る。

見えたのはとんでもない速さで右側に動いていく地上だ。


「なんつー速さだよ……」


「最高時速はおよそ6000kmほど出ているな。辺境伯領まで10分もあれば着く」


「10分!? いくらなんでも速すぎるだろ!」


「まぁ本来であれば一番速い鉄道で10時間近くかかる距離だからな……だが体感した通りとんでもないGが掛かるからな。とても実用には不向きだよ」


「まぁ……だろうな……」


こんな無茶な乗り方をしなければまともに乗れないようなものを実用化出来るわけがない。

文字通り死人が出る。


「ゴードンはどうだ?」


「まぁ……なんとかなったよ」


「そうか、良かった。兵士たちは?」


「何人かノビてるけど大半は大丈夫だ」


後ろの方を見れば、騎士団の何人かはグダーっと頭を垂れているが、大体は生き残っていた。


「さて……デザリアにはまた身体を鍛えるようにいわないとな」


急加速でノビているデザリアの頬を叩きながらゴードンは言う。

哀れデザリア。


ゼニスは窓から外の景色を見る。


「…………」


「フィルのことか?」


ドーン侯爵が話しかけてきた。


「あぁ……あいつ、本当に悪魔なんかになっちまったのかな……って」


「まだ分からん。だが、タイミングで悪魔が出てくるのは妙だ。関連性があるのかも知れん」


「…………そうだな……」


「それを我々は今から確認しに行くんだ。今悲観していても仕方ない。いいな?」


「……あぁ」


「それに、人間が悪魔になったと言う話など無い。今回が初めて……そうじゃない事を祈るしかない」


万が一、“そう”だった場合は、覚悟を決めないといけない。


「……くそっ」


ゼニスがやり場のない怒りに身を駆られる。


『まもなく、到着いたします。座席に着いてください』


「そろそろか……」


コクピットからの声に従い、ゼニスを始め皆が席へと着く。


「パイロットよ、大丈夫だぞ」


『それでは、切ります』


座席の機能に守られているため、分からないが座席から立てば後ろへ吹き飛ばされるほどの圧力が機内に掛かっている事だろう。


『衝撃に備えてください』


その瞬間、ドンッッッッッ!と下から突き上げるような衝撃が彼らに襲った。

ドガガガガガガガと地面を抉る音が響く。


「うわぁぁぁぁぁ!?」


少しして急激に速度が落ち、そして止まった。


「なんつー止め方だよ……」


「まぁそのために船体下部は頑丈なんだけどね、よし、気絶してる人たちを起こして外に出ようか」


「了解」


「パイロットよ。また帰りよろしくの」


『了解です』


ゼニスとゴードンが気絶していたものを起こす。


「フリーナ。起きろ。フリーナ」


「……」


「ふん」


ゼニスがフリーナの頬を思いっきりつねる。


「い゛っ゛た゛い゛っ゛!」


魔力も流し込んだことで一瞬だけ全身の神経を通じて無理やりフリーナを起こす。


「ダウンしたお前が悪い。行くぞ」


「……へぇ? ちょ、ちょっと、もう着いたの……?」


「お前が気絶してる間にな」


ゼニスがフリーナに手を差し出し、フリーナが立ちあがろうとしたその瞬間。

少し離れたところからバリバリバリと空気が裂かれるような音が聞こえた。


「……っ!?」


「……うそっ……!」


遠くに見えたのは膨大な魔力の塊。

その魔力があたり色んな方向に放たれ、地面を抉り、空気を切り裂く。


その魔力は異質ながら、ゼニスとフリーナ、ゴードンとデザリア、ミリアの5人にとってとても見慣れた、そしてよく知った魔力だった。


「フィル……っ!」



王城から辺境伯領までは直線距離で560キロぐらい離れた場所にあるので、ちんたらしてたら悪魔に殲滅されるのでこんな化け物を作る羽目になりました……。

って言うのもあるけどこれ割かし後で使う技術なんだよなぁ……(謎のぼやき)

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