かつての同窓会
「よっ、久しぶりゴードン」
「久しぶりだな、ゼニス。そっちはどうだ?」
「どうも何も絶好調だ。もう副団長だぞ」
「流石ゼニスだね。次会う時には次期侯爵かな?」
「ちょっと待て、まだフィル以外にも言ってないんだぞそれ! アイツまさかバラして……!?」
「もう全員バレてるよ。フリーナにも」
「うそん……」
などとゴードンとゼニスが話している間。
「ふん! お前が着替え遅れるせいで俺らまで遅れたわ!」
「はぁ? 脳筋ゴリラが遅いせいでしょ? 私のせいにしないでくれるぅ?」
例の如く護衛の二人、デザリアとミリアが喧嘩していた。
「まぁまぁ、間に合ったんだから良いとしようね? ね?」
それを宥めるフリーナである。
昔からよく喧嘩ばかりするこの護衛達を諌めるのは護衛対象であるゴードンとフリーナだった。
「…………いつまでも学んでくれないって、辛いよね」
「はは……なんか、どんまい」
落ち込むゴードンの肩を叩いて励ますゼニス。
本来王族という身分上、こんな同窓会に来れるはずないのだが、ここはハイゼラード王国。
しかも第3王子であるゴードンは国王を継ぐ立場では無いことから割と自由であった。
故にたまにこそこそ出てきたりしている。
今回はあくまでも旧友との交流のためとしっかり出てきているので問題にはならない。
と国王が言っていたそうである。
国王がたまに抜け出したいだけでは?というツッコミは何度かあったがそれが許されるのがハイゼラード王国。
警備体制が杜撰すぎるが、それだけ平和な国なのだ。
「あと来るのは誰々だ?」
「オジキとククルは来るらしい。バウル……は来てほしくは無いが来て欲しい気もするが、来ないそうだ」
「だろうな。あっちは大変そうだが、変に関われば内政干渉となる以上こっちは動けないのがなんとも……」
「まぁ、アイツは優秀だからな。いつか良い国にしてくれるだろ。多分」
「そう願うしかないな。で、あと来るのは……」
「おーい!お待たせー!」
とても聞き慣れた声が聞こえてくる。
皆が声のする方向に振り返ると、見えてきたのは、
「お待たせ……ちょっと出てくるのに手間取った」
「おぉ! フィル! 久々だなぁ!」
そう、フィルである。
騎士団の外出届に手間取ったらしい。
そしてその後ろには……
「おぉ、メルディア。お前ら一緒ってこたぁ……へぇ〜」
「なるほどねぇ〜」
ニヤニヤしながらゼニスとゴードンが二人を見る。
こう言う時は割と敏感な二人である。
「ひ、久しぶり〜」
顔を赤らめながら登場したのはメルディアだった。
「で、進捗はどうなんよ? お?」
スッとフィルが左手の甲の方を向けて出してくる。
小指にはキラリと輝く指輪はが嵌められていた。
「師匠と呼ばせてもらいます」
「ちょっとやめてよ」
「ふっ、おめでとう。フィル」
「相手はもちろん……?」
フィルが隣にいるメルディアの方を向いて言う。
「言う必要ある?」
「そうだな。おめでとう」
メルディアの小指にも指輪が嵌められている。
メルディアはマケドナ侯爵家の一員。
騎士団員と言えど平民のフィルと婚約などと言うことはできないのだが……。
そこは良くも悪くもゼニス達の影響を受けたクラスの一員。
マケドナ侯爵家の相続権を一切放棄して平民になったのだ。
「良かったな。メルディア。数年間の初恋が叶って」
「ちょっ! それ言わないでよ!」
「隠してたのか?」
「べつに……いいけど」
「へっ、挙式はいつだ?」
「まだはやいっ!」
「僕はいつでも良いんだけどね〜」
「で? いつ告白したんだ?」
フィルが言うには今から半年ほど前だそうで、今は同棲も始めてるらしい。
お熱いねぇという周りからのヤジを二人とも赤らめながら聞いており、なんといじりがいのある二人だと皆思った。
とは言え彼らも内心とても嬉しいと思っている。
「ちなみにどうなんだよ。夜の方は?」
「それ言わないとだめ?」
「ゼニス? フィル? あんた達は昔からそう言う話が好きよねぇ? 私も混ぜなさいよ」
「おまえもかい」
など色々喋りながら他の二人を待つ。
「オジキ、ククル。久々だな」
「おう。ゼニスこそ久々だな」
「お久しぶりですゼニスさん」
これで今回集まる全員が来た。
揃って前々から行っていて、今回も予約している店へと向かう。
店は裏路地の一角にあり、あまり人が立ち寄らない場所だが、知る人ぞ知る名店のような扱いになっている。
「おっちゃん。おひさ」
「ガキどもか……一年ぶりだな」
ここの店主とは学生時代からの付き合いである。
元々デザリアの父親の知り合いだそうだが詳しくはわからない。
「どんな感じなんだ?フィル」
ゼニスとフィルが同じ席に座り話し始める。
「どんな感じ……って?」
「そりゃお前あれよ。騎士団でよ」
「うん……、あぁそのことね。まぁ特に問題とかはないよ」
「……それなんかある時じゃないか?」
「いや、本当に大丈夫だよ」
フィルは大丈夫だと言うがゼニスは信じない。
「いいか? お前は良くも悪くも素直過ぎるんだ。何か嫌なことがあるならさっさとぶちまけちまえばいいんだ」
ゼニスがそう言うも、フィルは何も言わない。
「ま、そんなことよりさ。ゼニス、次の御前試合はどうなんだい?」
「おん?あぁ、それか。もちろん俺は代表だよ。フリーナと一緒だ」
「へぇ、さすがじゃん! やっぱゼニスはすごいな。風の噂で聞いたけどもう副団長なんだってね」
「おうよ! まぁ俺だからな。次狙うは団長だ!」
「あそこの団長って確か子爵以上じゃないとダメなんだっけ?」
「そうそう! だから俺はいつかどでかいこと1発あげるんだ」
実力主義のカイシス侯爵家と言えども流石に団長ともなるとある程度の人格者、または礼儀を弁えた者でなければならない。
故に実力だけで団長になれる事はない。
その基準として子爵以上という制限が課せられている。
爵位としては下から二番目の子爵と言えども貴族だからだ。
流石に貴族としての礼儀は持ち合わせているだろうというカイシス侯爵の考えだった。
そしてまた貴族としてパッとしない者が望まれてもいる。
大成した貴族を団長にするとこの国の権力バランスが崩れる……ということが大いにある。
が、私兵団設立直後から相当な強さを持ち、貴族として大成していないものとなると適合者は数えることすら出来ないほどいない。
故に設立直後から当主が団長を務めている。
すでにゼニスは当主ドーンより強いのだが身分はいまだに平民である。
子爵以上に叙爵されるほどの功績を何かあげないといけないのだ。
「子爵には公爵以上の家の推薦とそれに見合った功績が必要らしい。その功績、は割と自由だから俺はドーン公爵とちょっと話し合ってな。御前試合で5連勝すりゃいいんだとよ。つまり……」
「今年が最後の試合……」
「そう言うこった。だから、今年はいつも以上に手加減しねぇからな」
「ふっ、望むところだよ。今年こそ君に勝って邪魔してやるからさ」
「そこは親友としてわざと負けてあげるところじゃないカナ?」
「嫌だね。僕たちはいつでも真剣勝負でしょ?」
「…………だな。そっちの代表はどんな感じなんだ?」
「詳しくは言えないけど選ばれると思うけどな〜。今年は去年以上に色々やったし、成績自体も文句はないものだろうしさ」
「へっ……流石だな」
「ありがと」
「よぉし、みんな!」
ゼニスが立ち上がり、迷惑にならない程度に大きい声で皆に声をかける。
「1年ぶりに集まったわけだが、良い報告もあったわけだ。これからの1年、それとフィルとメルディアの旅路に乾杯しようじゃないか。瓶の準備はいいか?」
店長が持ってきた酒瓶を皆手に取る。
「っしゃぁ!乾杯!」
『かんぱーい!!』
皆で瓶の蓋をキュポンと開けて、ゴクゴクと飲み始める。
「あひゃ〜」
バタン。
ククルダウン。
「あっ、またこいつ飲んでやがる! オレンジジュースにしとけつったのに!」
オジキの方に倒れたククルは床でぴよぴよ言っている。
ククルは身体が小さい事と関係しているのか酒にめっぽう弱い。
それでもなぜか酔うことが好きなようで酒を飲んでいる。
毎回同窓会に集まっては酒を飲んで潰れて記憶を飛ばしているのだ。
「はは……全く……」
フィルが治癒魔法でククルの酔いのほとんどを飛ばす。
ほろ酔い程度になるとククルが起き上がる。
「あれぇ?私どうしたんだっけぇ?」
「毎回お前はな! 1瓶飲むなっつっただろ!」
「だって飲みたいんだもーん」
「こいつ……!」
「ははは、楽しそうだねぇ」
オジキの忠告(?)に一切悪びれもせずククルはまた酒を飲もうとする。
それをオジキがパッとオレンジに変えた。
「うん!おいしい!」
「まったく……」
そうして、彼らは夜通し一年ぶりの再会を祝う。
そして翌日の朝。
もう朝日が地平線から覗き始めた頃。
「ふぃぃ〜わらひもう飲めないよぉぜにしゅぅ」
「飲んだの自分だよな!? 俺のせいにするのやめてくれるか!?」
飲み過ぎでダウンしたフリーナを背負ったゼニス。
その隣に同じくダウンしたククルを持っているオジキ。
第3王子と言えど王族であるゴードンはもう少し早いタイミングで帰っている。
犬猿の仲のデザリアとミリアもだ。
今ここにいるのは酒でダウンした女二人と、それを連れる男二人。
それをそばで笑いながら見ている男女、フィルとメルディアである。
「ククルの家は近所だし俺が送ってくよ」
「わかった。オジキもまた……来年? かな。まで元気でいろよ」
「あたりめぇだ!」
オジキがククルを連れて帰って行った。
「さて、じゃぁ俺たちも帰るとするか」
「そうだねぇ、流石にもう遅いし」
「じゃぁ、お前らもあれだな。さっさとくっつけるようにゼニス、頑張れ」
「おう! フィルこそ、次会う時は御前試合でな! 頑張れよ!」
ゼニスがそう言いながらフリーナを連れて帰る。
それが、ゼニスがフィルと会うのがこれで最後とも知らず。




