人魔族
「うぅ……」
「いや、別に責めてるわけじゃないから安心てくれ」
「怒らないの……?」
「逆になんで怒ると思った?まぁなんで隠してたのかは気になるが」
「……はぁ、じゃぁもう隠しても意味ないか……」
諦めたように項垂れるアフナ。
手で頭をサッと撫でると額にあった突起が少し伸び、悪魔と同じようなツノになる。
目の色も少しくすんでいる。
肌の色は少し変わったが、その程度。
身体に突起のようなものは生えていないが魔力量が目に見えて増えていた。
レイン以上ルナ未満と言ったらところか。
「見ての通り私は悪魔の血を引いているよ。いわゆる人魔族っていうやつだね。隠していたのは悪魔の騒動があって変に距離を取られたくなかったから……かな?」
「別に距離取るとかは私はしないがな。あの事件はお前が起こしたものじゃないだろ?」
「でも人間っていうのはそういう生き物。私がやっていなくても同じ種族というだけで迫害される」
それは言えてる。
人という生物は何かあった時にどうしても種族ごと排除したがる傾向がある。
先の大戦でも悪魔を根絶する考えが一般社会に浸透していたぐらいだ。
「だからあの事件があってちょっと言いにくいかなぁ……って」
「ふむ……さっきも言った通り私はそんなの気にしないし、気にすることもないから安心しろ」
「うん……」
「それとマティスもそうなのか?」
「一応ね、でも私よりは血の割合は少ないからツノも無いし目の色も変わらないよ。魔力もちょっとしか変わらないけどね」
「マティスは知っているのか?」
「うん」
どうやらマティスも同じようだ。
なるほどね。
という事はマティスも悪魔化すれば多少なりとも魔力が増えるということか……。
後で確認してやろう。
「まぁ隠していたのは分かったし、一旦その腹のやつをなんとかする事だな」
アフナのお腹には明らかに魔力の流れを阻害する何かがある。
「見ても良いか?」
「いいよ」
アフナが上の服のボタンの一部を外して腹が見えるようにしてくれる。
…………上のたわわは見なかった事にしよう。
お腹には大きな傷がある。
それも剣のキズだ。
「触るぞ?」
アフナが頷いたのを確認してその傷を触る。
魔力を少し通してみたりして細かく確認していく。
……なるほど、どうやら悪魔特効のある剣で斬られたみたいだな。
だが少なくとも私が持っている斬魔刀レオネチシムのそれでは無い。
斬魔刀レオネチシム……いちいち言うのめんどくさいなこれ。斬魔剣で良いか。
斬魔剣で切るともっと細く鋭利な傷跡になる。
だがアフナの腹の傷跡は抉られたような傷跡だ。
これが原因で魔力の流れが阻害され不必要な魔力の流れが生まれそれが魔力酔いに繋がっているようだ。
で、魔力を纏わせることだけできていたのは身体に触れているものにただ魔力を流す程度なら出来ていたからだろう。
だが魔法を使うとなると全身を使うことになる。
詳しい原理は分かっていないがどこかに阻害されるものがあると一気に使いずらくなるようだ。
「いつ付けられた傷だ?」
「十年ぐらい前に勇者教団の部隊に襲われた時に……」
「勇者教団か……」
勇者教団。
勇者について調べている時に何度か名前が出てきた世界三大宗教の一つだ。
一万年前の大戦で活躍した勇者を神とし、崇める教団で勇者の名のもと、悪を救済し、いずれ勇者と同じ天へと昇るために善行を積むべし、と言った教義のようだ。
だが勇者教団にも過激派は存在して……というか大半が過激派のようで、かつての敵であった魔王を崇める魔王教団、それと悪魔を滅ぼすべしと言った考えを持つ派閥が主流のようだ。
ちなみに三大宗教の他の二つはさっき言った魔王教団と、創天教会である。
魔王教団は言わずもがな、創天教会はこの世界を創りし創造神ヴェルフィアを崇めると言った具合だ。
創天教会はどちらの教団に対しても中立を貫いている。
魔王教団もかつて魔族を支配した魔王がよほどの平和主義者だったらしく、それが今も教義として信じられている。
そして魔王教団は勇者教団とも共存の道を図っていたりする。
普通魔王教団と勇者教団の教義逆じゃないかな?大体の物語だと勇者が温厚で魔王側が野蛮だったり……。
1番地雷臭するのが勇者教団であるのは確実だ。
ハイゼラード王国はゆるゆるの創天教会派だが特に宗教に関して規制などはないが、大人達、父さんや母さんも勇者教団はやめとけって言ってた。
色々やらかしてんねぇ勇者教団……。
「それでそいつらに傷つけられた傷が魔力を阻害してるのか……」
「うん」
「悪魔特効のある大剣みたいなんで抉られたみたいだな。どれ治してやろう」
「え!? 治せるの!?」
「おう、簡単だ《大聖治癒》」
魔法陣を展開しアフナの腹に沿わせて発動する。
するとみるみる傷が回復していく。
「う、うそ……」
「ま、ざっとこんなもんだ」
「今まで村の誰にも治せなかったのに……」
「当然だ。私を誰だと思っている」
「ふふっ……確かにリーシャなら治せそう」
「だろ?じゃぁ今から放出系の魔法を使う練習をしようか」
「分かった」
アフナのお腹のことを気にしながら魔力を通していく。
うん、抵抗は完全になくなっているからさっきよりも断然スムーズに魔力が通る。
「うぅ……ムズムズする……」
「ははは、誰でも最初はそんなもんだ。私も最初に魔力を通した……時……あれ、記憶にねぇな。赤ん坊の頃にやってたかな」
「ところでリーシャ……で良いのかな、リーシャはなんでそんなに強いの?」
「うーん……そうだな。それについてもみんなに話すことがあるが、それはあとにしよう」
アフナのが終わったらアイツらの魔力について見てやらないと。
「よし、魔法を使うぞ?」
「う、うん」
「《炎魔弾》」
いつも通り魔法が放たれる。
うん、威力も問題ないな。
「それじゃぁアフナも出来るか?」
「やってみる」
アフナが前に手を出す。
「ガ、《炎魔弾》!」
ボォン!と弾が打ち出される。
魔力の操作に慣れていないからかそこまで威力は無いが確実に打ち出された。
「で、出来た……」
「まぁこんなところだ。でもその状態でもやりすぎると魔力酔いを起こすから少しずつ慣らすように」
「わ、分かった!」
「おう、じゃぁ私はアイツらのところに行ってくるからお前も頑張れ。くれぐれもキリナの近くに寄らないようにな〜。巻き込まれるから」
さっきからドガァン!ボゴォン!と地面が炸裂しまくっている。
まぁ最初撃った時よりは全然マシだし少しずつ威力も抑えられてきているから良いけどさ。
レイン達の方へ飛んでいく。
何人かはもう魔力を使い切って回復させているのか地面に寝転がっている。
だがレインとルナ、そしてキナはまだ魔力を放出するのに魔法を使っている。
ルナとレインはともかく、キナはなんなのだろうか。
「よっと」
「あ、リーシャ。そっちはどうだった?」
「順調だよ。そっちは」
「カズとマティス、ゴードとカオルはもう使い切って今そこらへんで倒れてるよ」
「おぉ、本当だ。でもお前らはまだまだ余裕そうだな」
「まぁ僕は生まれつき魔力が多いからね」
ルナは言わずもがな、多いのは分かっている。
だがキナのことが気になるな。
「キナはどうなんだ?」
前魔力量を見た時は突出して多かったと言う感じはしない。
魔力量だけ見ればこのクラスだと少ない方だ。
魔力が回復しているのか。
でも実際魔力量自体は増えている。
「キナ、その眼のことなんだが」
「あ、リーシャちゃん! いいでしょ?これ」
キナの眼の色が少し変わる。
紫色に染まった眼を見せてくる。
「魔力の供給源はここか……」
キナが魔法を使い失った魔力は彼女の眼から供給されている。
魔眼か……。
私も魔眼を持っているが特にそんな事はない……と思う。
性能を理解するために随分前に軽く使っただけだからな。
「その眼は家族の誰かにも発現していたりするのか?」
「いや? 私だけだよ〜? なんで?」
「いや……どこかで見覚えがあるな……って」
「私がこの前付与魔法見た時じゃなくて〜?」
「違うな……それこそもっと前の……」
「うーん……じゃぁ私じゃない人じゃないかな?」
「かなぁ」
とはいえ見覚えがあるのは本当だ。
でもここ最近の記憶では見た事ないし前世か……?
あかん、全く思い出せん。
「まぁいいか。キナの魔力に関してはずっと使ってたら回復するだろうから続けてくれ」
「はーい」
「まぁレインとルナに関してはまぁ……もう大丈夫だと思う。十分多いと思うし」
「あ? そうなのかい?」
「レインは一年ちょっと前のルナと同じぐらいだから《破群青魔弾》とか《破群壊魔炎砲》ぐらいなら連発出来るだろ。術式教えてやるから」
「私は何したら良い? お姉ちゃん」
「そこら辺の山は人も住んでないし壊しても良いから魔力増やしとけ」
「りょうかーい」
そう言ってルナが北の方へ飛んでいって魔法を使っていた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴという轟音を響かせながらルナの魔力がゴリゴリ減っていくのを確認する。
レインに魔法の使い方を教えていたが、レインはセンスがあるのか飲み込みも早くすぐに習得していた。
いずれ全員《破群壊魔炎砲》ぐらい簡単に使えるようになってもらおうかな。
などと考えながら初めてのクラン活動を楽しんでいた。




