クラン始動
「はいお疲れ〜それじゃぁまた明日ね。て言っても今からクランでまた会うんだけどね」
「あ、そっか。今日から動かせるのか」
「そうよ。どこでする?」
「うぅん……どっか適当に空いてる場所取っといてくれるか?」
「はいはーい」
メルディアが端末をいじってどこか空いてる場所がないかを見てくれる。
「全然空いてないわね……」
「えぇ〜」
「マジかぁ……」
「じゃぁ私が使ってた荒……空き地にでも行くか?」
「そんなのあるの?」
「あるぞ」
「あぁ……あそこか……」
ルナが引き攣った顔をしている。
何故かは気にしない事にする。
「あ、じゃぁ私ちょっといろいろ書類とか持っていくからちょっと待ってて」
「はいよ」
メルディアが書類を取りに教室から出ていく。
「さて、まずどんな事をするんだい?」
「うーん……そうだな。まずは単純に魔力の量を増やしたりかな」
「そんなの出来るの?」
「出来るぞ。とは言えまぁまぁ疲れるからちょっとずつしか増やせられないがな」
「どうやるの?」
「魔力をすっからかんにして自然回復待ち。以上」
「あーね……」
「ルナもそれで魔力を増やさせたな。実際ルナはこの中でだと二番目に魔力が多いだろ?」
「なるほど……でもそもそも私みたいに魔力を放出するんじゃなくて纏わせるぐらいしか出来ない人はどうすれば?」
確かにアフナは剣で戦うのが主体で、あまり魔力を放出系の魔法で出さないタイプだもんな。
効率を考えると付与魔法みたいなのが良いのだが、この訓練をするときはとにかく魔力を使うのが肝要だ。
「まぁ……私が放出系の魔法教えるから頑張ろうな」
そうとしか言えない。
放出系以上に魔力を使うものはない。
「うぇぇ……」
「そんなに苦手なのか?何か昔からできない理由があるなら無理強いはしないから言えよ?」
「小さい時から放出系の魔法やろうとすると魔力酔い起こしてたか……」
「あー魔力酔いかぁ……ならなんとかできそうだな。よし、アフナはまず私と魔法の練習だな」
「あぃぃ……」
「他に何かあるやつは?」
皆特に何も言ってこない。
じゃぁ大丈夫かな。
「…………」
「…………」
「なんで黙ってるわけ?」
「いや、特に話すこと無いなぁって」
「それはそう。でも暇だ。なんか喋れ」
「そんな独裁者みたいな命令ある?」
「知るか。うーん……あ、そういえばキリナってどうやってAクラスに入ったんだ? あーえーっとー……口が悪くなるけどお世辞にもちょっと目立って何かの成績が良い感じはしないんだよなぁ……って」
魔力も学院全体での平均よりは断然多いが、それぐらいだ。
カズもなんだが家に金があるわけじゃ無いから中等学校もいたって普通のところに行っているか、あるいは行っていないかだろう。
だというのにこのクラスで七位、つまり学年で七位ということだ。
「え、えぇ、わ、私!?」
「うん」
「え、えぇと、ですね…………ちょっと実技でやらかしちゃいまして……」
ほう。
「というと?」
「ま、魔法で実技試験の監督をか、会場ごとぶっ飛ばしちゃって、ぇぇ……」
「わーお」
「それで合計が学年七位だったんです……」
「へぇ……」
「魔力の制御が、に、苦手なんです……」
「うーん、じゃぁ、キリナには魔力の制御の仕方を勉強だな」
キリナがパァと顔を明るくさせる。
うむ、かわいい。
「いいんですか?」
「当たり前だよ、いずれお前たちには悪魔も単独で倒せるようになってもらわなくちゃならんし」
「それ本気で言ってたんだね……」
「本気も何もそうじゃ無いと何かあった時に私が全部対応するとかになったらめんどくさいからな」
事実悪魔が出たらまず私が対応してくれる、みたいな風潮が出来つつある。
国民などは特にそうで、新聞社とかテレビでもそういう風な扱いを受けている。
お前らは父さんと母さんの事を忘れてないか?
父さんと母さんも悪魔倒せるぞぉ?
そう言えば父さんと母さんに聞いた限りだと父さんと母さんが戦ったのは人から悪魔になった奴が一人と後の悪魔は天然物って言ってたな……。
悪魔って生殖とかするのだろうか。
天然物……というか、もし悪魔同士が子を為すとしたらその悪魔たちはどこかに住んでいるのだろう。
父さんと母さんは突発的に出来る異界から悪魔が出てくると言っていたが、その先に悪魔たちは住んでいるのだろうか。
住んでいるのだとすればそこに文化などはあるのか……。だめだ、結論が見えない。
「リーシャ、リーシャ?」
「え?」
「どうかした?ずっと考え込んでいたけど」
「いや、なんでも無い」
「はいはい〜、持ってきたよ〜」
メルディアが書類などを持ってきたようで教室に戻ってきた。
「それじゃぁ行くか。皆準備は良いか?」
みんなが頷いたのを確認して転移魔法を発動する。
視界が一瞬だけ白に染まる。
それが晴れると見えてきたのは一面の荒野だ。
木々はおろか、草なども一つとて生えていない。
「うわぁ……すごい……」
「こんなところがあったんだ……」
「よくこんな場所見つけたね」
「あ、いやこれ別に見つけたとかじゃないんだよな」
「そうそう。お姉ちゃんが最初見つけた時はここ山だったよね?」
みんなは頭の上にハテナマークが浮かんでいそうな表情を浮かべていた。
「はは……ゼニスが言ってたやつね……実物で見るのは初めてだけど本当に凄まじいわね」
メルディアは父さんと繋がりがあるから聞いてはいるようだ。
「まぁこれはアレだ。私が魔法使ってぶっ飛ばしたんだ」
『はい?』
「ほら、あそこの方、少しジャンプして見たら海が見えるだろ?」
えぐれている方を指さしながら説明する。
軽くジャンプして高い場所からえぐれている方向をみれば遥か遠くに海面が見える。
少しと言っても20m以上飛ばないと見えないが。
とは言っても流石最優秀クラス。軽々と皆ジャンプをする。
「うわ! 本当だ」
「きんも!」
キモいとはなんだキモいとは。
キナは後でお仕置きしてやる。
「つまりここはお姉ちゃんがやらかしまくって出来た場所ってわけ」
「ははは……」
「3年前だっけ?」
「そうだな」
「皆ってその頃にあった光球騒ぎ覚えてる?」
「3年前……あぁ! あれか!」
レインは心当たりがあるようだ。
その光球騒ぎは、ハイゼラード王国東方沖において莫大な魔力を伴った光球が炸裂した事件だ。
どうやら当時の世界各国の研究機関やらなんやらが一斉に異常事態だと報じたことで大ニュースになったそう。
自然現象にしては規模が大きすぎると。
あと魔力は微小ながら世界各地でも観測されているそうだ。
「あれの光球確かコレだったよね?」
ルナが地面を指さしながら私の方を向いて確認をとってくる。
「そう言えばそうだったな。あのまま真っ直ぐ突き進むと海の中で大爆発起こして津波引き起こしちまうからよ」
「なるほど……でもリーシャの魔法だったのならアレはなんで自然現象って断定されたの?人間が魔法を使ったならその波長が少なからず含まれるけど、あの光球にはそんなの無かったよ?」
「それは私の魔力を使ってないからだな。ここの周りにあった魔力をありったけ使ったからな。思いの外威力が大きくなりすぎてびっくりしたが」
「世界中が君以上にびっくりしてたと思うよ」
「すまん……」
どうやら世界的にいろいろ麻痺ったらしい。
直近だったハイゼラード王国は特に。
「ま、その話は一回置いといて……と。それぞれやることやろうか。キリナとアフナ……マティスって放出系大丈夫なのか?」
「ん、俺はアフナと違って余裕だ」
「なぁにぃ? 私の方が強いって分かった上での発言かな? かな?」
「ふっ、お前より魔法はうまいからな」
「ぬぐぐぐ……」
「マティスは大丈夫と、それじゃぁ他の奴らはさっき言った通り魔力をカラカラになるまで魔法を使うように。先生は……」
メルディアの方を見るとどこかからかテーブルと椅子を出してそこで書類などに目を通している。
だだっ広い荒野のど真ん中でそんな事をしている。
メルディアにはこの前来た時にグラン爺と一緒に収納魔法を教えたからそれを早速活用しているのだろう。
「まぁ……大丈夫そうだな」
少し場所を移して、主にキリナという暴走魔法使いのことを考えて離れた場所へ行く。
「さて……まずキリナからだな。ちょっと魔法を使えるか?」
「は、はい!」
「そうだな……まず簡単に《炎魔弾》で行こうか」
キリナが魔法陣を展開すると、すでに魔力が一杯一杯の状態だ。
そこへさらに魔力を込めていく。
《炎魔弾》の魔法を使っているのはわかるが魔力量だけ見るとまるで《青炎魔弾》のようだ。
放たれた弾丸も少しオレンジがかっていて、普通の《炎魔弾》より明らかに温度が高いのも分かる。
「えい!」
可愛らしい声と共に放たれた弾丸は《炎魔弾》とは思えない速さで放たれ、地面に着弾し大爆発を起こす。
「ふむ……じゃぁ次は《破群青魔弾》。使えるか?」
「ギリギリ使えます……!」
「じゃぁやって見てくれ」
どんな事になるかは一旦置いといて。
キリナが魔法陣を展開する前から既に魔力が周りに充満する。
それらが一気に魔法陣へと集約される。
ヌッと現れたその大きな弾丸は煌々と青色に光っており、少し離れているにも関わらず熱を感じる。
「はぁっ!」
放たれた青色の弾丸ははるか遠くにある山目掛けて青色の軌跡を描きながら飛んでいく。
少しして山の斜面に着弾したのか大爆発を起こした。
そして爆発の衝撃が砂埃を撒き散らしながら、木々を薙ぎ倒しこちらへとやってくる。
衝撃波と同時にバァン!という爆発音が鳴り響く。
転んでくる木は全部受け止めておいたがなかなかの威力だ。
「ふむ……」
「へ、へとへとです……」
「まぁまずまずだな……魔力の使い方だが、魔法陣とかを作る精度は問題ないが、作る時に魔力を込めすぎだ。魔力を込めすぎないように練習するべきだな。ちょっと手、繋いでくれ」
手を差し出しキリナがそれを取る。
「良いか? 私が一回魔力を少なめにしてお前の身体を通して魔法を使うからその感覚を忘れないようにしろ」
キリナの身体を通しながら適切な魔力の量を使って魔法陣を展開する。
《炎魔弾》は特に魔力を大きく持つ事なく、放たれ地面に着弾する。
威力もいつも通りだ。
「感覚がわかるか?」
「は、はい。ちょっとだけ……」
そう言って彼女がもう一度魔力を展開すると依然込められている魔力量は多いが先ほどよりも少なくなっている。
「そうそう。やっぱりまだ多いけどその調子だ」
「わぁ……」
「もし戦うってなった時も魔力が少なくて威力が高い方が良いからな。今のキリナの魔法は面制圧に向いてるかな?だが相手が単体だった場合面で攻撃しても良いが場合によっては自分にも攻撃が当たる可能性がある。面制圧出来る威力が悪いとは言わないが、魔力を込めすぎず、周りに影響を与えずらい魔法を使える方が市街地で戦うとかってなった時は便利だな。だからどっちのやり方でも出来るようにしようか」
「は、はい!」
「じゃぁ私はアフナの面倒見るからキリナはそこらへんで魔力をぶっ放しててくれ。あ、もちろん人がいない方を向いてな」
「わかりました!」
ふとレイン達の方を見ると皆それぞれ魔法を放っていた。
「ルナは置いといてレインとカズ、キナは相当な魔力量だな……カズはなんなんだ? あいつ平民だよな?」
カズの親、少なくともオジキに魔力量が多いとは思えないからお母さんの遺伝か……?いつかカズのお母さんにも会ってみてやろうか。
「さて、じゃぁ次はアフナだ。まずお前は……放出系の魔力が苦手だったか。キリナと同じようにするからちょっと手借りるぞ」
「う、うん」
アフナの手を取り先ほどと同じように魔力を流す。
「ん?」
何か違和感を感じる。
なんというか、何か魔力の流れを阻害するような何かがあるみたいな、そんな感じがする。
「なぁ、腹から胸の辺りに何か違和感があるのがわかるか?」
「え……いや? 何も感じないよ?」
アフナの顔が一瞬歪んだ。
それを見逃す私ではない。
「何か隠していることがあるのか?」
「いや、何もないってば! そんなの!」
「本当か……?」
顔をマジマジと見つめる。
「ん?」
今までこんな近くで見たことが無かったから気づかなかったが、アフナの額のあたりに何か突起物のようなものがあるのが見える。
「なんだこれ」
「んんっ」
触ってみるとアフナが艶かしい声と共に体がびくんと動く。
「…………」
「え、えぇぇぇぇ! なんで出てきてるのぉーー!?」
アフナが涙目で額をさすりながら言う。
なんとなくここ最近思っていた事だったが、これで確信した。
「うーん…………アフナさ、お前悪魔の血入ってるよな?」




