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オブリビエイト・リインカーネーション〜前世の記憶が無い転生者は自らの過去を探す〜  作者: 波来
第一章第一幕 前世を探す者

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23/40

お出かけ

時は少し遡って3時間ほど前。


「うぃ〜っす、おはよ〜」


「おはよう、リーシャ」


「おはようございます」


「おはよう」


「おっは〜!」


「お、おはようございます!」


「なんだ私で最後か」


休日の今日はクラスの皆で王都を回ることになっている。

と言っても全員ではなくカズが来ていない。

今日は親父の手伝いがあるらしく、途中で合流する予定だそうだ。


「良い服だねそれ」


「だろ〜?私が一昨年ぐらいにそこら辺にいた竜の皮で作ったから壊れたりしなくて便利なんだよ」


その一言にルナ以外の皆の表情が凍りつく。

そういえば竜も悪魔ぐらいの扱いだったか……まぁ父さんも母さんも倒せるし(事実)いいだろ。


「何も突っ込まないことにするよ……うん」


「ははは……」


「まぁ実際私の持ってる中だと1番頑丈な服だな。使いやすい」


「まぁ確かにリーシャみたいな暴れ、ゲフンゲフン、アクティブな女性には似合ってると思うよ」


「今暴れ馬って言おうとしたか?おん?」


おい、目を逸らすな目を。

それは認めてるのと同じだぞ。


「じゃぁ行こうぜ」


今は午前の10時半。

昼飯を食べる時刻には少々早すぎるしどこか周るとするか。


「なんかおすすめの暇つぶしスポットとかないか?」


「そう……ですねぇ……なんかありますか?」


「じゃぁ俺たちの行きつけの武器屋なんてどうでしょう?」


マティスがそう言う。

確かにコイツらいっつも帯刀してるな。

見ただけで分かるような精巧な刀だ。

相当な業物だろう。


「よぉし、じゃぁ今からそこに行こう!」


マティスの案内でその武器屋のあるところまで行く。

割と王都の中心街からは離れたところにあり、人通りも少なくなってきた。


川沿いに建物が建ち並び、橋から見るとまるで水の都のようにも感じる。


川を渡って少しして見えてきたのは少し古ぼけた建物だ。

道に面した面はシャッターが下ろされている。


するとマティスがシャッターをガシャンガシャンと叩き出す。


「おじさ〜ん。今日店やってっか〜?」


『あぁ?なんだマティスか、勝手に入って見とけ』


「だってさ。まぁ勝手に見せてもらったら良いみたいだしどうぞ」


なかなかに強引である。

まぁ信頼はされてるのだろうな。


マティスがシャッターを開けて中に入らせてもらう。

暗くてよく見えない。

マティスが壁のスイッチを押すと電気が入り、パッと明かりがつく。


「おぉ、すげぇな」


「わぁ」


「おぉぉぉ……すっごぉい……」


剣や刀、斧、槍といった定番の装備のみならず、鎖鎌といったややマイナーな武器も置かれてあり、皆目に入った数々の武器に目を輝かせる。


「すごいな……ん?」


ふと魔力を感じて壁の方を見る。

そこには刀身にやや紫色の紋様が描かれた刀が額縁に入れられて置かれてあった。

惹き込まれるようにそれを見ているとふと声が掛かった。


「そいつに目をつけるとは流石だな、お嬢ちゃん。マティスがお前をベタ褒めする意味がよくわかった」


振り返ると何かオジキに通ずる筋肉質なぷよぷよの身体をしている。

例の如くドワーフみたいだ。


武器を扱うやつって全員こんな見た目なのか?


「というと?」


「その剣、いや刀はいつ誰が作ったか分からないもんだが、扱えればこの世にあるあらゆる剣を斬りふせる事が出来ると言われている。だが、この刀を真に扱えたものはいない。この刀は魔力を、生命力を吸収し、災いをもたらすと言われる妖刀だ。相当量の魔力と生命力がなければ扱う事は出来ない」


確かにこれには所有者の魔力を吸う事で切れ味を増す機構が組み込まれている。

これを作ったやつは相当な魔力を持っていたのだろう。


「おじさん、ちょっとこれ取っても良いか?」


「ん?別に構いやしねぇが、扱えると思わない方が……い……い」


「ふむ、なるほど、振り心地は良さそうだな」


刀をとって周りに配慮しながら軽く振ってみる。

確かに魔力も吸われる感触がするが生命活動に支障をきたすほどではない。


「まじかよ……」


「まぁなんとなくリーシャは行ける気がしてた」


「おっちゃん、これどれぐらいする?」


「……ぁ……っ、え、な、なにがだ?」


「料金だよ。コイツ気に入った」


「え……いや、そんなもんから金なんか取れるか!持っていけば良いさ」


「まじで!?」


「あぁ、持ってけ持ってけ、そんな誰が使えるかも分からん、近々美術品として売ろうか迷ってた刀なんだ。次扱えるやつが現れる保証なんざないし持ってけ」


「おぉ!ありがとおっちゃん!」


「軽くどんなもんか合わせる必要があるだろう。こっち来な」


刀と刀が置かれていた額縁の下側にあった鞘を手に取り、刀を鞘にしまってから武器屋のおっちゃんに着いていく。


「おっちゃんの名前は?」


「バゼルだ。別に敬称とかじゃなくてそのまま呼んでくれたら良い」


「そうか、じゃぁバゼルのおっちゃんはどこでこの刀を?」


「あ〜どうだったかなぁ……フード被ってて顔も見てないし筆談だったから訳ありだったんだろうし、あまり詮索してないな……あぁでも魔力は相当あったと思う。仕事柄、魔力も使う事は少ないし保有魔力も少ない俺から見ても多かったと思う。3年前だからあんまり覚えてねぇがな」


「なるほど……」


「じゃぁここで軽く調整するなり試し切りするなりしてくれればいい」


出てきたのは川に面したそこそこ広い土地で、ところどころに木が生えている。

剣の試し切りをする場所なのか切り株や剣の痕が付いた木がそこかしこにある。


「俺はすぐそこの作業所にいるから何かあったら呼んでくれ」


バゼルのおっちゃんはそう言って建物に戻って行った。


「ふぅー……」


鞘にしまってあった刀を抜き放つ。

鞘は一回そこらへんにあった木の切り株に置いておく。


改めて綺麗な刀身だ。

反ったその刀身を持ち手の方から見てみたりする。


振ってみればヒュンヒュンと風を切る音が聞こえる。


近くにあった木に寄り、刀の腹を腰にあてるようにして構える。


それを一気に振り上げればなんの抵抗もなく刀を触れた。


木を切った感触などない。

なんの抵抗も無かった。


「…………」


木をツンと刀の切先で突いてみると木に斜めの線が入り、その面に沿って木が滑っていった。


「なかなかどうして面白い刀だ。どんなものか試させてもらおう」




「ふぅ……こんなもんでいいか」


1時間ほどしてある程度の調整は終わらせた。


刀を私の腰に合わせて作ってもらった帯刀ホルダーにセットした鞘に入れる。

流石にバゼルのおっちゃんが作ったらしいこのベルトをタダでもらうのは気が引けたので金は払った。

その金は私が稼いだお金だ。


「じゃぁおっちゃん。また来るよ、こっちの短剣も使い心地良いし」


「おう、また来い!」


ちなみに帯刀してると普通に生活する時に邪魔なのでいつでも使える短剣も買った。

魔力を流すと強化出来るように買った後に付与魔法を軽く施したし、そもそもの性能が良かったおかげで切れ味は抜群だ。


「で、この後どこに行くの?」


「飯。もう12時ぐらいだから良いぐらいだろ」


「どこに行く?」


「う〜ん……なんかおすすめは?」


「僕はオジキさんの店しか知らないからなぁ……他の人は何かあるかい?」


「そうですね……僕の行きつけのお店などはどうでしょうか?」


カオルに連れられてやってきたのは王都の中心街にある店だ。


「行きつけ、と言っても僕の兄貴がやってる店ですけどね」


「ほう」


店のドアを開けて中に入ると木で出来たテーブルや木で出来た椅子が並んでいて、全体的に落ち着いた雰囲気の店内だ。


「ガイル兄〜?今いる?」


「あぁ、カオルか。どうかしたのか?」


出てきたのはカオルとよく似たメガネをかけた優男。

エプロンを着ていてちょっと可愛らしい見た目をしている。


「今日はクラスメートと出掛けに行くって言っただろ?それだよ」


「あぁ、じゃぁ君たちがカオルの?」


「まぁ、はい。そうですね」


「あ……失礼。殿下、お久しぶりでございます」


ガイルというカオルのお兄さんはレインを見て緊張した面持ちで語りかける。


「あぁ、5年ぶりぐらいかな?」


「えぇそうですかね。私が家庭教師を辞めて以降は体調もあまりすぐれなかったと聞いていますが、治られたのですか?」


「あぁ、この通りだ」


「そうですか、それは良かったです。席は空いているところ好きに座ってください。またあとで注文を聞きに行きますので」


「だそうです。じゃぁ適当に座りましょうか」


私とレインとルナとカオルとゴード、そしてマティスとアフナ、キリナ、キナで分かれて座っている。

なんかこのクラスナで終わる名前多いな。


流石に王太子であるレインのテーブルに護衛がいないのはよろしくないのでゴードとカオルがレインの左隣と前にいる。

なぜ私がレインの右隣に座らされたのかよく分からんが。


「さっきのカオルのお兄さんとは知り合いなのか?」


「そうだね。僕の病気の症状がまだマシだった頃に家庭教師をしていたよ。僕は8歳以降はまともに外に出られない程体が弱っていたからね。ずっと部屋で家庭教師を呼んで勉強していたよ」


「へぇ」


「その分妹のアルに重圧が掛かっていたと思うよ。その時の風潮はいつ死ぬか分からない僕よりも、健康体のアルの方が今後王位を継承する可能性が高かったからね」


「なるほど……」


お水とおしぼりを持ってきてくれた店員に礼を言って話を続ける。


「そういえばバンデルシア侯爵はアルの婿にマオルナを推薦していたな…………まぁその話が上がった直後に僕の病気が治ってその話は消えたけど」


「おぉマジか」


「そうだね。そう考えるとアルも僕もリーシャに助けられたことになるね」


「全くそんなこと考えてなかったがな」


「考えてたらすごいよ。あんなどいな、げふん、ど辺境で王都の情勢を把握してそんなことをしてたならね」


そうですねー、どうせあそこは田舎ですよーだ。

実際田舎だし否定はしない。


「よし、メニューを見ようぜ」


「そうだね。カオル。何かオススメはあるかい?」


「そうですね……これなんてどうでしょう」


カオルがメニューを開いて指差したのはビーフシチューだ。

写真も載っていてみた感じは美味しそうだ。


「それじゃぁ僕はご飯とシチューの大盛りセットで……」


「あ、気をつけてください。この店写真詐欺してるので。あたかも大盛りみたいな感じで写真載せてますけどこれが並盛りですから」


「ふぇぇ?」


レインがクッソ情けない声を出す。


「そうだな……じゃぁ私もビーフシチューのセットで。大盛りで」


前も食べた気がするが……まぁいいか。


「話聞いてました?」


「いや、普通に毎日これぐらい食べてるから……」


「えぇ……」


「なぜそんなに引かれる?」


太らないからいいの。


「それじゃぁ私もお姉ちゃんと同じやつにしようかな。小盛りで」


他の席の奴らも決まったようで、カオルが店員を呼ぶ。


「ガイル兄〜、メニュー決まった〜」


「はいはい。今行くよ」


メニューを伝えてから20分ほどしたら全員にメニューが行き渡り、皆んなで食べる。

とても……美味しかった……。


時刻はおよそ13時。

その頃には店も客で賑わい始めていた。


「さて、そろそろお暇するよ、お兄」


「そうか、また来いよな」


その後レインが払った金額がまぁまぁ高くてびっくりした。

一人当たりがオジキの店での2人前ぐらいだった。


「レイン。ごちそうさん」


「いいよいいよ。それにしてもおいしかったね」


「あぁ。また行きたいな」


「そうだね、次は王太子権限でちょっと料金安くしてやろうか」


「王ハラ(王族ハラスメント)やめい」


「いて」


なんつーことを言うのやらこいつは。


「それにしても仲良くなりましたねぇ、あの二人」


「そうねぇ……お姉ちゃんにも春が来るのかしら」


4月だから春はもう来てるぞ、妹よ。


「ん?」


大通りから少し離れているがやや大きい道を歩いていると、ある建物の一室から気になる魔力を感じた。


「まさか……」


途端、その魔力が膨れ上がり、皮膚に突き刺すように魔力が主張してくる。

この魔力にはとても見覚えがある。

マオルナの首から出てきた球体と、遠くから見たあの魔力、そして先日見つかった魔力球の魔力と全く同じ波長。


マゼンタがそこにいる。


「レイン」


「ん?なんだい?」


「マゼンタがいる。あの建物の4階の1番奥の部屋」


「っ、わかった。他の人たちは?」


「今訓練もまともに出来ていない状態でマゼンタと一戦やらかす可能性があるところに連れて行くのは危険だ。レインとルナとカオルとゴード以外は万が一に備えて周辺の人払いを」


「わかった!」


「それじゃぁ行ってくる」


音をなるべく立てないように転移魔法で魔力の源の真後ろに転移する。


そして騎士団の制服を着た二人の男を前に魔力を解放しているマゼンタの左肩に手を置く。


「「あ」」


騎士団の二人、見覚えのある顔だ。確か副団長と補佐官だったか?遠くから見ただけだから合ってるかは分からないが。


彼らが私を見つけて声を上げる。


「やぁ、マゼンタ。お前のせいで色々迷惑かけられたぜ」


全くもって色々迷惑を掛けられたよ。

マジで。

お前のせいで人を殺す羽目になるとは思わなかったよ。


魔力を右の拳に込める。

マオルナ戦の反省を活かして魔力を効率よく込めるためにアレから何度か修練をした。


それは既に拳でありながら圧倒的な破壊力を有するものとなった。


「なぁっ!?」


「お返ししてやるよ!」


バゴォォォォォォォォン!ととても人を殴った時に出る音とは思えない大きな音を立ててマゼンタに顔面に拳が当たった。


肩を抑えていたことで、ものすごい勢いで吹き飛び壁を突き破ってどこかへ飛んでいく、などということにはならなかったが、マゼンタが吹き飛び部屋の壁に激突した。


「さて、失礼した、たまたま近くを通っていたもので」


「……あ、あぁ、いや、大丈夫だ。我々としてもマゼンタに一人で対応するのは難しかったし……」


「だろうな。ではさっさと逃げた方がいい」


「え、いやアレで気絶したんじゃ……」


「そんなわけあるか。あいつの魔力はいまだに隙を窺っている。まだ意識も保っているさ」


「ふっふっふ……流石にバレてしまいますか……」


「当然だ。この程度で騙せると思われるのは心外だ」


マゼンタが自らの身体に覆い被さった瓦礫を払いのけ立ち上がる。


顔面に少し赤くなったところがあるもののほぼ無傷だ。

どこに飛んでいくか分からないからって流石に威力を絞りすぎたか。


「ふっふっふ……なるほどなるほど、確かにこれほどの力をなんの対価もなく発揮できるのであればマオルナが負けるのも無理はありませんねぇ」


「当然だ。そしてお前もぶっ飛ばす。マオルナを悪魔化するようなことをさせたお前はな」


「ふっふっふっふっふ……ふはははははは!これは面白い!人間如きがそのような戯言をほざくとは!それが出来るのならやってもらおうじゃありませんか!」


マゼンタの額がバキバキと割れ、そこからツノが生える。

禍々しい紫色の光沢の目立つツノ、そして目の色もおかしい。

マオルナの時は目の色も変わらなかったが、マゼンタの目の色は変わっている。

真っ赤に染まったその目はまさに人外。


「やはりお前は悪魔か。それも天然物の」


「えぇ、そうですよ?人為的にい悪魔化したそれとはそもそもの地力が違いますので、勝てるとは思わない方がいいですよ?」


「なるほど、確かめてやる」


魔法陣を描きそこに魔力を流す。


「《破群青魔弾(ディガ・ルマド)》」


太陽の如き熱量を発した蒼炎がそこに現れ、マゼンタ目掛けてそれを放った。

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