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オブリビエイト・リインカーネーション〜前世の記憶が無い転生者は自らの過去を探す〜  作者: 波来
第一章第一幕 前世を探す者

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容疑者

「さて、これより会議を行う。全員揃っておるな」


王城の一室、中央に円状のテーブルが置かれた部屋の1番窓際の席に座るゴーディハイム・フォン・ハイゼラード。

彼がテーブルの周りの席に座る面々を見ながら言う。


国王の両端にいるのはそれぞれハイゼラード王国の国防を担う二つの組織の長である騎士団長デザリア・フォン・ムトラーゲンと魔法師団長ミリア・フォン・サザード。


右側には順番にメルディア学院長、英雄ゼニス、英雄フリーナ、そしてククル魔法科学省長。


左側は同様にジョシュア騎士団副団長、ガウ補佐官、レオルド魔法師団副団長、キリナ補佐官が座っている。


そしてゴーディハイムの目の前の1番扉側に座っているのが情報局長ハマル・カデーサ。


「うむ、ではこれより前日のガルマ・バンデルシア元侯爵の嫡男、マオルナ・バンデルシアの悪魔化についての調査結果の報告を各自してもらう」


バンデルシア家はここ数年の違法行為、越権行為、果ては国家転覆の罪に問われ爵位を取り上げられたのだ。

故に今はただのバンデルシア姓の人たちなのだ。


マオルナ当人は死亡、父親であるガルマは行方不明。母親は数年前に死亡していたので特に無し。


「それではまず魔法師団の方から報告するわ。先日騎士団と合同でリーシャ嬢の証言からマオルナが悪魔化したことについて関係があるかもしれない施設を強襲、そこで証拠となりうるものを接収しました」


ミリアが参加者の前に調査結果が書かれた紙を魔法で滑らせる。


「紫色の魔力のこもった球体。リーシャ嬢曰く魔力が高密度になると紫色になるそうです。そして彼女は先日見た魔力と、マオルナの体内から出てきた球体の残留魔力と一致していると言っていました。この魔力の球体に掛けられた魔法が悪魔化のトリガーと見て良いでしょう」


「中の魔力の性質はどんなものか分かっているのか?」


「リーシャ嬢は憎悪の増幅と魔力暴走が主な性質と言っていました」


「なるほどな……」


「他には」


「情報局から一つ」


ハマル・カデーサ、黒色の長い髪、そしてメガネをかけている。

生まれが平民でありながら国家の準最高官になった経歴を持つ。


「先日調査したバンデルシア邸、またバンデルシア元侯爵家に勤務していた者、また交流があった人々へ幾つか情報を得たので報告させていただきます。まずバンデルシア侯爵家夫人が4年ほど前に亡くられていることは周知の事実かと思います」


「そうだな、確かその後ぐらいからだな、バンデルシア侯爵の様子がおかしくなったのは」


そう、バンデルシア侯爵の言動、怪しい動き、悪行の数々が見えてきたのはその頃だった。

当時はただ単に愛する夫人を亡くした事による一時の気の迷いと思う人も多かった。


だが時が経ち一向にその動きが減らないどころか、多くの悪徳事業に手を出しては違法な行為に手を染めていた。

確実な証拠がない状況で立件出来ない以上証拠が出るまで動けなかったが、今回の件でまず一回内部を調査することが出来た。


「まずバンデルシア邸から出てきた幾つかの書類など。そこには隣国のウラル帝国の貴族へ多くの武器や奴隷、魔法書などを横流しした取り引きについての資料がおよそ143枚、これは3年半前から始まっていますね」


「なんだと……!?」


ハイゼラード王国はこれでも世界でも有数の魔法大国、世界にまだ出していない魔法技術とてある。

付与魔術などの一部もそれに含まれる。


「それは、大問題ではないか!そんなことをバンデルシア侯爵が……!?」


流石に信じられないと言った様子でゴーディハイムが取り乱す。


「……俺も流石にそれは信じられねぇな。向かった先が逆方向だったとはいえ、何度か対面した身からすると、いけすかないオッサンだったが、それでもこの国を愛している男だったはずだ。そんな奴が妻を失ったショックでそこまでのことをするものなのか?」


「それは当人にしか分からないでしょう。ですが、それについて分かるかもしれない可能性のある情報があります。それは今から4年前、バンデルシア侯爵夫人が亡くなられたおよそ3ヶ月後ぐらいにガルマ・バンデルシア元侯爵と、マオルナ元次期侯爵のお二人と彼らの護衛数人がウラル帝国に行っております。どうやら傷心旅行のようですね。他国での彼らの動きは多くは把握できていませんので、判明したことのみを言います」


「ふむ……確かにその頃バンデルシア元侯爵は政務を補佐官に任せてウラル帝国に行っていたな。あぁ、すまない。続けてくれ」


「はい、そこで彼らはウラル帝国のとある非常に貴族集権的な貴族と会合をしたようで、そこで何かしらの話をした事でバンデルシア元侯爵の悩みの一部が解消されたそうです」


ウラル帝国は独善的な思考は他国よりも非常に強い。

他国の技術を欲しがるくせに自らの保持する科学技術を全く外に流出させていないのが良い例だ。


「あの顕示欲の強いウラル貴族どもだ、あの手この手でバンデルシア元侯爵を丸め込んだか」


「我が国の技術を横流しするものを得れられることが出来ればそのものの立場は国内では上がるだろうな」


「えぇ、事実記録上はその旅行から帰ってきた後から横流しは始まっていますし、そういう意図があったのでしょう」


「となると大問題だな……。だがそれが今回のマオルナの悪魔化の騒動についてなんの関係が?」


「それについてはここからです。その旅行から帰国する際、バンデルシア元侯爵はある男を連れ帰っています。その男はその後こちらでゼミの講師をしていたようで、マオルナ元次期侯爵もそこに通っていました」


その後ハマルは紙を一枚それぞれに渡す。

そのゼミに通っていた複数の貴族令息、令嬢の名前が書いてあった。


彼らにはある共通点があった。


「……なるほど、貴族派の連中か」


「そうです。貴族に権力をもっと集約するべき、また平民を追い出すなどという事を言っていた貴族派の令息令嬢がここに通っていたのです」


「ふむ……となるとその男、我が国における反乱を引き起こそうと目論んでいたのか?」


「その可能性もあるでしょう」


「その男の名前は?」


「マゼンタ・アトファーディー。リーシャ嬢が聞いた、死ぬ間際のマオルナ元次期侯爵が呟いた名前を一致します」


「…………っ!では、つまり、そいつがバンデルシア侯爵家どころか、貴族派の多くの家を唆したということか……!?」


「間違いでないです。マオルナ元次期侯爵が亡くなり、その後リーシャ嬢が件の山沿いの建物に見えた魔力が消えた時刻と同じぐらいに貴族派の一部の人間の態度がまるで人が変わったかのように変化したという証言もあります。どうやら魔法を使っての洗脳の可能性が高いです。そして、状況証拠なので確定では無いですが、リーシャ嬢の証言、マオルナ元次期侯爵の死ぬ間際に呟いた名前、そしてマオルナ元次期侯爵の死体から出てきた球体。これらからマオルナ元次期侯爵を悪魔化したのはマゼンタ・アトファーディーと推察されます」


「だろうな……」


「これで情報局からは以上です」


「わかった、この問題については来年の、いやそれでは間に合わんか……これについては近々議会を開く。それまでマゼンタ・アトファーディーについてのわかっているだけの情報を騎士団と魔法師団に伝え、もし見つけた場合は即刻こちらに連絡を入れるようにと、伝えてくれ」


「はっ」


デザリアが恭しくお辞儀をする。


デザリアがジョシュア副団長に目配せをすればすぐに意図を察し、補佐官のガウと共に議室から出て行った。


それに続き他の者たちも続々と出ていき、残ったのはゼニス、フリーナ、そしてゴーディハイムだけだった。


「ゼニス、私は先に家に帰るわね」


「あぁ、気をつけろよ」


フリーナはそう言って娘のリーシャに教わった転移魔法で家に転移して行った。


それを見たゴーディハイムは椅子から立ち、大きな窓から見える王都の街並みを眺めながらつぶやく。


「……ウラル帝国……アイツは、今頃何をしているのだろうか」


「ふっ……ゴードンはアイツと仲良かったもんな」


「あぁ……」


「なに、いずれ会うこともあるだろうよ」


「そうだと良いな……」




──────




「おい、ガウ、ガウ!起きろ!」


「ふぁ〜〜なんすか〜?副団長」


騎士団の本部の補佐官席の椅子で寝ていたガウ・フォン・シャーマンは眠そうに目の前で自分を起こした男を見る。


「なんすか〜じゃない!今からちょっと行くところが出来たから行くだけだ!ついてこい!」


「えぇ〜もう今日は仕事無いって言ってたじゃ無いですか」


「急報が入ったんだよ。さっさと行かないと逃げられちまう」


「えぇ……なんですか?」


「マゼンタ・アトファーディーらしき人物の目撃証言だよ。今ゼミをやっていた建物に入ったところを見たって通報が来たんだ」


「マジですか!?」


「あぁ、だからお前を呼んでるんだよほらはよ準備をせえい!」


ガウは大急ぎで装備を整え、先に出ていたジョシュアに着いていく。

すでにゼミを行っていた建物は特定済み。


近所にいる元騎士団所属のおばさんがたまに話しかけていたそうで、今回たまたまそのおばさんが騎士団に通報をしてくれたそうだ。


なんという偶然か。


騎士団本部から15分ほどしたところにある4階ほどある建物。

そこに奴は入ったそうだ。


ゼミはいつも4階でしていたそうで、二人は4階に上がっていく。


「(ここがその部屋だ。あくまで事情聴取のていを取れよ?)」


「(わかっています、あくまで彼が犯人であるとされているのは状況証拠だけですし)」


「(よし、いけ)」


ガウがドアをコンコンと叩く。


『はい、何用でしょうか?』


優しい声の男が聞こえた。

声だけ聞けばとても人を悪魔化するような事をしでかす者とは思えない。


「失礼、王国騎士団所属ガウ・フォン・シャーマンであります。実はここ最近街の治安が悪化するなどしているためいくつかのお宅を巡回がてら回らせてもらっているところです。少しお話しよろしいでしょうか!」


「(お前よくそんな嘘パッとつけるな……)」


「(なれてますので)」


『はい、良いですよ。鍵は開けているので入ってきてください』


「(入りましょうか)」


ジョシュアは無言で頷く。


「失礼します」


「えぇ、良いですよ。そちらに座りますか?」


彼らの前に出てきたのは金色の髪を靡かせたガッチリとした体格の男。

情報通り彼がマゼンタ・アトファーディーで間違いないだろう。


「ご好意感謝します」


「えぇ、良いですよ。それで話というのはなんでしょうか」


「実は、先週のことですが学院に悪魔が出た事件はわかりますでしょうか?」


「もちろんです。最近ずっとそのニュースばかりですので耳に入りますよ。そして私の愛する弟子である……マオルナくんがその悪魔化してしまった本人であるということも……」


とても悲しそうに彼は声音を落とす。


「そうですね……」


「それに彼は何者かに悪魔化させられたと聞きましたね」


「えぇ」


「私は、その人が許せません。私の愛する弟子をそのようなことにしたその男を……!」


「なるほど、それは我々も同じ思いです。そのために騎士団と魔法師団がいるのですから」


ジョシュアは被害者に寄り添うかのように語りかける。

内心、マゼンタが元凶であると思っていながらも。


「ありがとうございます……そんな事をする男はさぞ非人道的な考えを持った人物なのでしょうね……」


「でしょうね。それでは、貴方もお気をつけください。いつどこにそんなものが現れるか分かりませんので」


「えぇ、ご忠告感謝します」


「それでは」


ジョシュアとガウは立ち上がり、ドアの方へ向かう。

だが、二人とも途中立ち止まる。


「どうされましたか?」


不思議そうにマゼンタが彼らに尋ねる。


「いえ、一つ貴方が言ったことについて気になったことがあるんですよ」


「なんでしょうか?」


「いえ……なぜ貴方がマオルナを悪魔化したものを男、と断定したのか気になりましてね」


ジョシュアが放ったその一言にマゼンタは一瞬顔を歪ませる。

その顔を見逃さなかったジョシュアとガウは双方共に確信した。


((コイツが犯人だ))


「なるほど、確かに私は男、と言い切ってしまいましたね。確かに女性という可能性もありますか」


「えぇ、そうですね」


「ですがあんなガタイの彼をそんな追い詰めて悪魔化をさせるものを接収させる事が出来る女性は少ないと思いましたので」


「ふむふむ、なるほど、確かに筋は通っていますか」


「ですが、一つ決定的な事を貴方は口を滑らせてしまいましたね」


「?」


怪訝な顔をするマゼンタに、先ほどマゼンタが口を滑らせた事を言う。


「ではなぜ、貴方は悪魔化のためにものを摂取させねばならないと知っていたのですか?」


「っ!?」


マゼンタがしまった、といった様子で顔を歪める。


「そんな事はまだニュースにもなっていない、それどころか王国内でもごく一部の人間しか知らされていない事実だ。それをあくまでゼミの講師であったはずのあなたが知っているのはおかしい。ですよね?マゼンタ・アトファーディーさん。ですが貴方がこの事件の犯人であるとすれば話は別。犯人なのだから全て知っていて当然でしょう」


「ふっふ……ふっふっふ……!ふっはっはっはっはっはっは!」


何かの気に触れたか?と二人は身構える。


「ふふふ、いやいや、先日彼女がマオルナを倒してから色々ボロが出てしまいますねぇ。これではせっかくマオルナを悪魔化したというのに計画が台無しになってしまいそうですね」


「ついに認めたか」


「やはりお前が……!」


ジョシュアとガウは腰にかけている剣を抜く。

付与魔法で切れ味が上がった騎士団の中でも上等な支給品だ。


「えぇ、そうですよ。私が彼を悪魔化したのですよ。なかなか扱いやすい駒でしたよ。彼は」


「人を駒扱いするとは……!この外道が!」


「外道だろうがなんだろうが構いませんよ。これが私にとっての正道なのですから」


マゼンタが魔力を解放し始める。

その魔力は嵐のような奔流を生んでいた。


「なんの目的でそんな事を……!」


「教えるわけがないでしょう?だからと言って生きて帰すつもりはありませんよ?」


魔力がギュン!と物質としての形を持ち、ジョシュアに襲いかかる。


ガギィィィィィン!と大きな音を立て、ジョシュアはそれをかろうじていなす。

王国随一の反射神経をもってしてもかろうじてなのだ。


他の者であれば一瞬で吹き飛ばされるだろう。


「ふっふっふ……さて、それでは……ん?」


ふとマゼンタが後ろに何かを感じた。

そして、マゼンタは自分の右肩に何かが触れる感触があった。


「「あ」」


ジョシュアとガウが声を上げる。

マゼンタの後ろにいたのは。


「やぁ、マゼンタ。お前のせいで色々迷惑かけられたぜ」


そこにいたのは、ここにいるはずのない女。

黒く長い髪に白のジャケットを着て、左手をマゼンタの右肩に置いている。


リーシャである。


彼女がマゼンタの肩に置いていない方の手には膨大な魔力が集まっている。


「なぁっ!?」


「お返ししてやるよ!」


膨大な魔力が集中し、それにより圧倒的な質量、圧倒的な威力を持ったその拳がマゼンタの顔面に襲いかかる。

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