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022-2

 俺は床に並べた道具を眺めながら、ため息をつく。


 指弾の弾――黒瑪瑙に邪気祓いと破魔のチカラを封入したもの――が二十八個。


 コーヒー缶サイズの霊力妨害爆弾が二個。


 シャーペンの幅を二倍くらいにした投擲用の短刀が七丁。


 小型の防御結界を展開する護符が三枚。


 あとは固形栄養食と水、消毒液など最低限の医療品の入った救護セット。


 出発前にヒップバックに収まる量だと感涙してしまった自分が情けない。


 いつもなら大きめのショルダーバックに詰め込めるだけ霊具を詰め込んで実習に望んでいたというのに。


「ほうほう、随分と念入りに準備しているな」


「ね、念入り? これで?」


「ああ、そうだ。普通は緊急回避用に防御結界を展開する護符やお守りと医療品くらいだな。実習の平均時間は五時間以下だ。それを考えると水や食料は持ち込まなくても影響は軽微だ」


「……それが、普通ですか?」


「まあ、白木のように物体に操作するチカラを行使する者は、攻撃用の霊具を用意しているな。ほとんどは神代や藤代の様に得意な武器を用意して終わりだな」


 式神――なずな教諭――の言うように、梓が実習に持ち込むのは、和弓と矢筒、短刀一振りくらいだった。


 そう言えば、初めの頃、俺の荷物を見て梓が怪訝そうな顔をしてたな。


 藤代は「旅行でも行くつもり?」って言ってたな。


 白木は特に反応しなかったのは、霊具を持ち込む方だったからか。


 霊障駆除実習が美味しいバイトって話を聞いて、変なことを言うと思っていたけれど、俺みたいに荷物を用意しない連中は出費がほとんど無いから一回あたり数万円は手に入るのか。


 霊障駆除実習を受け始めてだいぶ経つのに、初めて知った事実に俺は軽いショックを受ける。


「だから実習の後に、梓が飯を奢るって言い出すのか……」


「なんの話だ? まあ、いい。霊障の器、人体模型には物理攻撃が効く。器から出てきたところに黒瑪瑙を数発、撃ち込めば片はつくだろう。器に潜り込むのは低級な地縛霊が多いからな」


「人体模型をぶっ壊すのはいいですけど、低級すぎると俺が感知出来ないんですけど……」


「はあ、そうだったな。面倒だが、タイミングを見計らって結界を展開してやる。それで()えるようになるだろう」


「わかりました。あの人体模型って、弁償とかにならないですよね?」


「強力なヤツが憑いて変異している場合は弁償対象外だ。アレくらいなら弁償だろうな」


「マジですか……」


「ああ。でも実習中に器物を破損させても学園が弁償するから安心しろ。ただし、あまりにも高額の場合は、今後の教訓として数パーセント生徒に支払わせることもある。校舎を全壊させるとかしなければ、今回の実習で鬼灯が弁償することは無い」


 式神の言葉に俺は安堵する。


 今回は霊具の支度金があったので、予定では数万円のプラスが出る。


 毎回赤字か数千円のプラスしかなかったので、本気で嬉しい。


 でも、人体模型の弁償をしなければいけなくなったら、確実に赤字だ。


「作戦とか必要ですか?」


「鬼灯は作戦を立てられるほど器用じゃないだろ。速攻で仕掛けるか、待ち伏せして仕掛けるくらいしかないだろ」


「まあ、そーっすね。遠距離から狙撃ってのは無理ですね。ギリギリ待ち伏せが出来るぐらいですね」


「現状で最善の作戦は、コチラから仕掛けて速攻で対象を破壊、くらいだな」


「俺は待ち伏せでもいいですよ」


「そうした場合。わたしに連中を釣ってこい、ということか? あの手のタイプは目標を見失った時点で元の場所に戻るんだぞ」


「……速攻でいいっす」


「それでよろしい。じゃあ、いくぞ」


 そう言って式神は俺の体をよじ登り、頭にしがみつく。


「あのー、なずな教諭、何がしたいんっすか?」


「ほれ、移動だ、移動。最初に連中を発見した理科室まで行け」


「俺の頭に乗る必要は無いのでは?」


「マスコットキャラクターには定位置というものがあるんだ」


 ペチペチと俺の額を叩いて催促する式神。


 俺は、ため息をついて、理科室に向かうことにする。


 しばらくすると頭に乗っかる式神――なずな教諭――から鼻歌が聞こえてきた。




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