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召喚しちゃうぞ!〜四の姫と兎の隊長さん  作者: 十海 with いーぐる+にゃんシロ
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【16】兎の隊長さん

 

 さて、それからしばらく経過したある日の午後。

 

 就任の挨拶にド・モレッティ大夫人の館を訪れたロベルト隊長は……

 庭に面した日当たりのよいテラスで、彼を歓迎して催された茶会の席上で、とんでもないものを目にしてしまった。

 水色のリボンに水色のドレス、金髪に青い瞳のニコラ・ド・モレッティ嬢が、どこかで見たことのあるような人形を抱いていたのだ。


(何故だ。何故、あいつの所に落としたはずの呪い人形を、四の姫がーっ!)


 しかも、首に巻いてあるリボンは姫の髪に結んであるのと同じ水色。かなりお気に入りらしい。

 一目見た瞬間から、お茶の香りも茶菓子の味も舌の上をことごとく素通りし、ロベルトの頭の中は一つの考えでいっぱいになった。


(どうにかして取り戻さねば!)


 それでも礼儀上、お茶一杯飲み終わるまではどうにか平静を保ち続けた。席を立って、庭園を愛でつつ歓談……となった所で思い切って四の姫に話しかけてみた。


「あー、その、姫。その人形の事なのですが……」


 ロベルト・イェルプは万事に置いて単刀直入、常にまっすぐな男だった。


「これ?」


 四の姫ニコラは満面の笑顔で答えた。


「可愛いでしょ! 師匠からもらったの。触媒を全部外してしまったから、もう術には使えないんだけれどね」


「ほほう」


 言われてよくよく見てみれば、確かに。自分の手元にあった時とは微妙に様相が変わっている。目に縫い付けられていたボタンは、赤い石から緑の木と白い何かに変わっているし、腹を縫い閉じている糸も黒ではなく、赤だ。


(可愛い? これが?)


 今一度しみじみと見る。年ごろの女の子の考えはよくわからない。と、言うかまったく理解できない。

 だが、これも個性のうちなのだろう。


「実に、個性的な造形ですね」

「でしょ、でしょ!」


 お気に入りを褒められて、嬉しかったのだろう。四の姫は上機嫌で元呪術人形にほおずりした。


Patchieツギハギくんって呼んでるの」

「なるほど、確かに見た通り分かりやすい。術の知識がおありと言うことは、姫は魔法について学んでおいでなのですか?」

「そうよ。魔法学院の初等科で勉強してるの。もうすぐ初級術師の試験があるのよ!」

「なるほど」


 貴族の。それも騎士の令嬢が魔法使いを目指すなんて。しかも本格的に術師の試験を受けるなど、王都ではまず考えられないことだった。しかし、一方でロベルトがこれまで勤めていた東の交易都市では、個人の資質を活かすことはごく普通に行われていた。それこそ、家柄や身分を問わずに。


「それは、団長にとっても頼もしいことですな」

「ありがとう、ロブ隊長」


 ともあれ、ひとまず安心した。あの人形はもう、無害なのだから。

 安堵のあまりロベルトはころっと失念していた。フロウの店の裏口に置いてきた(と言うか落としてきた)はずの人形が、なぜ、ニコラの手に渡ったのか。

 彼はまだ知らない。四の姫とヒゲの薬草師の繋がりを。

 

 一方で四の姫は………


(どSって聞いてたから、てっきり意地悪な人かと思ってたけど……シャルとダインの言う通り、割といい人みたいね)


 初めて顔を合わせる隊長に、友好的に接しようと決めていた。


「ね、ロブ隊長」

「はい?」

「就任祝いに何かプレゼントしたいのだけど……巾着袋とクッション、どっちがいい?」

「では、巾着でお願いします」


 ロベルト・イェルプは万事において実用性を重んじる人間だった。


「わかったわ。えーっと、何か希望するモチーフはある?」

「ウサギでお願いします」

「ウサギ? ずいぶん可愛いのを選ぶのね」

「私の個人紋なのです」


 そう答えるロベルトのマントには、ウサギを刻印した盾の形をしたブローチが留められていた。


「わかったわ! 楽しみにしててね!」

「はい、ありがとうございます」


 笑み交わす二人をこっそりと、モレッティ館に住むちっちゃいさんたちと、キアラが見つめていた。


「うさぎ、うさぎ」

「たいちょうさんは、うさぎ」


 水盤の陰からしゃらしゃらと、せせらぎの音にも似た声で囁きながら。歌いながら。


「うさぎ、うさぎのたいちょうさん」


(召喚しちゃうぞ!〜四の姫と兎の隊長さん/了)

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