第5話:街道のならず者 〜ツッコミが世界を救う?〜
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波乱の野宿を終え、港町へと向かうアルト一行。第5話では、ファンタジーの定番「盗賊団の襲撃」に遭遇します。しかし、この常識外れなパーティーの前に立ち塞がった盗賊たちの運命は……!?
野宿を無事に乗り越えた翌日。
森を抜け、港町『サザンポート』へと続く見通しの良い一本道を歩いていた俺たちの前に、ついに「それ」は現れた。
「ひっひっひ! そこ動くなぁっ! 身ぐるみ脱いで置いていきな!」
草むらからガサガサと音を立てて躍り出てきたのは、ボロ布を纏い、錆びたナイフや棍棒を手に持った男たち——十数人の「盗賊団」だった。
「お前たち、運が悪かったな! 俺たちはこの街道を仕切る『黒狼盗賊団』様だ! 大人しく金目……ん?」
調子よく啖呵を切っていた盗賊の首領らしき男が、ふと俺たちのパーティーに目をやり、ピタリと動きを止めた。
俺たちの陣形はこうだ。
先頭に、全身毛皮でバカでかい斧を担いだ巨大なヒグマ(マルコ)。
その隣に、眼鏡をキラーンと光らせて怪しげな呪文を呟く男。
後ろで、気配を完全に消してナイフを弄ぶ少女。
そして中央に、最高級シルクの旅装を着た美しすぎる王女様と、一番弱そうで胃を押さえている男(俺)。
「……おい首領、なんかあの真ん中の女、めちゃくちゃ上等な服着てねえか?」
「それより左の奴見ろよ……あんなデカい熊みたいな奴、人間か……!?」
盗賊たちがざわつき始める。
「ふふ、盗賊団ね! 本物の盗賊を見るのは初めてだわ! ねえアルト、あの人たち『身ぐるみ脱いで』って言ってるけど、本当に服を脱がされちゃうのかしら?」
「殿下、面白がらないでください。完全に囲まれてます」
俺はため息をつきながら短剣に手をかけた。
ギルドの事務員とはいえ、元Dランク冒険者だ。十数人の盗賊相手なら、マルコとルイスがまともに戦ってくれれば一瞬で片付くはず——。
「よし! マルコ、ルイス! サクッと追い払って……」
「任せろアルト! 俺の『野生の威圧』で見せしめにしてやる!」
マルコが前へ躍り出た。
彼はグッと足を踏み込むと、胸筋を力強く隆起させ、腹の底から咆哮を上げた。
「グオォォォォォォオン!!!!」
大気を揺るがす、本物の猛獣そのものの地鳴りのような咆哮。
『ひえぇぇぇぇ!? やっぱりクマだぁぁぁ!』
『喋るクマじゃねえ! 本物の怪物だ! 食われるぞ!!』
盗賊たちが腰を抜かしてガタガタと震え出す。
だが、マルコは味を占めたのか、調子に乗って四つん這いになり、ドシンドシンと唸りながら盗賊たちへ近づいていった。
「おいマルコ! なんで四つん這いになってんだよ! 余計に人喰いグマに見えるだろ!」
「違う! これが俺の威嚇スタイルだ! グオォォン!」
「人間に見せるスタイルじゃねえよ!!」
俺のツッコミが響き渡る中、今度はルイスが前に出た。
「ふっ……マルコ、野生の威圧だけでは甘い。知性ある魔術の恐怖を教えてやろう……『ファイヤー・ストーム』!」
ルイスが杖を華麗に振るう。
放たれたのは、本来なら盗賊たちの足元を包むはずの小さな竜巻状の炎……だったのだが。
ズガガガガァン!!
「ぎゃあああ!? 俺たちの隠れ家(プレハブ小屋)がぁぁぁ!?」
「ルイスお前ぇぇぇ!! 街道の反対側にある誰もいない小屋に命中してんじゃねえか!!」
「な、なに……!? またしても屈折率が……!」
「屈折率のレベルじゃねえだろ! 真横に90度曲がって飛んで行ったぞ! どういう軌道描いてんだお前の魔法は!!」
遥か彼方で激しく炎上する盗賊の隠れ家。
あまりの制御不能な破壊力に、盗賊たちは白目を剥いていた。
『な、なんだあの眼鏡……!? 狙ってもいない場所に巨大爆発を起こしやがった……!』
『意図が読めねえ……! あいつ、どこを攻撃してくるか分からねえぞ……!』
『狂気だ……あのパーティー、完全に狂ってる……!』
盗賊たちの恐怖度が跳ね上がっていく。
そんな中、さらに追い打ちをかけるように——。
「……首領」
「ひゃあぁぁぁ!?」
いつの間にか首領の背後に「消えていた」ミミが、首領の首筋に冷たいナイフの背を当てていた。
「……動くと、財布と命をいただく」
「い、いつの間に後ろに……!? 気配がまったく無かったぞ……!?」
「……これ、返してほしかったら、全財産置いて逃げて」
ミミの手には、いつすり取ったのか、首領の腰にぶら下がっていた革の巾着袋(全財産)が握られていた。
『ヒィィィ!? クマ(化け物)、暴発殺戮魔術師、見えない暗殺者……!』
『ダメだ! 勝てるわけねぇぇぇ! 逃げろーーーっ!』
首領が悲鳴を上げ、全財産を置き去りにして脱兎のごとく逃げ出した。
部下たちも「助けてくれー!」と泣き叫びながら、蜘蛛の子を散らすように山の中へ消えていく。
戦闘時間、わずか三十秒。
剣の一筋すら交えることなく、盗賊団は完全に壊滅した。
「……はぁ」
静まり返った街道で、俺は力なく短剣を鞘に納めた。
「すごーい! 一瞬でやっつけちゃったわね! やっぱり私のパーティーは強いわ!」
パチパチと手を叩いて喜ぶエレノア殿下。
「ふははは! 俺の威圧に恐れをなして逃げおったわ!」
「僕の計算し尽くされた(?)牽制魔法も効いたようだな」
「……今日の晩ごはん代、稼いだ」
誇らしげな顔をするポンコツ三人組。
「威圧じゃなくてただの怪獣だよマルコ! ルイスはお前、味方を巻き込まなかっただけ奇跡だからな! ミミ、その盗賊の金はギルドに届けて懸賞金に変えるから勝手に懐に入れるな!」
俺の決死のツッコミが秋空に虚しく響き渡る。
「……ねえアルト」
「なんですか殿下……」
「あなたって、本当にツッコミが上手ね。あなたの一言で、なんだか全員の常識外れな行動が『ちゃんとした戦闘』に見えてくるもの」
「褒められてる気が全くしません!!」
そう、俺は気づいてしまったのだ。
このパーティーにおいて、俺の役割はただの荷物持ちや交渉人ではない。
この暴走する狂気の大惨事を、言葉の力でなんとか「日常」に繋ぎ止める『精神的命綱(ツッコミ役)』なのだと。
「よし、邪魔者もいなくなったことだし、先を急ぎましょう! 港町サザンポートで美味しい海鮮料理が待っているわ!」
「はいはい……行きましょうね……」
俺は胃薬の袋をポケットから取り出し、水なしで一粒飲み込んだ。
襲い来る魔物や盗賊よりも、味方の存在そのものが一番の試練。
俺の胃とツッコミが爆発する前に、果たして秘宝のもとへ辿り着けるのだろうか——。
第5話をお読みいただきありがとうございました!
盗賊団すらドン引きするポンコツ(狂気)パーティーのチームワーク(?)により、見事に(?)街道の危機を脱したアルトたち。
次回からはついに中盤戦! 港町『サザンポート』での美食探訪と、不穏な魔物の噂が動き出します!
次回「第6話:港町での束の間の休息 〜王女様、B級グルメにご満悦〜」をお楽しみに!
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