↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
退屈した王女と行く秘宝探しの旅……って、私以外まともな奴がいないんですが!?  作者: 凪塩 未来


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/53

第3話:最初の街道と「熊騒動」 〜マルコ、村人に囲まれる〜

お読みいただきありがとうございます!


なんとか荷物だけは揃え、ついに王都を出発したアルト一行。しかし、最初の街道で早くも「あの男」のせいで大騒動が巻き起こります……。

「あー、青い空! 心地よい風! やっぱりお城の中に閉じこもっているより、外の世界の方が何倍も素敵ね!」


王都の大門をくぐり、どこまでも続く緑豊かな街道へ足を踏み入れた瞬間、エレノア殿下は両手を広げて晴れやかに叫んだ。


普段の豪華絢爛なドレスから一転、今日の殿下は動きやすい冒険者風の旅装(仕立ては最高級シルクだが)に身を包んでいる。可憐な王女様の旅立ち……絵面だけを見れば、まるで詩人が紡ぐ英雄譚の一幕のようだ。


……絵面だけを見れば、だが。


「……なぁ、ルイス。お前のその荷物、何だ?」

「ふっ……見たままさ。先ほど買い揃えた防寒具と水筒の隙間に、なんとか魔術書を二十冊ほど滑り込ませておいた」

「半分以上戻してんじゃねえか!!」


リュックサックがパンパンに膨らみ、歩くたびに『重い……腰が……』と断末魔のような声を漏らしているルイスにツッコミを入れつつ、俺は隣を見た。


「ミミ、歩きながら俺のポケットに手を突っ込むな」

「……ちぇ。アルト、警戒心が強くなった。つまらない」

「つまらなくない! スリをやめろ!」


早くも平常運転のポンコツたちである。

俺は重いリュックの肩紐をかけ直しながら、深々と溜め息をついた。


目的地である「嘆きの洞窟」へ向かう最初のステップとして、まずは東へ向かう街道を進み、今日の夕方までに「ローゼル村」という小さな農村に到着する予定だ。


「アルト、街道を行くならB級グルメよ! この先のローゼル村には、名物の『大イノシシの丸焼き』があるって聞いているわ! 今日の夕飯はそれにしましょう!」

「殿下、私たちは観光旅行に来ているわけではないのですが……まあ、村の宿で温かいご飯を食べられるのは賛成です」

「よし! 決まりね! さあマルコ、先頭に立って私たちを引っ張っていきなさい!」

「おう! 任せろ姫様! 俺の野生の勘で最短ルートを切り開いてやるぜ!」


豪快に笑いながら、巨漢マルコがドシンドシンと先頭を歩き出す。

背中には巨大な斧。全身毛皮。そして歩くたびに漂う圧倒的な野生臭。


……嫌な予感しかしない。


王都を出てから約四時間。

正午を過ぎたあたりで、街道の向こうに目的の「ローゼル村」ののどかな田園風景が見えてきた。


「ふぅ、順調ですね。このペースなら日没前には村に入れそうです」

「あら? アルト、何か村の方が騒がしくないかしら?」


エレノア殿下が目を細めて村の方角を指差す。

見ると、村の入り口付近から煙が上がり、カンカンカン!と激しく鐘が打ち鳴らされる音が聞こえてきた。


『害獣だぁぁぁ! 害獣が出たぞぉぉぉ!』

『警鐘を鳴らせ! 村の若い男は鍬と竹槍を持て!』

『子どもと老人は家に隠れろ! 巨大な立ちグマだ!!』


俺はそっと、隣を歩いていたはずの人物の姿を探した。

……いない。

先頭を歩いていたはずのマルコの姿が、いつの間にか消えている。


「……おい、マルコはどこ行った?」

「あ、マルコなら『ちょっとお腹が空いたから、村の畑のサツマイモでも分けてもらってくる』って言って、先に走っていったわよ?」

「それだぁぁぁぁぁ!!」


俺は頭を抱えて叫んだ。


毛皮を着た二メートル超の巨漢が、空腹のあまり唸り声を上げながら村の畑に猛ダッシュで突撃したのだ。村人から見れば完全に「冬眠損ねて里に下りてきた狂暴な巨大ヒグマ」そのものである!


「急ぎますよ! あいつ、村人に討伐される前に止めないと!」

「え〜、面白そうなのに」

「面白がってる場合ですか!!」


俺たちは慌てて走った。


ローゼル村の入り口。

そこはまさに緊迫した戦場(?)と化していた。


「グォォォオン! 違う! 俺はクマじゃない! サツマイモを分けてほしいだけだ!」

『喋った!? 人語を解する人喰いグマだぁぁぁ!』

『化け物め! 村のサツマイモ畑を荒らす気だな! 生かして返すな!』


二十人近い村人の男たちが、鍬や竹槍、中にはピッチフォークを構えてマルコを完全包囲していた。

マルコは必死に手を振って誤解を解こうとしているのだが、その巨体と強面、そして必死さゆえの怒号が余計に恐怖を煽り、泥沼の様相を呈している。


「みんな、落ち着け! 俺は人間……」

「来やがった! 囲め! 突撃ーーーっ!」

「うわぁぁぁ!? やめろ、突き刺すな!痛い!痛いから!」


「……ひどい惨状ね」

追いついたエレノア殿下が、優雅に扇子をあおぎながら感想を漏らす。


「ルイス! 何か魔法で威嚇して村人たちの動きを止めてくれ!」

「ふっ、任せたまえ! パニックを起こしている群衆を鎮めるには、頭上への威嚇射撃が最適……『ライトニング・ボルト』!」


ルイスが杖を掲げ、雷撃魔法を放つ。

直後、バチバチッと激しい放電音が響き——。


ドガァァァン!!


「ぎゃあぁぁぁ!? 村の倉庫がぁぁぁ!?」

「ルイスお前ぇぇぇ!! なんで村の穀物倉庫に落雷させてんだよ!!」

「な、なに……!? またしても屈折率が……!」

「屈折率のせいにするな! 暴発率三割の悪魔め!」


炎上し始める穀物倉庫。パニックに拍車がかかる村人たち。


『ひえぇぇぇ! クマが雷の魔法を使ったぞ! 魔導グマだ! 世界が滅びるぅぅぅ!』

「俺じゃない! 今の魔法は後ろの眼鏡のせいだ!」

「聞き苦しいぞマルコ! 僕のせいにするな!」


カオス。完全にカオスだ。


「ミミ! ミミは何か……って、いない!?」

「……ここ」


振り返ると、ミミは村人の隙を突いて、畑のサツマイモを両手に抱えて戻ってきていた。


「おい生でかじってんじゃねぇ! どさくさに紛れて泥棒するな!」

「……美味しい」

「美味しくない! 今すぐ戻してこい!」


だめだ。仲間が全員敵に回っている気がする。

このままでは村が全滅するか、俺たちが犯罪者として捕まるかの二択だ!


「……はぁぁぁぁぁっ!!」


俺は腹の底から声を張り上げ、村人とポンコツパーティーの真ん中に飛び込んだ。


「全員静かにしろぉぉぉぉぉ!!」


怒号。ギルド事務員として、毎日騒がしい酔っ払い冒険者たちを黙らせてきた「説教のシャウト」である。

その凄まじい気圧に、村人たちもマルコたちもピタリと動きを止めた。


「村人の皆さん! 落ち着いてください! この男はクマではありません! ただの『顔と体毛が凄まじくクマに似ているだけの頭の悪い人間』です!」

「頭が悪いのは余計だろアルト!?」

「黙ってろマルコ! それとルイス! 今すぐ水系魔法でその燃えてる倉庫を消火しろ! 外したらお前の魔術書を全部薪にするぞ!」

「ひ、ひぃっ!? わ、分かった!『ウォーター・スプラッシュ』!」


必死になったルイスの魔法は、奇跡的に当たり(70%)を引き当て、倉庫の火は一瞬で消し止められた。


俺はハァハァと息を吐きながら、ポケットから『王立ギルド発行の身分証明書』と『王家特製の金貨』を取り出し、村長らしき老人に差し出した。


「私は王都ギルドのアルトと申します! こちらは我がパーティーの『害獣みたいな見た目の前衛』です! 倉庫の不始末と大騒ぎのお詫びとして、修繕費とサツマイモ代をここにお支払いします! どうかご容赦を!!」


深々と頭を下げる俺。

村人たちは顔を見合わせ、差し出された金貨と俺の切実すぎる表情、そして後ろでシュンとしているマルコ(毛皮の巨漢)を交互に見た。


『……なんだ、人間だったのか……』

『確かに、服着てるしな……』

『ただの、もの凄く害獣っぽい人だったか……』


村人たちの緊張がすーっと解けていく。


「ふぅ……なんとか助かった……」


俺が胸を撫でおろしていると、後ろからパチパチと呑気な拍手が聞こえてきた。


「見事な統率力ね、アルト! やっぱりあなたを『常識人担当』にして大正解だったわ!」

「殿下……高見の見物を決め込んでないで、少しは手伝ってください……」

「あら、私は王女だもの。民の争いに直接介入するのは政治的に良くないわ?」

「都合のいい時だけ王族ぶらないでください!」


こうして、俺の決死の胃痛と金銭的解決により、なんとか「害獣討伐戦(対マルコ)」は終結したのだった。


その日の夜。

ローゼル村の宿屋にて。


「う〜ん! この大イノシシの丸焼き、香ばしくてとっても美味しいわ!」


エレノア殿下はご機嫌で肉を頬張っていた。

昼間の大騒動など嘘のように、村人たちも金貨の力(と俺の必死の謝罪)によって機嫌を直してくれ、今では「クマみたいな兄ちゃんも、力仕事を手伝ってくれたら案外いい奴だな!」とマルコと酒を酌み交わしている。


「美味いなアルト! やっぱり旅はこうでなくっちゃな!」

「誰のせいで死にかけたと思ってるんだお前は……」


俺は出された夕食にほとんど手をつけず、温かい白湯をすすりながら胃薬を飲んでいた。


「アルト君。本日の屈折率のデータだが……」

「ルイス、魔法の話は二度とするな。あとその魔術書、明日の朝までに半分に減らせ。さもなければ捨てていく」

「そんな!? 僕の頭脳を奪う気か!?」

「命を奪われるよりマシだ!」


ふと横を見ると、ミミが俺の皿からこっそりイノシシ肉を盗もうと手を伸ばしていた。

俺は無言でその手をペシッと叩く。


「……ケチ」

「自分の分を食べなさい!」


まだ旅は始まったばかり。王都を出て、最初の村に着いただけだ。

それなのに、俺の胃袋はすでに崩壊の兆しを見せている。


(嘆きの洞窟にたどり着く頃には、俺の胃は跡形もなく消滅しているかもしれない……)


夜空に浮かぶ満月を見上げながら、俺は深く深く、本日何百回目か分からない溜め息をつくのだった。

第3話をお読みいただきありがとうございました!


最初の村でさっそく大騒動を起こしたマルコ(と暴発ルイス)。アルトの命がけの謝罪と胃薬によってなんとか事なきを得ましたが、旅はまだまだ続きます!


次回「第4話:野宿の夜はトラブルの味 〜魔法の火起こし(暴発率30%)〜」をお楽しみに!


「クスッと笑えた!」「アルトの胃が心配」と思っていただけましたら、ぜひ【ブックマーク登録】や【評価】をお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。