第11話:最深部の秘宝と、狂った魔力の正体 〜え、原因ってそれなの……?〜
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数々のトラップ(と仲間たちの奇行)を乗り越え、ついに「嘆きの洞窟」の最深部へと到達したアルト一行。そこで彼らを待ち受けていた「狂った魔力の元凶」と「古代の秘宝」の正体とは……!?
紫色の怪しい光が揺らめく、広大な最深部の祭壇の間。
ヒシュー……ヒシュー……という不気味な風音の発生源は、部屋の中央に鎮座する巨大な古代の台座だった。
「ついに着いたわね……ここが『嘆きの洞窟』の心臓部!」
エレノア殿下が胸を高鳴らせ、腰の細剣に手をかける。
台座の周囲には強力な魔力の渦が巻き荒れ、空気がバリバリと静電気を帯びて震えていた。森の魔物たちをバグらせていた怪電波の源は、間違いなくここだ。
「みんな、気をつけろ! どんな古代の邪神や大魔導士の呪いが待ち受けているか——」
「ふむ……アルト君、大袈裟だな。あそこにある『元凶』をよく見てごらん」
ルイスが冷ややかに眼鏡の位置を直しながら、台座の上を指差した。
「え……?」
俺は目を凝らして、台座の中央に浮遊している『それ』を注視した。
そこにあったのは——。
ぽつん。
……一粒の、真っ赤な『蓄音機風のネジ巻きオルゴール』だった。
キーコ……キーコ……と、オルゴールのぜんまいが歪に逆回転しており、そこから狂った音律のメロディと、怪しい紫色の魔力波が『ヒシュー……ピキピキ……』と漏れ出している。
「……は?」
俺は思わず間抜けた声を漏らした。
「オ、オルゴール……? 邪神の封印とか、古代の魔導書とかじゃなくて……?」
「そうだね。あれは古代文明で作られた『自動演奏魔導器』だ」
ルイスが呆れたように解説を始める。
「おそらく数百年前、この洞窟に秘宝として安置されたのだろうが……経年劣化でぜんまいの歯車が狂い、内部の魔導回路がショートを起こして『狂った周波数のノイズ』を撒き散らしていただけみたいだね」
「……つまり何か?」
俺はこめかみをピクピクと震わせた。
「周りの魔物が回転したりカカシになったりしていたのは……単にこの古くなったオルゴールの『ノイズ音害』で頭痛を起こしてバグってただけってことか!?」
「そういうことになるね」
ガクッと肩を落とす俺。
世界を揺るがす大異変かと思いきや、ただの『壊れた家電製品の騒音被害』だったなんて……!
「まあ! なんて可愛らしい秘宝なのかしら!」
そんな俺の脱力感をよそに、エレノア殿下が嬉々として台座へ近づいていく。
「殿下、危ないですから近寄っちゃ——」
「大丈夫よ! 壊れているなら、直してあげればいいんでしょう?」
エレノア殿下はドレスの袖をまくると、あろうことか古代の貴重な魔導器に向かって、思い切り——
バシッ!!
「痛恨の物理開眼(叩いて直す)ー!?」
「昭和のテレビじゃないんだから!!」
俺とルイスの悲鳴が重なる。
だが、王女様の力強い一撃がヒットした瞬間——
ガコンッ!!
オルゴールの内部で『カチッ』と歯車が正しい位置にハマる音が響いた。
逆回転していたぜんまいが正回転を始め、紫色の濁った魔力波が瞬時に消え去る。
そして——
ポロン……ポロロン……♪
洞窟内に、透き通るような美しい古代の調べが響き渡った。
心を洗われるような、優しく温かなオルゴールの音色だ。
「あら……綺麗なおと」
ミミが耳をぴくぴくと動かし、うっとりと耳を澄ませる。
「おお……なんだか心が洗われるような気分だぜ……」
マルコが巨体を丸めて、ウルウルと目を輝かせた。
洞窟の奥から響いていた『ヒシュー……』という不気味な風音も完全に消え去り、静寂と心地よい音色だけが満ちていく。
「ふふっ、ほらね! 治ったわ!」
エレノア殿下が満足そうにフンスと胸を張った。
「叩いて直すなんて、王族のやることじゃありませんよ……」
俺は脱力してその場にへたり込んだ。
だが、ともあれ——。
これで魔物たちの奇行の原因だった『狂った魔力波』は完全に消滅した。
森の生態系も、これで元通りになるはずだ。
「さあアルト! 秘宝も手に入ったし、異変も解決したわ! 大成功ね!」
エレノア殿下が眩しい笑顔でオルゴールを抱え上げる。
「……はぁ。まあ、誰も死なずに解決したなら良しとしますか……」
俺は安堵の溜め息をつき、ポケットの中の胃薬を撫で下ろした。
王都を出発してから一週間。色々とありすぎたが、ついに最初の冒険が終わったのだ。
……そう、終わったはずだったのだ。
グラグラグラグラ……!!
「……ん?」
突然、洞窟全体が激しく揺れ始めた。
「な、なんだ!? 地震か!?」
マルコが踏ん張りながら叫ぶ。
台座の奥の壁面がガラガラと崩れ落ち、そこから『古代の文字が書かれた巨大な石板』が姿を現した。
「ル、ルイス! あれは何だ!?」
「ええっと……解読するよ! 『音導器の封印が解除されし時、世界に散らばりし残り六つの【古代秘法具】が目覚めん』……」
「……は?」
「『第一の秘宝を手にした者よ、極北の霊峰へ向かえ。さすれば新たなる災いと秘宝が汝を待つ』……だってさ」
静まり返る洞窟内。
エレノア殿下がパァッと顔を輝かせた。
「まあ素晴らしいわ!! あと六つも秘宝があるのね!? 次は極北の霊峰よ、アルト!!」
「ちょっと待ってください殿下ぁぁぁぁ!! 俺の胃が保ちませんんんん!!」
こうして、退屈しのぎに始まった王女様の秘宝探しの旅は、一筋縄ではいかない仲間たちと共に、さらなる波乱の次なる地へと続いていくのであった——。
(第11話・『嘆きの洞窟編』完結/次回より新章突入!)
第11話をお読みいただきありがとうございました!
これにて『嘆きの洞窟編』は無事に(?)完結となります!
王女様の叩いて直す物理攻撃により事件は解決したものの、まさかの「残り6つの秘宝」の存在が発覚! アルトの胃薬が尽きる日はまだまだ遠そうです。
次回からは新章「極北の霊峰編」がスタートします!
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