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5話 初めての協力

「……は?」


 先に口を開いたのはルナリアだった。クラロとノーチェは彼女に視線を向ける。


「……なんであんたなんかと……」


 ノーチェはそう呟いたルナリアを見る。その後視線を下に向けた。静かに自分の手を見つめる。そして、顔を上げた。


「……いいよ」

「……姉さん?」

「……姉上?」


 二人の視線がノーチェに集まる。彼女の瞳には、星の輝きが宿っていた。


「……協力、しよう? ……わたし、アルバを助けたい。……ルナリアは?」


 ノーチェは真っ直ぐルナリアを見つめる。彼女はふい、と視線を逸らした。


「……めんどくさい」

「……そうか」


 クラロは俯く。次の瞬間だった。


「……でも、カントがいないのはもっと嫌」

「……じゃあ……」

「ええ。仕方ないから協力してあげる」


 ルナリアは笑う。クラロは二人の顔を見て、そして頷いた。


「……恩に着る。早速、作戦会議だな」

「……あんたが仕切るのね」

「……都合が悪い、だろうか」

「ううん。わたしはクラロに任せるのがいいと思う。ルナリアは?」

「……まあ、考えるのはこいつが一番得意か」


 ルナリアは肩をすくめる。それを見たノーチェは「……素直じゃないなぁ」と笑った。



「……まず、敵の祝福の対策から当たるのがいいと思うんだが……」


 王宮の一室を借りて、三人は話し合う。


「……じゃあ、祝福に詳しい人、連れてきた方がいい?」

「……信用できるのか?」

「ちょっと……ううん、かなり変わった人だけど……悪い人ではないよ?」


 クラロは顎に手を当てる。


「誰なのか聞いても良いか?」

「うん。マニーア、って人。ディーアの王立祝福研究所の所長さんなんだ」

「……確か、祝福の体系化で有名な人だったな。……どういうつながりが?」

「アルバが出資してて。その縁で、祝福の制御訓練をしてくれたんだ。……今日も参加してたから、連絡は取れると思う」

「……声をかけてきてくれないか?」

「分かった」


 ノーチェはそう言って立ち上がる。彼女は一度振り返り、ぽつりと呟いた。


「……ほんとに、悪い人じゃないからね?」

「なんでそんなに念を押すのよ」


 ルナリアは軽く笑う。ノーチェはそのまま扉を開けて、部屋を出た。



 数分後、ドタドタと足音がした。扉の前に控えていた騎士が扉を開ける。次の瞬間だった。


「あなたが真実の祝福を持つ方ですね! 握手してください!」


 部屋に飛び込んできたのは、ボサボサの髪に分厚いメガネ、白衣を着た女性……に見えなくもない人だった。警戒したクラロは思わず祝福を発動する。


「はぁ! 今、もしかして! 小生に祝福を⁉︎」


 白衣は大興奮する。


「なるほど! 行動依存の祝福ですね! もしかして、今の状況であれば嘘が通らない? 小生は祝福が大っ嫌いです!」

「……嘘だな」

「なるほど! 結果は感覚と‼︎ 効果範囲は⁉︎」

「マニーア、ストップ!」


 ノーチェは白衣を掴む。すると彼女は動きを止め、「失礼いたしました」と姿勢を直した。


「……急に落ち着いた、わね……」


 ルナリアは困惑したように呟く。ノーチェは「ごめんね」と謝ってから、口を開いた。


「ルナリア、クラロ、紹介するね。国立研究所のマニーアだよ。マニーア、二人がルナリアとクラロ。……大切な、妹弟(きょうだい)なんだ」

「ディーア王国王立祝福研究所所長、マニーアと申します。クラロ様、ルナリア様、お噂は予々」

「……クラロ・ポラールだ」

「……ルナリア・ファーブラよ。……姉さん、本当に大丈夫なの?」


 ルナリアはノーチェを見る。彼女は苦笑しつつ「……知識は確かだから……。彼女はわたしの祝福を見て、『闇の雷じゃない』ってすぐに気がついたから……」と答えた。


「より正確に言えば、ノーチェ様の噂から仮説を立てておりました」

「……そうだったの?」

「はい。……闇の雷だけでなく、影が動いたという噂も聞いておりまして。これはもしや、と」

「……そういえば、姉上の祝福はよく分からないな。ずっと雷だったのに、闇の……腕か、あれは? ……とにかくそういうものを出していたから」

「えっと……」


 ノーチェはそう呟いて、手から闇色に輝く蝶を出す。クラロは「……え?」と目を丸くした。


「……なんだ、これは……」

「わたしの祝福、闇の不定形、なんだって。……割となんでもできる祝福だよ」

「"なんでも"の範囲とは?」

「ノーチェ様は闇が実体を持つか否か、実体を持つ場合の質量、闇の大きさ、攻撃する・吸い込むなどの闇の性質、闇の形状が制御できます。雷も電圧があるわけではなく、あくまで攻撃性の高い性質を持った闇ですね」

「じゃあ、なんで雷になってたの?」

「不定形の祝福には、本人が意識せずとも使える、取りやすい形態というのがございます。ノーチェ様の取りやすい形態が雷状の形だった、というだけでしょう」


 ルナリアはノーチェを見る。そして呟いた。


「……姉さんはずるいな。すごく特別な祝福じゃん。クラロも珍しい属性の祝福だし」


 彼女は唇を尖らせながら花びらを散らす。その言葉に、マニーアはキョトンとした表情を浮かべる。


「……珍しい属性? 祝福は持っているだけで縁起がいいのでは?」

「……そっか。ディーアだとそれが当たり前なんだ」

「……ポラールは祝福至上主義に近い。祝福が強い、珍しい属性である。それが価値となる。こちらで行われている祝福研究は、祝福遺伝学が主なことも端的に示しているだろう」


 マニーアは静かに黙り込む。重くなった空気を誤魔化すように、クラロは「……話が脱線したな。作戦会議に戻ろう」と呟いた。

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