10話 展示会
夜会から三日後。ノーチェ、ルナリア、クラロの三人は王城に集合した。ルナリアは黒いドレスを着たノーチェを見て口を開く。
「……姉さん、それ、昔着てたドレス?」
「……ううん。アルバに買ってもらったドレス。……強そうに見えるかなって」
「……赤のほうが強そうじゃない?」
そう言って笑うルナリアは、深紅のドレスに身を包んでいた。
「……二人とも……その。それで、動けるのか……?」
「これ? カントが踊りやすいように、って用意してくれたやつ」
「足さばきのいいドレスだから、大丈夫だと思う……」
「そういうあんたは……乗馬服?」
「動きやすいからな」
ルナリアはクラロを上から下までじっと見る。
「のわりには、凝ったベルトね」
「イルシオンのお気に入りなんだ。……この乗馬服には、いつもこれを合わせている」
「……ふうん。デート服?」
彼女はニマニマとした笑みを浮かべる。クラロは「否定はしない」と前置きしてから口を開いた。
「頼んでいた通り、私兵を連れてきているか?」
「ええ」
「うん。もちろん」
「……助かる。騎士とともに近くで待機させよう」
「……あたしたちだけで来いって言われてるけど、大丈夫かしら」
「……現場に連れていくわけではないからな。あくまで待機だ」
「出た屁理屈」
ルナリアはカラカラと笑う。ノーチェは二人を見て「……そろそろ行こう」と口を開いた。
「分かった。絶対助けるぞ」
「あたしたちから逃げられると思わないことね」
「……二人とも、頼もしいな」
「姉さん、しっかりしてよ? 最終兵器は姉さんなんだから」
「必ず姉上につなぐ。だから、頼む」
「うん」
ノーチェはしっかりと頷く。三人は目線を合わせ、そして笑った。
◇
ヘニオが指定した町外れの丘へと向かう。そこには石が積み上げられてステージのようになっていた。月のスポットライトを浴びたヘニオは、道化師のように立っていた。
夜風が吹く。 石の舞台の上で、ヘニオがゆっくりと両手を広げた。
「……やあ諸君。……なぜ美しくなっていないんだい?」
「私たちはそう柔ではない」
「おや、残念だ。自然に壊れている方が美しいのに」
「……自然に? どういうこと?」
ルナリアは怪訝な顔を浮かべる。ヘニオはクツクツと笑いながら、木に結びつけられたぼろぼろのカーテンに手をかける。
「さて、作品のお披露目と行こうか。……とは言ってもボクが壊したから君たちの美しさには劣るかもしれないけれど」
カーテンがめくられる。その瞬間、三人は息を呑んだ。柔らかく生命力あふれる黄緑、静かに知性をたたえる鋼色、楽しい幻想があふれる星彩の青が、みな一様にくすんだ金に染まっていた。アルバはへらりとした笑みを浮かべ、カントは無表情でぶつぶつと何かをつぶやき、イルシオンはぼんやりと視線を上に向け、何もない空を見つめていた。
「アルバ!」
「カント、なんとか言いなさいよ」
「……イルシオン?」
三姉弟が声をかけても、三人は何の反応も返さない。
「素晴らしいだろう?」
「……ふざけるな」
クラロの低い声が響く。
「あんたのそれ、芸術でもなんでもないでしょ」
「……アルバを、みんなを、返して!」
ルナリアはそう吐き捨て、ノーチェは静かに叫ぶ。ヘニオは「お気に召さなかったかい?」と笑った後、口を開いた。
「……これでも美しくならないか。……仕方がないか」
ヘニオは大袈裟に肩をすくめると、祝福を発動した。
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