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血契の双刃 〜その契約は、愛か呪いか〜  作者: クマハム
第1章:亡国の血と黄昏の誓い
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第13話:二人の聖女(?)とため息



 翌日。Cランクへ昇格したブラッドは、次の依頼を選定するために、再びリーネを伴って冒険者ギルドの扉を叩いた。


 昨日ほどの騒ぎにはならなかったものの、やはり二人が並んで歩く姿はギルド内でも一際目を引く。

 ブラッドは周囲の視線を一瞥もせず、真っ直ぐに掲示板へと向かい、貼られた羊皮紙を一枚一枚、冷徹に吟味し始めた。


 その様子をカウンターの奥から見守っていたミレイアは、ブラッドの隣で所在なさげに佇んでいるリーネへと、そっと視線を送る。


(……やっぱり、すごく綺麗な人。でも、あんな無愛想な死神みたいな人と一緒にいて、大丈夫なのかな?)


 持ち前の人良さと好奇心も手伝って、ミレイアは意を決してカウンターから顔を出し、リーネへと声をかけた。


「あの……お疲れ様です! リーネさん、でしたよね?」


「はい。受付のミレイアさん、でしょうか。こんにちは」


 リーネが物腰柔らかに微笑み、丁寧にお辞儀を返す。その清楚で神秘的な佇まいに、ミレイアは思わず(本物の聖女様みたい……!)と気圧されそうになったが、すぐに親しみやすい笑みを浮かべた。


「昨日は驚いちゃいました。ブラッドさん、登録したばかりなのに、いきなりCランクの魔物を倒してきちゃうなんて。……あの、あいつ……いえ、ブラッドさんと組んでいて、大変じゃないですか?」


 ミレイアが声を潜めて尋ねると、リーネは一瞬だけ碧眼を瞬かせ、それから困ったように眉をひそめた。


「そう、ですね。とてもお強い方なのですが……少し、無茶が過ぎるというか。昨日も、怪我を恐れずに敵の懐へ飛び込んでいってしまって。お茶を淹れても『悪くない』としか言ってくれませんし、本当に落ち着きのない方です」


「わかります! あいつ、いつも受付でも仏頂面で、こっちの心配なんてこれっぽっちも気に留めないんですよ!『早く依頼を出せ』の一点張りで、本当に可愛げがないっていうか……!」


 ブラッドの「無愛想さと無茶な行動」という共通の話題を見つけた瞬間、二人の距離は急速に縮まった。


 ミレイアは嬉しそうに身を乗り出し、リーネの手をそっと握る。


「リーネさん、あんな男の後ろにいるの、本当に気苦労が多いと思います。もしギルドで困ったことがあったり、あいつの愚痴が溜まったら、いつでも私に言ってくださいね! 同年代(?)の女の子同士、いくらでも付き合いますから!」


「ふふっ、ありがとうございます、ミレイアさん。心強いです。……でも、ブラッドさんは冷たいように見えて、ちゃんと私の呪文のタイミングを見て動いてくださる、とても芯の強い方なんですよ」


 愚痴を言いつつも、どこかブラッドを信頼し、庇うようなリーネの言葉に、ミレイアは「あ、ごちそうさまです」とニヤニヤとした笑みを浮かべた。


「決まったぞ。これにする」


 そこへ、数枚の羊皮紙を手に持ったブラッドが、相変わらずの無表情で戻ってきた。


 ミレイアとリーネは、瞬時にいつもの「受付嬢」と「同行者」の顔に戻り、何事もなかったかのようにブラッドを迎える。


「……何か話していたか?」


「な、何でもありませんよ! ほら、早く依頼の手続きをしますから、その紙を出してください!」


 フイッと顔を背けて業務に戻るミレイアと、その後ろでクスクスと楽しそうに口元を隠して微笑むリーネ。


 ブラッドは怪訝そうに眉をひそめたが、女性陣のネットワークが裏で結成されたことなど、知る由もない亡霊なのであった。






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