第十九話
内藤の無残な遺体を目撃した後、館を支配するタキオンの奔流はさらに激しさを増していた。美鶴の身体を襲う高熱はもはや限界点を超えようとしており、彼女を抱きかかえる私の腕には、沸騰した熱湯のような皮膚の温度が直接伝わってきた。
内藤の死の衝撃は、私たちの理性を確実に削り取っていた。あの奇妙な重力の捻れ、そして暴かれた彼女の真実。すべてが現実感を欠いたまま、洋館の緑色の壁だけが生き物のように不気味な脈動を続けている。美鶴を救うためには、まずこの異常な体温を下げるしかなかった。私は意識を失いかけている彼女を横抱きにし、重い足取りで脱衣所へと飛び込んだ。
「ソウ、熱い。身体の中を、目に見えない誰かがかき回しているみたいだ」
美鶴が喘ぐように漏らす言葉は、湿り気を帯びて私の耳元をかすめた。彼女の大きな瞳は焦点の定まらないまま虚空を泳ぎ、うなじの「赤龍の紋」は、まるで彼女の白い肉を内側から焼き切るかのような鮮烈な深紅を放っている。その光は、浮き出た血管のように細かく脈打ち、剥き出しの欲望そのもののように浴室の白いタイルを禍々しく照らし出していた。
私は震える手でシャワーの蛇口を回した。勢いよく噴き出した冷水がタイルを叩き、激しい飛沫となって舞い上がる。私は美鶴を抱えたまま、迷うことなくその冷水の滝の下へと身を投げ出した。
激しい飛沫が二人の身体を容赦なく打つ。一瞬、心臓が止まるかと思うほどの冷気が襲ったが、腕の中の美鶴は依然として火の塊のように熱いままだった。水に濡れた彼女の薄い黒いワンピースは瞬時にその機能を失って透け、白磁のような肌に生々しく吸い付いた。
濡れた生地が、彼女のしなやかで豊かな曲線をあられもなく強調していく。大きく開いた胸元からは、呼吸を乱すたびに波打つ柔らかな双丘が、青白い非常灯と赤龍の光に照らされて艶かしく浮かび上がっていた。冷水に晒されたことで、薄い布地の下にある乳房の輪郭はより鮮明になり、その頂にある乳首は小さく、しかし硬く突き立ち、透けた黒い布を内側から鋭く押し上げている。
激しい呼吸のたびに、その豊潤な膨らみは私の胸板に押し付けられ、形を変えながら熱を伝えてくる。谷間に溜まった冷たい水滴が、彼女の体温でたちまち温められ、白い肌の上を滑り落ちていく様は、正気を失わせるほどに官能的だった。
私は彼女を冷やすことに必死だったが、同時に底知れぬ恐怖が胃の底で渦巻いていた。太郎の遺体が握っていた「龍王」の駒に刻まれた赤と龍。そして美鶴の赤龍。この符合は、彼女がこの惨劇の起点であることを示しているのではないか。この少女がすべてを仕組んだ殺人鬼かもしれないという疑念が、掌から伝わる彼女の吸い付くような肉の弾力と共に私の意識を侵食していく。
愛おしさと情欲、そして逃れようのない恐怖。矛盾する感情が胸の中でせめぎ合う。密着した彼女の胸の感触が、濡れたシャツ越しに私の全身の神経を逆撫でする。柔らかな重みと、その中心にある硬い突起の刺激。私が快感を感じ、鼓動を早めるたびに、美鶴のうなじの紋章はより一層輝きを増していく。快感がタキオンを増幅させているのだ。
「見えた。ソウ、あいつの目が。時空の隙間から、誰かがこちらを嘲笑っている」
彼女の意識が、タキオンの波動を通じて犯人の観測野と同期し始めているのだ。彼女は震える唇を私の鎖骨に押し当てた。冷たい水の下で、私たちの体温だけが異常な熱を帯びて混じり合い、境界線が溶けていく。密着した豊かな乳房が私の身体を圧迫し、その圧倒的な存在感が、恐怖さえも快楽に変えていくようだった。
うなじの赤龍の痣は、冷水を浴びせてもなお、周囲の空気を歪めるほどの熱を発し続けていた。光り輝く紋様が、汗と水に濡れた彼女の項で妖しく蠢く様は、見る者の魂を奪うほどに官能的で、かつ悍ましかった。この熱、この感触。もしこれが自分を焼き尽くす毒だとしても、私はこの腕をほどくことができない。
「犯人は、まだ終わらせるつもりはない。盤上の駒をすべて、血で染めるまで止まらないわ」
硬く尖った乳首に弾力のある白い胸元を私に押し付けながら妖しい眼差しを私に向けた美鶴はそう吐き捨てると、私の腕の中で深い眠りに落ちた。
彼女の頬はまだ朱を指したように紅潮していたが、赤龍の光は微かに落ち着きを取り戻していた。私は彼女の濡れた身体をバスタオルで包み込み、その重みを腕の中に感じながら広間へと戻る。
美鶴の体温は徐々に安定の兆しを見せていたが、私の心には消えない疑念が刻印のように残されていた。彼女が何を見たのか。そして、彼女自身が何者なのか。浴室の鏡には、自らの欲望と恐怖に翻弄され、不信感の狭間で喘ぐ私の惨めな姿が映し出されていた。




