腐女子と過去の迷宮
モエたち4人は魔王城で四天王のうち2人を倒し、10階層まで上がってきました。
リウとケインのガチ恋尊死キス(2回)を受けて無力化したビジネス百合カップル(レナ、ルカ)を魔法で拘束し、私達はどんどん上を目指した。
そして魔王城の第10階層。
そこで待ち受けていたのは、妖艶な美女の姿となった魔王補佐官アージェントのどこまでも悪辣で美しい「鏡の罠」だった。
「アージェント!!ジェイドを返して!!」
私の声に反応し、アージェントはあの四天王として紹介された、美しい姿で妖艶に笑う。
「フフ……よくぞ我が主の百合試練を乗り越えました。
ですが、ここから先は『私の庭』。
鏡が映し出す過去と真実に彩られた、美しい絶望の迷宮です。」
アージェントが妖しく微笑み、その細い指先を弾いた瞬間に視界が歪んだ。
「あなたたちは無事にこの迷宮を脱出できるのか、それとも美しい過去にとらわれてしまうのか……私に魅せてください。」
鏡の破片のような光が4人を襲い、気がついた時には、ユリウスと私の二人は、リウたちと完全に分断され、見たこともない薄暗い回廊へと放り出されていた。
「ここは……? リウ! ケイン!」
ユリウスが叫ぶが、返事はない。
ただ、周囲の壁は純白の大理石ではなく、冷たく、泥と血の匂いが染みついた古い石壁——
そこはジェイドの故郷アゼルクレストと、彼が落とされたコロシアムの記憶で編まれた、『過去の迷宮』だった。
「ユリウス皇子、見てあれ……!」
モエが指差した先には、通路の至る所に、淡く輝く不思議な水晶の玉が浮かんでいた。
ユリウスが引き寄せられるようにその玉を覗き込むと、そこには「ジェイドの記憶」が美しい映像となって保存されていた。
――第一の水晶
まだ幼いユリウスが、ひどい熱を出して寝込んでいる。
その枕元で、徹夜明けの疲労を滲ませながらも、一睡もせずに額のタオルを替え、看病していたのは少年のジェイドだった。
前に見たコロシアムの時とほぼ姿が変わらないので、ジェイドは14歳くらいでユリウスは10歳くらい……。
ユリウスのまだ幼いながらも美しい顔は火照り、玉の汗で濡れている。
『……死なせはしない。俺が、お前を必ず王にする。』
そう言うとジェイドはユリウスの手をぎゅっと強く握った。
「ジェイド……。俺が熱を出すといつも看病してくれた。
その間ずっと手を握っていてくれたのか……。知らなかった……。」
ユリウスは映像が止まると次の水晶玉まで走っていく。
わたしもそれに従う。
――第2の水晶
軍の遠征中、不運にも本隊とはぐれてしまった二人。
ユリウスは14,15歳の少年に、ジェイドはすらりと背の高い青年になっている。
二人の眼前に大きな角を持ったタタンカ(大きな水牛のような魔物)の群れがものすごい勢いで迫ってくる。
絶体絶命の状況の中、二人は言葉を交わすことなく完璧な呼吸で互いの背中を預け合い、泥にまみれて魔獣を討ち果たした。
「ユリウス様、流石です。
これなら勇者に選ばれる日も近いかと。」
「ふん、おまえもよく俺の攻撃に合わせられたな。」
そう言うと夕暮れの中、二人は不器用に笑い合ったのだ。
(推しカップルの笑顔……尊すぎる!!あの笑顔を絶対に取り戻したい!!)
――第三の水晶
王城の奥深く、誰も来ない寂れた庭の木陰。
17,18歳のユリウスは椅子にもたれて眠っているようだ。
その横にたたずむジェイドはしばらくユリウスを見つめ、そして屈みこんでユリウスの唇に自らの唇を重ねた。
ユリウスは目を開けたが、拒むことなくジェイドの唇を受け入れた。
差し込む木漏れ日の中、そっと触れ合うように重ねられた、二人の初めての切ない唇――。
しばらく唇を重ねるとユリウスはジェイドを押しのけ、足早に庭を後にした。
静かな寂れた庭にジェイドは取り残され、いつまでもユリウスが去って行った方を眺めていた。
「ジェイド……お前は、こんなことまでその胸に抱えていたのか……」
ユリウスは痛みをこらえるかのように顔を歪めた。
――不器用な皇子の告白
水晶に導かれるように迷宮の最深部へと辿り着いた時、二人の前に一人の少年が立ちはだかった。
ボロボロの衣服を纏い、全身に生々しい傷を負った、コロシアム時代の14歳のジェイド。
その瞳は曇り、深い憎悪と絶望だけを宿している。
「……帝国の、王族……! ガイウスか……!
貴様らは我が国を滅ぼした仇だ!殺してやる……!」
過去の記憶に囚われた少年ジェイドは、目の前のユリウスを「復讐すべき仇」と認識し、容赦なく殺意を剥き出しにして襲いかかってきた。
「ジェイド、目を覚ませ! 馬鹿者が!!」
鋭い剣撃がユリウスを襲う。
ユリウスは剣を抜くが、決して斬りつけようとはしない。
少年ジェイドの荒削りながらも必死な攻撃をすべて捌き、いなしていく。
「くっ、なんて重い一撃だ……。これが、お前の絶望なのか!」
鋭い斬撃がユリウスの頬をかすめ、血が流れる。
だが、ユリウスは一歩も引かなかった。
一瞬の隙を突き、ユリウスは剣を放り出すと、猛り狂う14歳のジェイドの体を正面から力強く抱きしめた。
「がはっ……!? 離せ、離せ!
貴様らアドニス王族など俺が殺してやる――」
「黙れ、ジェイド。」
ジェイドの耳元で、ユリウスの低く、しかし震える声が響く。
少年ジェイドがぴたりと動きを止めた。
「……俺は、素直じゃないから、お前にいつも辛く当たってきた。
……こうしてお前が俺の前から居なくなって、初めて気づいたんだ……。」
ユリウスは、ジェイドの背中に回した手に、ぎゅっと力を込める。
決して「好きだ」とも「愛している」とも言わない。
それが、プライドが高く不器用な、ユリウスという人間の精一杯の告白だった。
「お前が、必要なんだ。……お前のことが、大切なんだと……だから、もう俺を置いて行くな。」
「……ユリウス……様……?」
少年ジェイドの濁った瞳から、一滴の涙がこぼれ落ちる。
その瞬間、パリン、とガラスが割れるような美しい音が響き、過去の迷宮は跡形もなく崩壊していった。
視界が元の純白の塔へと戻る。
光が収まったその部屋の奥、まばゆい輝きを放つ『伝説の聖剣』の前に一人の男が立ち尽くしていた。
黒き鎧を身にまとい、禍々しい魔力を放つ――本物のジェイドだった。
彼はアージェントの術から解き放たれながらも、聖剣の守護者としてユリウスたちを静かに見つめている。
「……ユリウス皇子。」
その声に宿る感情は、憎悪か、それとも――。
(ユリウス王子……!やっと告白したわね!
「好き」って言わないのが逆に彼らしくて萌える!!
そしてついに現れた本物のジェイド……。
黒い鎧を纏って聖剣を守ってるって、どんな闇堕ち仕込んでるのよ!!タクト(兄)!!)
新しい話も考えています!
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