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故郷アゼルクレスト

約十年前のジェイドの過去のお話です。

十年前、俺は「王子」だった。

中央山脈の険しい断崖に、龍の爪のごとく突き立てられた城塞国家、アゼルクレスト。

一族はかつて帝国統一の影の立役者と呼ばれた武人の末裔であり、天然の要塞に守られたアゼルクレストは、数百年の間、一度として敵の侵入を許したことはなかった。

「ジェイド、王族とは民を守るための剣だ。強くなれ。誰よりも、何よりもだ。」

父王の言葉通り、俺は幼少期から木剣を握り、泥にまみれて育った。

父は猛者揃いのアゼルクレストでも一二を争う武人で、厳しさの中に優しさを持った人で俺の憧れだった。

母はアゼルクレスト人ではなく、父と結婚する前は名の知られた冒険者だったらしい。

父が武者修行で大陸中を旅している時に二人は出会い、結婚したそうだ。

父が遠征しているときは母が代理で国を統治し、夫婦二人で国を統治していた。

修行は辛かったが、強く優しい父母に育てられ、幸せな子供時代を過ごした。


修行に明け暮れ、十三歳になったある日、父の元に隣国との国境の高原に竜が出たので退治してほしいという要請が届いた。

魔物の中でも竜はかなり強い。

だから父は高レベルの武人を招集し、部隊を編成した。

俺もその戦いに参加することを志願した。

当初、父と母は俺が参加するのを渋っていたが、俺が修行のために同行したいと懇願するとようやく首を縦に振った。


一週間かけようやく高原地帯に着くと予想外の光景が飛び込んできた。

「これはどういうことだ!!竜は群れを作らないはずなのに……!!」

翼を広げると優に10メートルはある風竜が10頭以上。

大型の竜はとても強く、1頭倒すのに熟練の一部隊が必要なほどだ。

俺たちの部隊は猛者ぞろいとはいえ、三十人ほどしかいなかったので皆、死に物狂いで戦った……。

2人か死に、怪我人が多数出たが、何とか竜の群れを倒す事が出来た。

俺も負傷し、立っているのがやっとだった。

怪我人の救護をしている時、伝令が馬に乗り、父の前に駆け付けた。

「報告! アゼルクレスト王都カヤ城、敵軍の奇襲を受けております! 城が、あの不落の城が燃えております!」

「……馬鹿な。我が国の守りが破られるはずがない!」

父王の怒声と共に、俺たちは死に物狂いで高原地帯を駆け抜けた。

しかし、高原地帯から城へは通常一週間の道のりだ。

俺たちは短い仮眠をとりながら走り続け、馬が疲労で動けなくなると近くの町で馬を調達し、飲まず食わずがむしゃらに馬を走らせた。

その甲斐あって三日目の昼頃にはカヤ城に着いた。

(カヤ城なら襲撃を受けても持ちこたえられる……。母上、皆、無事でいてくれ!!)

しかし、視界に飛び込んできたのは、黒煙を上げる故郷の姿だった。


城門の前まで辿り着いた時、俺たちは絶望を知った。

城壁の上で指揮を執っていたのは、我が国の兵ではない。

禍々しい魔力を放つ、見たこともない異形の軍勢——魔物だ。

この魔物たちはほとんどが初めて見る種で、魔物は鋭い爪を持ち、岩壁にくっついて自由自在に移動している。

さらに翼を持った火竜が火を噴き町を焼いていた。

魔物は逃げ惑う人々を無慈悲に攻撃している。

カヤ城は中央山脈の岩壁に建っており、アゼルクレスト国の反対側の山は急峻で人間にはなかなか超えられるものではなかった。

正面からの攻撃には強いが、後方、山頂からの攻撃にはとても脆弱だったのだ。

突如、俺たちの後ろから鬨の声が上がる。

帝国の旗を掲げた軍が突如として現れ、俺たちを挟み撃ちにする。

どうやら森や建物に潜んで待ち伏せていたらしい……。

「アゼルクレスト王よ、カヤ城はすでに陥落した。お前の妻は、ほれ、ここに居るぞ……。」

帝国の軍勢の中央、若き日のガイウスが冷酷な笑みを浮かべて立っていた。

その手には血の滴る母の首が握られている……。

「エリーゼ!!エリーゼー!!

皇帝、貴様!!許さんぞ!!われらが何をしたというのだ!!」

父は体を震わせ、涙を流しながら皇帝に向かって叫んだ。

「何を言う、アドニス帝国の一部になることを拒んだのはそちらではないか。

ならば力で奪うだけだ。」

ハハハ!と冷笑するガイウス。

「……アージェント。貴様の鏡が映した通りだ。この国の要塞など、我らの前では紙細工に等しい。」

前皇帝が死去し、皇帝になったガイウスは兵力を増強し、弱体化したアドニス帝国の強化を始めていた。

千年前の初代皇帝が収めたと同じ、それ以上の領土を手中にし、誰もがひれ伏す神王(皇帝より上位の位、現人神)になるという歪んだ野望のために、奴は魔王の補佐官アージェントと手を組み、禁忌の力を手に入れたのだ。

「ぐっ……。ジェイド、逃げろ! 生き延びて、この屈辱を刻め!」

父王は俺を庇い、数多の矢と魔法に貫かれた。誇り高き王の体が崩れ落ちる瞬間、俺の視界は真っ赤に染まった。

不落の城、愛する民、父と母の命……。すべてがガイウスという男の野心によって、灰に消えた。


その後、命からがら生き延び、奴隷にまで身を落とした俺が、コロシアムの砂にまみれて何を思っていたか。

ガイウスへの復讐。ただそれだけが俺を繋ぎ止めていた。

そんな俺の前に現れたのが、あの男の弟……ユリウスだった。

十歳の幼き王子が差し出した小さな手。その瞳に宿る孤独が、俺の内に眠っていた野心に火をつけた。

(……この子供は、ガイウスを玉座から引きずり下ろすための最高の『踏み台』になる。)

「お前のその命、この俺が買い取ってやる。……俺と共に来い。」

その言葉に応えた瞬間、俺は誓ったのだ。

いつか、この手にすべてを奪い返す。

ガイウスを屠り、アドニス帝国も、その未来も、すべてを俺が奪い尽くしてやる。

たとえ、目の前のこの孤独な王子を利用し、その愛さえも裏切ることになったとしても……。

これはジェイドの悲しい過去の話ですが、そろそろイチャイチャも書きたいですね!

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