第百七十九話 父と兄ィズ、過保護連携!? メイド隊、包囲網を張れ!!
アルヴェリア王立士官学園・整備班区画。
今日も今日とて――
静寂とは無縁であった。
「父上!! この配線、妹が触ったら危険じゃないか!?」
「兄貴待て! まず“妹がここに来る可能性”を計算しろ!!」
「……なるほど。確率は低いが、ゼロではないな」
――三人、真剣。
――議題、妹基準。
(始まってしまった……)
(最悪の方向で、噛み合ってしまった……)
整備班の端で、
メイド隊が静かに集結していた。
「状況報告」
カティア(低音)。
「兄ィズ二名に加え、
溺愛指数MAXの武闘派父親が参戦」
リリア。
「過保護行動が“理論武装”され始めてます」
アネット。
「しかも、伯爵がいることで
兄様方のテンションが“合法”扱いに……」
アシュリー。
「……あの……
なんだか……
“家族会議”みたいになってます……」
ミーナ、小声。
全員、同時に頷いた。
「――まずいわね」
カティア。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
一方その頃。
「父上、妹が歩くならこの動線だ」
「ふむ。では床の段差はすべて撤去だな」
「よし、俺が測る!!」
「待て。
妹が転んだらどうする」
「「……!!」」
三人、同時に硬直。
「転倒リスク……!」
「保護策が必要だ!!」
「柔らかい素材を敷き詰めるか……?」
――完全に止まらない。
(……このままでは、
学園が“妹専用要塞”になる……)
メイド隊、危機感MAX。
「包囲網を敷きます」
カティア、即断。
「役割分担。
アシュリー、兄ィズの注意逸らし」
「了解♪ 任せて〜」
「リリア、書類で父上を拘束」
「承知しました。規定集を持ってきます」
「アネット、作業工程の再確認を強制」
「了解。“正規手順”で縛ります」
「ミーナは――」
全員の視線が集まる。
「……え、えっと……
お茶……入れます……?」
「お願いします」
全員一致。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「父上! この作業順ですが!」
アシュリーが明るく割り込む。
「む?」
「こちら、学園規定第七章第三項です!」
リリア、分厚い冊子を提示。
「……ほう」
アレクシス伯爵、目を通す。
「父上、ここ……
順番を変えるとやり直しになるそうです……」
アネット、淡々。
「……なるほど。
規律は重んじねばならんな」
――武人、納得。
「兄様方」
カティア、低音。
「今ここで騒げば、
“妹に誇れる兄”から遠ざかりますが?」
「「……っ!!」」
兄ィズ、沈黙。
(効いた)
(今のは効いた)
そこへ――
「お茶、どうぞ……」
ミーナ、そっと差し出す。
父、兄ィズ、同時に一息。
「……ふむ」
アレクシス、湯気越しに呟く。
「メイド隊、よく統率されているな」
「恐れ入ります」
カティア、一礼。
「――だが」
父、にこり。
「アリアの話題は、今後も続くぞ」
「「ですよね!!」」
兄ィズ即答。
メイド隊、頭を抱える。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
その夜。
整備班区画の片隅で。
「……帰国、できるかな……」
レオン、ぽつり。
「できるさ」
ノア、即答。
「父上もいる。
メイド隊もいる。
――全力で抑えられてる」
「それ、味方なのか……?」
その会話を聞きながら。
アレクシス伯爵は、静かに思う。
(……この学園、
娘が来たら一日で崩壊するな)
そして決意した。
(――絶対に、
アリアは連れて来ない)
それが、
最も現実的な防衛策であると。




