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不運な転生令嬢は、恩返ししたいのに家族が溺愛しすぎて周囲がざわつく!?  作者: やまちゃぁん


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第百七十四話 そして“鏡床”は封鎖される!?

メイド隊、ついに本気の対策会議!!


――翌朝、学園メイド控え室。

いつもの穏やかな空気の代わりに、今日は少々張りつめた気配が満ちている。


「本日、鏡床問題に関する対策会議を始めます」


カティアが机を軽く叩くと、メイド隊の顔が一斉に上を向いた。並んでいるのはアシュリー、アネット、リリア、そしてミーナ。全員、昨晩の出来事を思い返しながら少し青ざめている。


アネットは分厚い報告ファイルを開き、淡々と報告を読み上げる。

「昨日の〈鏡床〉による被害は、延べ十三名。主な原因は“連鎖的な転倒”です」


リリアが小さく息をもらす。

「ミーナさんが最初に滑ると、周りの子が集まって――つられて転ぶ、と」


ミーナは目を伏せて小さく「ごめんなさい」と呟く。本人は反省しているのだが、どこか申し訳なさと可愛さが混じった顔つきで、メイド隊の眉間にはしわが寄る。


カティアが黒板に大きく書き出す。


――〈鏡床〉の現状整理――


ワックスがけの甲斐あって床が鏡のように輝く。


輝きが強いと、自分の姿を確認したくなる者が続出する。


ミーナが滑る(確率高)。


ノア&レオンが95%で巻き込まれる。


学園生徒が巻き添えになる率:高。


アシュリーが腕を組み顎を引く。

「原因はわかった。問題は“どうやって止めるか”だ」


アネットがファイルをめくる。

「現行案――(A)ワックス塗布中止、(B)カーペット敷設、(C)滑り止め設置、(D)区域封鎖。利点欠点は資料にまとめました」


リリアが手を上げ、ぽつりと言う。

「ミーナが“練習”を望んでいる件もあるんですよね。単純に禁止するだけでは、別の騒動になるかもです」


ミーナは小さく首を振る。

「ミーナ、練習が好きなのではなくて……うっかり滑って、みんなを笑わせてしまうことが多くて……それが……」


カティアは静かに頷き、最後に一言。

「では最終案――理事会とも協議済みの方針を発表します。〈鏡床区域、当分のあいだ封鎖〉です」


一瞬、控え室が静まる。アネットが「封鎖……?」と確認すると、カティアはうなずいた。

「学園運営として、被害拡大を防ぐのが優先です。封鎖期間中に恒久対策を検討します」


リリアは安堵の息を漏らすが、ミーナの顔がみるみる曇った。

「ミーナの練習場所を……」


ちょうどそのとき、控え室の扉が元気よく開いた。外から駆け込んできたのは――学園の明るい顔、ミーナ自身だった。どうやら朝の点検を受けた後にまた戻ってきたらしい。


「みんな〜! 集まってるのですか!? ミーナ、昨日の回転が褒められたのです! ノアお兄様が“完璧なスピンだった”って!」


咄嗟にミーナは状況を把握できずに目を丸くする。封鎖通達(カティアの書類)を手にしたカティアの顔が、そのまま固まる。


「ミーナ、今ここで聞いてほしい。〈鏡床〉は当分封鎖します」


ミーナの目がしょんぼりと潤む。

「えぇぇぇぇ!? ミーナの練習場が封鎖……?」


リリアがそっとミーナに近づき、優しく言う。

「でも、ミーナ。今は安全が第一よ。練習は別の場所でやれるかもしれないわ」


アネットは既に別案を提示する。

「隠し通路を使う案、移設案、あるいは“滑らない・練習可能なエリア”の確保。ただしどれも監督が必要です」


アシュリーは即断だった。

「封鎖はよいが、ミーナが“隠れて練習”を始めたら意味がない。監視を強化する」


カティアが最後に締める。

「――しばらくの間、鏡床は封鎖。だが私たちの仕事は、封鎖した後の“抜け道”を防ぐこと。ミーナ、あなたも協力を頼むわ」


ミーナはしばらく考え、深く息を吸ってからうなずく。

「はい……ミーナ、協力します。ミーナ、皆の安全が大事ですから……!」


控え室には、小さな決意の空気が流れる。だが、いつものことながら――それが長続きするかどうかは別問題である。


――その日の午後、封鎖の張り紙が大ホールの入り口に貼られた。学園生は「見られないのが残念」という意見と「やっと安心」との二派に分かれたが、噂好きの生徒たちが好奇心を抑えきれず、周囲をうろうろするのはいつものこと。


カティアは控え室で資料を片付けながら、低めの声で言った。

「封鎖は始まりに過ぎない。次は“代替練習場”の設計と監視計画よ。メンバー、準備はいい?」


アシュリーがぎゅっと拳を握る。

「いつでも。兄ィズの暴走を二度と許さない」


アネットは冷静に予定表をめくりながら皮肉めいて言う。

「でももしノアたちが“封鎖を逆手にとって何か”したら、それはそれで面白い資料ですよね」


リリアは小さく笑って、ミーナにウインクを送る。

「ミーナ、次は転ばないでね。みんなで守るからね」


ミーナは硬くうなずく。だが、その瞳の端には、どこか好奇心と楽しさがまだ残っている。――それが彼女の良さであり、そして我々の悩みの種でもある。


――こうして〈鏡床封鎖作戦〉は始まった。だが学園という場所は、柔らかくも手ごわい。封鎖の裏で生まれる“抜け道”と“駆け引き”は、きっと間もなく新たな騒動を生むだろう。メイド隊は本気で対策を練った。さて次はどう出るのか――。


――つづく。

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