第百七十三話 ピカピカ大成功!? ~しかし兄ィズ、今度は“床に映る自分”に感動して暴走!~
――翌日。
整備班の過酷ワーク《皿洗い十万枚の刑》と《ワックスがけ地獄》を終えた、アルヴェリア王立士官学園・大ホール。
その床は――
つるっ……ぴかぁぁぁぁぁん……☆
もはや“床”というより“巨大な鏡”だった。
「見ろレオン……俺たちの努力が……」
「うむ……これは……すごいな……」
二人はしみじみと床を見下ろす。
その足元には、
「わたしも……滑りまくった……かいが……ありました……!」
ミーナが胸を張っている。
(誇り半分、泣き笑い半分)
だが――三人はすぐに気づくことになる。
「…………あれ?」
床に映った、自分たちの顔。
めちゃくちゃ鮮明。
毛先の跳ね具合まで見える。
疲れたクマまで見える。
ミーナの三つ編みが、二倍に見える。
そして三人の脳が――
完全に“スイッチオン”した。
「レオン!! 俺、床に二人いる!!」
「兄貴っ!! 鏡だよこれ!! 鏡床!!」
「ミーナ……ミーナがいっぱいいますの!!?」
そこから先は、もう止まらない。
三人、謎のテンションMAX。
床の上でポーズ取る、
少し離れてウィンクしてみる、
しゃがんで笑いかけてみる、
床をのぞき込み過ぎて頭ぶつける。
ホールには奇声と笑い声が響き渡る。
そして――
その扉が静かに、ほんの少しだけ開く。
「………………」
カティア(低温)登場。
背後にはアシュリー、リリア、アネット。
(すでに“諦めた者の目”をしている)
そのまま数秒、三人の様子を無言で観察。
ノア「(……やべ)」
レオン「(……あの静かなの、怖いやつだ)」
ミーナ「(……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい)」
カティア、すぅ……と姿勢を正し――
「……楽しそうですね?」
その瞬間、三人の背筋がカチコチに。
アシュリー(腕組み)
「また転んだら、ワックス三倍よ?」
リリア(無表情)
「ミーナさん、今日だけで五回目ですからね?」
アネット(淡々)
「記録、取っておきますね」
ミーナ「ひぃっ!? い、今のは偶然でして……!」
だが、三人はまだ興奮が抜けきらない。
ノア「ま、まだ……あと一回……!」
レオン「この角度……試したくてだな……」
ミーナ「ミーナも……もう一枚……!」
そして――
つるっ。
「「「うわぁぁぁぁぁ!!!」」」
三人、連鎖的に大スリップ。
見事な“きれいな三角倒れ”を披露する。
床には、ちょっとしたワックス跡。
その瞬間。
カティア、静かに目を閉じる。
開いたとき――“仕事モード”。
「……汚した者は、磨き直し。
では準備しますので、三人とも――ホール中央へ」
ノア「えっっ!?」
レオン「二度目!?」
ミーナ「もういやですのぉぉ!!」
メイド隊が淡々と用具を並べる中、三人は再びモップを握りしめる。
アシュリー「今度は転ばないようにね(圧)」
リリア「ミーナさんは“滑り止め靴”を用意しました」
アネット「記録します。転倒ゼロが目標です」
ミーナ(靴を見つめ)
「こ、これはもう……清掃兵……ですの……?」
だが、清掃が始まれば――やはり三人。
ノア「レオン、ここもうちょい光らせろ!」
レオン「兄貴が先にやれ!」
ミーナ「泡が……! 泡が来ますわ!!」
カティア(遠い目)
「……終わる気がしないわ……」
結局――
夕方まで、三人は転び、滑り、磨き、叫び、そしてまた滑り……
ホールはさらにピッカピカに輝いた。
その頃。
遠いルヴァリア……伯爵家・アリアの部屋では。
アリア
「……“兄ィズ、床で自分に酔う騒動”って……
これ、帰国報告ではありませんわよね……?」
メイベル
「……お嬢様、内容的には“騒動報告書”でございますね……」
アリア
「………………もう……知らない……」
遠い国で、今日も兄ィズは元気だった。




