127/133
その29 食ふべき詩
詩人のヤワな神経で
サラリーマンが勤まるのか
けっこう埃っぽく
剥きだしでもある
小市民の俸給生活
仕事でミスをして
他人の嘲りを受けるとき
俺は詩人なのだからと
己を慰めたこともある
こんな粗塩のうえを
裸で転げまわるようなことが
傷口だらけの体にできるか
薪をブチ割るような仕事を
なぜカミソリにさせるのか
奴らはそれしかすることもあるまいが
俺の本業は他にある
この仕事は食うために
やむを得ずしているのだ
と
そうして我慢して
働き続けていると
ふと不安になるのだ
サラリーマンを長くやると
詩人の感性を失うのではないか
いや、もう失いかけているから
サラリーマンが続けられるのでは
「食ふべき詩」と
啄木は喝破したのだが




