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坂本梧朗詩集  作者: 坂本梧朗
Ⅴ 第五詩集『おれの場所』   2007年刊

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112/133

その14 個の時代   箱

   個の時代

              

問題はいきなり

個にくる


周縁の関係は

ばっさり

資本が切取ってしまった


あなただよ あなた

選択するのは

その結果もあなたのものだ


他人(ひと)のせいにはできないよ


もっとも 

昔から

責任だけはとらされてきた

選んだ覚えもないことまで


だから

いい時代だと思わないか

問題は初めからはっきり

「あなた」に提起されている




    箱

             

二人掛けの座席

隣に座っている乗客が

押しのけるように肩を動かす

確かに彼が先に座っていたのだ

他に適当な席もなく

隣に腰を下ろしたのだが

何でわざわざここに

という気持かも知れぬ

民衆とか協同とかいう観念も

こうなると胸から一時飛び立ち

とにかく隣のこいつが

現実なのだ


職場に着いても

この関係の延長が

あるだけではないか


狭い箱に押し込められて

互いに牽制し合っている


その箱をつくった者は

いつも見えない

見えるのは

箱の中の顔ばかり


箱の天井から

顔のない声が落ちてくる

〈この箱はもう古くなった

 新しい箱はこれだ〉


箱の中の

呻きや嘆きなどかき消して

その声ばかりがよく響く













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