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その13 末期 時代
末期
数年間も覚えている
事件が昔はあった
この頃は
一年と覚えていられない
昔なら
数年間の記憶を刻みつけたろう事件も
月に何度も起きては
覚える暇もない
子の親殺し
親の子殺し
孫の祖父母殺し
祖父母の孫殺し
事件の裏側から
この社会の軋みが聞こえる
生き難さに呻吟する声が
いくつも重なり合って
洞穴の中のように
おぞましく谺してくる
崩れていく
これまでは崩れなかったものが
この崩落は
きっと棟木を折るだろう
何かが終ろうとしている
時代
「文明開化」
「富国強兵」
「脱亜入欧」
の果ての
「神国日本」
が行詰まった
原爆・敗戦
の後の
「高度成長」
がショック死しての
徹底合理化 テッテ テッテ
円高 リストラ
長時間過密労働 カローシ
バブル ブルブル
「バブルがはじけた」
長期不況 不興 不協
尻を叩かれ叩かれ
「上」はなおも
キョウソウを煽っているが
現在はもう
沈む時代だ
浮つかない時代だ
幻想の台座の上で
目を瞑るのではなく
鏡に映した己の
歪んだ背骨
狂いかけている三半規管
を正視する時代だ
維新以来初めて
日本人が地べたに尻を落着けて
己とその暮らしを
吟味する時代だ




