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坂本梧朗詩集  作者: 坂本梧朗
Ⅴ 第五詩集『おれの場所』   2007年刊

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111/133

その13 末期   時代

   末期


数年間も覚えている

事件が昔はあった


この頃は

一年と覚えていられない


昔なら

数年間の記憶を刻みつけたろう事件も

月に何度も起きては

覚える暇もない


子の親殺し

親の子殺し

孫の祖父母殺し

祖父母の孫殺し


事件の裏側から

この社会の軋みが聞こえる

生き難さに呻吟する声が

いくつも重なり合って

洞穴の中のように

おぞましく谺してくる


崩れていく

これまでは崩れなかったものが

この崩落は

きっと棟木を折るだろう

何かが終ろうとしている




   時代


「文明開化」

「富国強兵」

「脱亜入欧」

の果ての

「神国日本」

が行詰まった

原爆・敗戦

の後の

「高度成長」

がショック死しての

徹底合理化  テッテ テッテ

円高 リストラ

長時間過密労働 カローシ

バブル ブルブル

「バブルがはじけた」

長期不況 不興 不協


尻を叩かれ叩かれ  

「上」はなおも

キョウソウを煽っているが


現在(いま)はもう

沈む時代だ

浮つかない時代だ


幻想の台座(うてな)の上で

目を瞑るのではなく

鏡に映した己の

歪んだ背骨

狂いかけている三半規管

を正視する時代だ


維新以来初めて

日本人が地べたに尻を落着けて   

己とその暮らしを

吟味する時代だ





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