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坂本梧朗詩集  作者: 坂本梧朗
Ⅴ 第五詩集『おれの場所』   2007年刊

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103/133

その5 マスク   睡眠列車

  マスク

             

この国の風土は

素顔に過酷だ

曝していると

火膨れを起こす


マスクを着けよう


構えを捨てて

エヘラエヘラ

やり過ごせる


楽になる

息がつける


素顔でいたいのはもちろんだが


生き抜くチエだ


ここはこのマスク 

そこはそのマスク


さして抵抗なく

取り替えられるようになった


が

素顔は


素顔は

どのマスクだ




   睡眠列車

               

この国の労働力構成の縮図のよう

勤め帰りの人々が

ずらりと向き合って

眠っている

連なる歪んだ寝顔

在ることに耐えるように

眉根を寄せ

堅く目を閉じている

不意の脱力が葛藤を絶ち

仰向けに口を開けたまま 

埴輪の顔となった者もいる


出入り口近くで

若者たちの小グループが

うわずった声をあげ

蜂の巣の興奮に

のめりこもうとしている


ほんの数人が目を開けている

どこを見ているのかわからない

虚ろな目を





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