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坂本梧朗詩集  作者: 坂本梧朗
Ⅴ 第五詩集『おれの場所』   2007年刊

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102/133

その4 携帯電話   猫背

   携帯電話

                

一人のはずの人が

突然話し始める


見えない相手に

うわ言のように文句を言い続ける

誰彼かまわず

憑かれたように通行人を罵る

その類の

心安らかならぬ人かと


見ると

受話器を耳に当てている


見えない人と話している

この場にいない人との会話の中にいる  


この場にいる私は

どうすればいい


受話器に話しかけている人は

この場にいるのか


その人と私の影が

不意に薄れる




   猫背


「肩凝り」という単語は

英語にはないらしい


日本人は

立っていても座っていても

猫背になりがちで

肩凝りをおこしやすい

外国人はなるほど

上から引っ張っているように

ピンと背筋が伸びている


胸を張って

背筋を伸ばして

正面を見ては

どうも日本人は

生きにくいのだ

        

出る釘と

思われそうで


立っていても

座っていても

いつもすまなさそうに

背を屈めて


見ているのかいないのか

視線はいつも正面を外して


決して本意ではない

したくてするのではない

やむを得ず

仕方なくすることだと

弁解の余地を常に残して


が

奇妙なことに

それが存在のしぶとい主張になるのだ












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