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その4 携帯電話 猫背
携帯電話
一人のはずの人が
突然話し始める
見えない相手に
うわ言のように文句を言い続ける
誰彼かまわず
憑かれたように通行人を罵る
その類の
心安らかならぬ人かと
見ると
受話器を耳に当てている
見えない人と話している
この場にいない人との会話の中にいる
この場にいる私は
どうすればいい
受話器に話しかけている人は
この場にいるのか
その人と私の影が
不意に薄れる
猫背
「肩凝り」という単語は
英語にはないらしい
日本人は
立っていても座っていても
猫背になりがちで
肩凝りをおこしやすい
外国人はなるほど
上から引っ張っているように
ピンと背筋が伸びている
胸を張って
背筋を伸ばして
正面を見ては
どうも日本人は
生きにくいのだ
出る釘と
思われそうで
立っていても
座っていても
いつもすまなさそうに
背を屈めて
見ているのかいないのか
視線はいつも正面を外して
決して本意ではない
したくてするのではない
やむを得ず
仕方なくすることだと
弁解の余地を常に残して
が
奇妙なことに
それが存在のしぶとい主張になるのだ




