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空きビンとアルミカン PART 4 主人のいない部屋と客人

 PART 4 主人のいない部屋と客人


 ヴィヴィはレモア達と合流した。


 レモア達も宝探しよりもとんでもない発見に戸惑っていたが、時間をおくことで本題に戻って倉庫内の探索を再開していた。


 再開して目指した場所は、この倉庫の主であった居住スペースである。


 ヴィヴィもひとまず、お目当てが見つかったことでレモア達の居場所を確認して、ここへとやってきた。


 ヴィヴィにとって先ほどの発見同様、そこには文化的にあろうとする痕跡がいくつもあった。


 まず、絵画である。


 これも手作りだろうか、あまりうまさは感じない。その隣にはモニターが置かれている。だが、これはシステムの範囲外か壊れてしまっている。


「この部屋自体、システムとは隔離されています。どういう理由か」


 と、マイヤーが語る。


「では、このモニターは意味がないと」


 居住スペースであれば、データ管理用のモニターとして使われていると考えるのが普通だが、システム外であればその意味はない。


「なら、映像作品を楽しんでいたのかしら」


「システムを介さずにですか」


 それもそれで変である。システムはいかなるモノとリンクしており、映像作品すら膨大なシステム内に管理されている。単独でモニターを持つ理由は普通の人間では考えられない。


「直せるかしら」


「まあ、難しい話ではないと思うので、やってみます」


 マイヤーはモニターに触れる。そして、アルミカンを介して現状の回路を調査する。


 アルミカンは現状維持にも使われるように、その構造を解析するのにも便利な技術である。また、今のように壊れた物を直す際にも使われる。


 そして、調査が終わると今度は修理のために必要なエネルギーを注入する。


 今回は劣化による故障であるため、少量のエネルギーで半ば自己修復させる格好でアルミカンを要すれば、修理完了となる。


「なるほど、こうやって使っていたのか」


 マイヤーは修理したモニターをそのまま起動させたことで、その用途を理解した。


 そこに映し出されたのは絵画、しかも、いくつかの絵画が映し出されており、それらを選択することでモニター自身が額となり、絵画に見立てていた。


 横にある手作り絵画とは違い、少女達の知識にもある有名な作品ばかりがモニターには映し出されている。


 この使い方はシステムを返してもできることだが、地上でのデータベースが壊れたことで暫定的な対応でこのようなことをしたのだろうか。


 倉庫内のシステムが無事であっても、地上自体が駄目になったようにこの部屋もシステムに頼らない構築が必要になった訳だ。


「結構な趣味を持っていたわけだ。ここの主は」


 ただ、基地には絵画はあまり飾られてはいない。少女達が興味がないことが多い。


 それでもこうして見る絵画も悪くないと誰もが思っていた。


「それで何かいい物は見つかった」


「ここの主の日記が……」


「詳細は」


 ヴィヴィはデータが送られるかと思っていたが、意外にもそれは手渡しであった。


「……手書き」


 それは紙で書かれた日記であった。旧時代から紙はいろいろな背景から衰退していた。


 ただ、形式的や重要な書類には紙は使われており、基本的には一般人が触れる機会はほとんどないだけで、紙という素材としては健在であった。


 それでも、筆記用の媒体としては作られておらず、紙媒体での本もまた同様。


 この日記は恐らく、アルミカンで作られたオリジナルな製造物。


 中身もまた特殊で、初めは今でも辛うじて読める文字であったが、後半になるほど旧字体の文字へと変化している。


 恐らく、これも趣味なのだろう。


 暇を持て余すとここまで文化的な生活になるということか。


「それでデバイス等は……」


 生身の人間ではアルミカンを使うには、コアなどのシステムに仲介するデバイスが必要である。その中にはいろいろな情報も含まれている。


 手書きの日記よりも、今の時代では重要視され情報である。


「一応、この部屋のデバイスがあるのですが、ちょっと問題が」


「それも手書きだといわないわよね」


「残念ながら、それに近い部分がありましてメインシステムは今でも通用しますが、あえて暗号化がてらか旧世代のフォーマットを使用しているようで」


 マイヤーの腕ではそこまでが分かったところで、調査は止まっている。


 時間をかければ、できるかもしれないが、その時間というのは1日、2日でも足りない。当然、この遠足では対応できるレベルではない。


「分析はそれほど難しくはないですが、それで有益な情報があるとも限りません」


「とんだ発見だらけね」


 バカピックとは違うが、頭が痛くなる話である。


「まあ、いいわ。ここも私達の手に負えない話だわ。データまるごと持ち帰り、後のことは基地なり、都市の判断ね」


 ヴィヴィは少し悩んで周囲に指示を与える。


「ひとまず、マイヤー。この部屋のデバイスのデータはすべて保存。日記に関してはどのぐらいあるの」


「まあ、ボックス1箱分はありそうですね」


「持ち帰りで」


 その程度は支障がないと判断し、即答する。


「後、この部屋の物は基本それ以外は手を出さないこと。判断に困りすぎよ」


 周りは不満の声を上げない。価値はあっても、ここには特にお目当てのモノがないからだ。


「まあ、手作りの絵画ぐらいは持ち帰っていいわよ。下手したら都市ではかなりの価値になるかもしれないけれど」


 ヴィヴィはそう語るが、これも周りの少女達には興味のないことだった。


 そもそも、都市で価値があるといわれても関係のない話であることも大きい。


「それで、貴方達の獲得物は」


「今のところ、特にないですが、低温エリアに保存食がいくつか残っていました」


 旧世代の食べ物は今よりもおいしい、と語られている。それはある意味では真実で地上を奪われたことで食料の大部分は代用品を加工されたモノにアルミカンで作られたまがいモノ。自然で作られた食べ物は貴重である。


 ただ、旧世代も代用品による加工品も多いが、それでも今よりは自然で作られた食料を元にしている。


 保存食も少女達にとって価値あるモノの1つではあるが。


「まあ、そのまま食べることに関しては諦めるべきね。ただ、アルミカンを利用すれば、中身を再現できるかも」


 冷凍されたモノであっても時間が経ちすぎているため、いろいろと不安要素はある。


 そこでアルミカンの出番となるが、機械だけでなく食料の成分を取り出すことは簡単なこと。また、元々表示されている成分、材料を考慮すれば、中身の再現は容易いこと。


 ただ、その味はどこまで再現できるかは微妙な所。


 基本は同じモノの再現であるが、アルミカンはあくまで原子の再構成。味の要素を決めるためのモノとは別問題である。


「それを確認がてら、ここの主にも挨拶と行きましょうか。マイヤー、案内を」


 レモアはヴィヴィの指示に従って、アルミカンで作り出した携帯用ボックスに日記を収納している。


 とはいえ、内情はお目当てがここまで何もなく、ここでの作業を早く終わらせて次へと行きたかった。


 だが、ヴィヴィは追加の指示を出す。


「それとこの部屋以外で壊れている機材関係は外にいるエンジニアの方へ運んでおきなさい」


 レモアは当然、その言葉を聞いて顔に出す。それはヴィヴィとて同じ気持ちだけに、フォローを入れる。


「それが終わったら、好きにしたらいいから」


 それを聞いて、レモアの顔は緩やかに変化していった。


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