空きビンとアルミカン PART 2 街の火
PART 2 街の火
少女達は廃墟となった街を探検している。
まさにここは太古の遺跡であり、宝が眠る場所。わずかばかり残る生活用品であっても自分のお眼鏡にかなうモノであれば、他人から見てゴミと見なされても、少女達には宝物として十分であった。
もっとも、少女達にはここでのモノは初めて見るモノばかりで、ここで住んでいた人間達が捨てたゴミであっても、それがゴミだと認識することはできない程である。
太古の遺跡と形容したが、実際にそれほど時間は過ぎており、ここでのモノを正しく理解するには考古学の知識が必要になるぐらいである。
それは今を生きる、人類側も同様で、地下という限られた場所、資源で生きる中で地上は失われた栄光である。
ここでのモノを持ち出すことは少女達とはまた別で価値のあることである。
とはいえ、地上への出入りは管理され、バカピックからのリスクである以上、一攫千金を狙ってと地上に上がることはない。
それに本当に価値あるモノや貴重品は移住の際に持って運ばれているため、残っているモノに価値があるモノは少ない。
ここが少女達とは違う価値観である。
つまりはこの宝探しは少女達のみに許され特権である。
そんな中、この街一番のお目当てとされる場所が発見された。
動力源が生きている場所があるのだ。
別にそれ自体は不思議なことではない。動力源のコアは半永久に駆動が可能である。つまり、人類が地下へと移る前より稼働している大先輩である。
そんな魅力的な場所にレモアと初めとする4名が探索を開始した。
「さて、ここは当たりだろうか」
レモアはそうつぶやく。他の3名も似たようなモノでこの先のまだ見ぬ成果を期待している。
むしろ、他の探索組の4名はレモアを初めとするこの4名の強欲さに勝てないと、各々違った場所を探索している。
動力が生きている建物は倉庫だったらしく、街からは少し離れた場所で、建物自体の高さは高層ビル群から比べれば低いが、広さがそれを補ってはいる。
そして、動力が生きていることで建物を管理するシステムもまた作動している。
「どうしようかしら、一応、建物の破壊は認められていないから」
そう、システムにより建物の扉はロックされており、主なき後も建物はその内部への侵入を防いでいる。
狙い目の場所であっても、他の探索組は動力が生きていることが探索のリスクになると考えていた部分もある。だから、ここを狙わず、安定志向で他を探索している。
「私に任せて」
そう言ったのは第1部隊でシステム関係に強いマイヤーであった。
「こんなロックは、私にはゲーム感覚よ」
そういって、扉の横に設けられた端末にマイヤーは手をかざすと、システムと接続を始める。コアの通信機能は機械相手であっても行える。
ただし、システムの原理を理解していなければ、介入した所で何もできない。いわば、プログラムの言語で対話するといった所だろう。
これはエンジニアなら、大抵持ち得ているスキルであるが、戦闘要員にとっては趣味のスキルである。通信関係やこういった場合で、たまに役には立つが。
そうしている、30秒ほどで扉のロックは解除された。
「さすが」
しかし、当のマイヤーはさえない顔だ。どうしたのか、レモアは一応尋ねる。
「いや、ロックを外そうとしたのだけれど、何分古い構成だったから、勝手が分からず、どうせ建物全体に及ぶことだからシステム全体を私の管理下に書き換えたの」
本来なら、扉のロックを外すだけで済む単純なことだったが、考え方も違う古い方法だけに、知識よりも経験がモノをいう世界。なら、自分の知る知識に置き換えた方が早いと、マイヤーはシステムの書き換えで対応した。
建物のシステム管理程度なら、コアを使いこなせばすぐに作り出すことは難しい話ではない。
「まあ、後でシステムは元に戻すから壊したことにはならないわよ」
マイヤーはそう語るが、次元が違う話である。
とはいえ、少女達にとっては至って普通なこと。
「それよりもシステムを掌握したことで、ここの詳細が分かったわ」
むしろ、その言葉にレモア達は興味を示す。それはこの内部の宝物に関して、参考になる情報たからだ。
「……ちょっと、寄り道してから いいかしら」
だが、マイヤーの口からもコア経由の情報からもそれは語られず、ただ、同意だけを求められた。
まだ見ぬ宝物に早く見たいと焦る気持ちはある。
それに情報がなくとも、各々でも動いて調べれば、その手間は誤差に等しいの事。なら、同意をせず、各自で動けば相手よりも先に宝物を自分のモノにできる。
だが、それはマイヤーも同じである以上、マイヤーにそう思わせる発見にレモア達も従うしかなかった。
「了解。ここはシステムの掌握したマイヤーに従いましょう。それが一番リスクは少ないことだからね」
そう1人がいうことで各自は納得した。
その同意を得たことで、レイヤーは黙って建物内を進み始めた。ただ、進み続けるだけで何も言わない、情報も提示されない。
ただ、地図情報だけ更新されており、進行方向から行き先のおおよそは他の者もある程度、把握はできていた。そこに何があるかはまだ分かってはいないが。
「ここよ」
ようやく、言葉を発したマイヤーが案内した場所は厳重な扉が付けられている。その扉、壁で隔離されているのに、その先の様子は部屋の外からでも感じ取れた。
「分かっているとは思うけれど、開けるわよ」
扉を開けることで部屋に閉じ込めていた冷気がわずかながら流れてくる。扉の先は低温で管理された部屋であった。それは地図からも、部屋の外からもわずかに伝わってくる冷気からも分かっていた。
部屋の中は低温で管理されているだけに食料等を保管する場所として使われていた。
少女達は上着を着ているが、部屋内の冷たかったため、各自、力場を利用することで冷気を遮断させて、防寒着代わりにした。
部屋に入るとすぐに扉は閉められる。冷気を逃がさないための元からのシステム。こればかりは無理に変えても仕方がない、本来の用途だから。
部屋内には棚が置かれ、様々な食料等が保管されている。とはいえ、部屋内に保管されている量は棚の数に比べて多くない。消費されたのだろう。
長年放置された場所であっても、設備は生きている。いや、動力が生きていればそれは当たり前なこと。
動力であるコアと錬金術に等しいアルミカンはセットとして使われるからだ。
その結果、どのようなことができるか。
半永久的に朽ちることがなくなる。劣化してもアルミカンによって再生を行う。そのエネルギーはコアが作り出す。その循環したシステムにより、地上を昔に捨てた人類なき後もこの倉庫は辛うじて、灯りを消すことなく今を生き続けていた。
そして、その低温の部屋に入った時、マイヤー以外の者も目には見えていないが、ここに来た理由をすぐに理解した。観測機器はそれを察知したからだ。
そして、一同は黙ってその場所へと近づいていく。
その場所には人が眠っていた。
しかし、観測機器はその人が生きていないことは初めから探知していた。それでも観測機器は死んでいても、人がいることを少女達に重大事項として知らせていた。
それは人類を守るファミネイの最優先事項だからだ。
この場で寝ている人はこの低温の空間が幸いしたのか、腐敗を免れてある種のミイラ化をしている。確かにグロテスクには変化しているものの、生前の姿をある程度、今に残している。
性別は男性、歳は推定できないが外見では年配者と思われる。このような場所で息を引き取ったことを考えると、体力の衰えからこの気温の変化に耐えられなかったのか。
どちらにしろ、歳による影響は大きいだろう。
さすがにレモアを初めとする少女達もその姿を見て、不要なことは言わない。どうであれ、自分達にとっての大先輩であるからだ。
とはいえ、これほどの発見、情報としては流す必要がある。
だが、それをマイヤーは意図的に隠していた。とはいえ、これを見てその気持ちも分かるのだが。
「ひとまず、映像はNGよ」
レモアはそう突っ込む。周りもその言葉に静まっていた雰囲気を打ち破り、笑みを浮かべる。
「了解。ひとまず、情報だけ送りましょう。それでもといわれれば、詳細を発信してやればいいからね」
マイヤーはそう語るが、ひねくれた発想ではある。その行為が逆にオオカミ少年とならなければいいのだが。
「さて、後は我々の仕事に戻りましょうか」
お互いに目を輝かせ、互いをけん制するかの様子を見せていた。




