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アキラのニューイヤー事情

 アキラは寝ている間に年は明けていた。


 それでもいつも通りの朝よりは少し早い起床で、これからの始まる新年を迎える式に対応する為だ。


 そして、着替えを終えて、廊下へと出るといささか違和感を抱いた。


 寝ている間に基地の雰囲気は変わっている感じがしたからだ。ただ一晩寝ていただけなのに。


「早いですね」


 そういって、廊下で出会ったのはカレンだった。


 早朝とはいえ、まだ夜間任務中だというのにアキラの部屋の近くにいたのは、コアの情報を見ていたからだろうか。


「ああ、今。基地内が大騒ぎで収拾に回っているのです」


 カレンからの現状の報告を受けた事で、アキラは状況を把握した。


 新年を迎えるに当たり、昨日から戦闘要員、エンジニア、オペレーター、その他、雑務とはいえ兵站関係に携わる各員、それぞれが忙しくしていた。そして、それを楽しみにしていた。


 その結果が今の基地内の雰囲気を変えている事に理解した。


 とかく、少女達は楽しい事が好きだ。


 だか、それではひたすら混沌となるだけで適度に収めるモノが必要となる。それがひとまず、夜間任務であった部隊にその任が任命されていた。


 それはシノの命令によるモノだった。


「年越しで未だ騒いでいるので、大変ですよ。まあ、これも楽しいのですが」


 カレンとしても初めての新年の体験に参加する側でもないが、嬉しそうな顔をさせている。当然、アキラもこの基地で迎える、初めの新年でもある。


「ひとまず、自分も司令室に行き、呼びかけで何とかしよう。効果は微妙だけど」


 アキラも状況を理解して、自分のすべきことを確認する。だが、実現するには正直、自身の事ながら期待が出来ていない。その事は力不足だと痛感している。


 まだ、半年。もう半年。それがアキラの経験値である。


「では、また」


 カレンは騒ぎの場所をコアからの情報で確認して、その場へと向かっていく。


 アキラもまた、自身の仕事場、戦場である司令室へと向かう。


 とはいえ、司令室もまた状況は似た様なモノで、一応の機能しかしていない。


 新年を迎えた際に食堂で用意されていたささやかな振る舞いとその他諸々が司令室に持ち込まれ、いつも以上に独特な匂いをさせている。


 司令室の主であるハヤミはまだ来ていない。だからこそ、この匂いが漂わせているのだが。


 そして、アキラはその様子には何も言わない。言っても仕方が無いから。その代わりの言葉をかける。


「基地内に呼びかけは出来るか」


 アキラは尋ねる。その言葉にオペレーターはきっちりと対応を見せる。


 だが、ここでの言葉は重要である。何せ、少女達の楽しみを削ぐ様な事になれば、それこそ暴動である。


 逆にそこに気を遣い、結果として火に油を注ぐわけにも行かない。


 その事はアキラがここに来て一番痛感したことである。よって、この場にふさわしい言葉も多少心得ている。


「各員、式典に準備せよ」


 この命令では少女達の楽しみを削ぐだけなので、アキラは言葉を繋げる。


「そして、式典後に備えよ」


 その命令で少女達の騒ぎは次第に収まりを見せていった。


 ほとんど、変化のない追加した命令だが、式典後という今から、この後のイベントへ少女達の意識をシフトさせる為にアキラは命令を出した。


 少女達は刹那的な生き方で、今、目の前の楽しみを求めている。すぐ、その後にある楽しみであっても、今を大事にする。


 まるで童話の様な存在である。


 また、必要以上な言葉は言わない事で考える余地を残すのも重要。ある種、少女達の主体に期待することにはなるが、それでも考えさせて最適な行動を促す。


 少女達は人工生命体。人の手で生み出されても、自身の考えで生きている生き物である。人間とどうであれ同等な存在。


 ただ命令だけで支配は出来ないのは生き物だからだ。


「とはいえ、この後も大変だ」


 そう漏らしたのはハヤミだった。ハヤミはいつも通りの時間に司令室にやってきた。


 そして、周囲の状況には触れず、周りを見つめる。


 その様子にオペレーターは別に大きくは変わらない。ただ、匂いを隠すために換気扇は回されているが。少女達には匂いも楽しみの1つなのだ。


「まあ、命令としては十分だが、この後の展開は変わらないぞ」


 何しろ、この後、新年の挨拶、そして、これからが本当の新年を祝う祝賀会となるだけ、0時から続けられた宴はあくまで夜間任務を行う者達が主で、本来は今まで続けられるモノではない。


「さて、これから本番だ」


 ハヤミはアキラの方を見つめる。


「お手並み拝見だな」


 嬉しいそうハヤミに語っていた。この後に起こるであろう出来事に少女達同様に楽しみを感じさせているのであった。


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