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ひねくれ少女ネトゲに入り浸る~強いってだけじゃ駄目なんですか?~  作者: せいゆ


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 やっとの思いで街の上空に辿り着き、Lo10のダンガードの根城前まで向かう。

 ダンガードの根城はいくつもあるが、どれも隣接していて大きい。

 プレイヤーは夜明けだというのに多く行きかい、近場で露天などを出していた。

 そんな中に突然メイアが降り立つと周囲が一度迷惑そうに視線を向けるが、酷い怪我と雷光のメイアだと知ると驚愕して慌てだす。


「すみません、退けてください、急いでいます」


 呼び掛けるとどんどんと退けていきダンガードの商店の前までの道が出来る。

 従魔ごとなんとか頑張って店に入ると、店で働いていた店員が難色を示す。


「お願いします、至急ダンガードさんを呼んできてください」


 従魔を連れて行くのはマナー違反だが、メイアという看板とその惨状を見た店員は息を飲む。


「なんですか、騒々しい」


 そんな時奥からダンガードの作ったクランのサブリーダー、ミッドレアがやってきた。すらっとした黒い礼服を纏った男性だ。


「ミッドレアさん、そ、それが、その」


「店員なんですからしっかりと対応してください。

 それからそこの方、ここは大きな従魔の立ち入り、は……、天雷のメイア? それに、その姿。

 何をぼーっとしているのです、すぐに医療班とダンガードを呼んできなさい」


「は、はい!」


 即座にただ事ではないと悟ったミッドレアは、子供達を抱えさらにメイアを椅子に座らせる。


「今日は一時的に店仕舞いです、お客様、どうかお引き取りください」


 残っていた店員が来客たちを追い出していく。

 店の内部には店員とメイア達しかいなくなったところで、ミッドレアがメイアに尋ねた。


「何があったのです?」


 メイアは地図を取り出し、名前の分からぬ村を指さして。


「化け物が出ました、……人間が化け物になったのか、それとも化け物が人間に化けているのか、分かりませんが、どちらにしろ危険な化け物がまだ複数体居ます」


「……何匹居ましたか?」


「分かりません、少なくともわたくしはその一体を倒すのが精一杯、手塩にかけた従魔が持っていかれ、そしてこのザマです」


 メイアの戦闘力は全員が認めるものだ、それが一体でボロボロにされたとなれば頭を抱えるしかない。


「人に擬態でその強さ、シャレにならないな。

 コミュニケーション能力は?」


「あります、……会話も、できました」


 さらに考え、すぐに問題点に気が付いた。


「……いや、強さもそうだが、化けてるって時点で相当やばいことになる」


「やばい?」


 聞いていた仲間が首を傾げる。


「この事が公けになってみろ、絶対にNPCに対して疑心暗鬼になってNPC狩りの理由が生まれてしまう」


「え?」


「それは……」


 周りの者達が凍り付く。想像しただけで悲惨な未来視か思い描けない。


「思ったよりも根が深い事件になりそうだな……、こりゃバカマスターには荷が重い。

 ロードの緊急招集が必要だろう」


 ミッドレアの言う緊急招集というのはLo10のみ使える特殊なスキルである。

 緊急招集を発動させると、Lo10の人間が異空間へ呼び出す事が出来る。呼び出した先で会話なども可能であった。


「治ったならすぐに緊急招集を発動させてほしい、村への対処は俺達が受け持とう」


 ダンガードのクランは、間違いなくミッドレアが頭脳である。

 ダンガードは象徴であるのだが、クランなどの行動ではミッドレアが指示しなければ成り立たない。


「けど、あれは人数だけでは駄目です、数と質を両立しないと」


「質と量か、……どっちにしろロード全体に話を通さなければいけない。

 俺達が行って負けたならそれだけだ」


「けどそれでは村人が――」


「何難しい話をしてるの? というかメイアさんがボロボロって本当なんだね」


 話に割って入る男の子、幼さ残る15歳ほどのうさ耳を生やした少年であった。

 にこにこと場違いの笑みを浮かべていて子供にしか見えないが、Lo10のダンガードその人であった。

 後ろからは数名の回復術師と薬師がやって来て、メイアと子供達の面倒を見始めた。


「バカマスター、早く緊急招集を発動させろ」


「いきなりひどい言われよう、けど、そんなやばい事態なの?」


「天雷のメイアが回復次第すぐ移動できるように温めて置け、少なくともこのゲームの根幹に関わる事だ」


「え? ……あれ? ボク呑気にしてる場合じゃない?」


「呑気にしてていいならここには呼ばない」


「……ありゃぁ」


 心配そうにメイアとミッドレアを交互に視線を向けるが、どちらも深刻そうで居心地が悪くなる。


「一応ちゃんと説明しておく、違ってたら天雷が口をはさんでくれ」


 ダンガードに懇切丁寧に説明すると、事態を把握したダンガードはかなり困惑しているようであった。


「……これ、ひょっとしてかなり一大事、だよ、ね?」


「一大事だバカ、それと緊急招集はちゃんと発動してるんだろうな?」


「え? いや、その、まだ」


「はぁぁぁ!? 馬鹿かおめぇわよ! 重要で一秒も余裕がないって言ってるだろ!」


「ご、ごめんなさい」


 上下関係は完全に逆転しているが、これでも二人の仲はとても良好だ。


「こちらで発動しました」


「あっ、そういえばメイアさんもLo10だったね」


「噂にはなってたが本当だったのか、助かるぜ。

 腕や足の再生も十分したみたいだな、まだ酷いと思うが頼むぞ」


「分かりました」


 メイアの怪我などは完治しているが、生やした新しい腕や足は馴染むまで少しだけ時間がかかり、ステータスにも下方補正がかかる。

 今は下方補正がどうこう言っている時間は無く、軽く動かして、メイアは発動中の緊急招集をさらに発動させる。するとその場から掻き消え、同じように緊急招集を発動させたダンガードもその場から掻き消えた。


 ミッドレアはメイア達の会話をしている最中でも、クランチャットで実力者と戦闘要員に準備を呼びかける。

 二人が消えた所で、自分も即座に準備をして集合場所へと向かう。


「みんな揃ったな、今回は非常に危険な話だ。

 これから起こる事は全て他言無用、そして迅速な行動を心掛けてほしい」


 集まったクランメンバー達は総数30名のみ、これ以上の人数を集めるとなると時間がかかる。

 そしてミッドレアの表情を見て、全員に緊張が走った。


「村人の救助と、化け物退治だが、強力で勝てるか厳しい。

 だがそれでも我々はそこへ向かわなくてはならない、心してかかる様に」


 それだけ延べると軍隊の様に全員が準備を始める。

 飛行系従魔をすでに宿舎から連れてきていて、後は乗り込むだけだ。

 全員が乗り込んだところで、目的地へと飛び立った。


(ついてくる奴は、……やっぱり居るか)


 メイアがダンガードに助けを求めにやってきた時点で話は広がっており、動向を伺うプレイヤー達がすでに準備をしていた。

 分かり切っていたとはいえ、話題を絶対に広げたくない、追跡者が邪魔で仕方が無かった。

 だからこそ。


「撃ち落とせ、全員だ」


 手練れ五名が追跡者に向かい攻撃を仕掛ける。

 予想もしなかった攻撃に追跡者たちは成すすべなく従魔だけをやられて墜落していった。


「いいんですか?」


「今回ばかりは良い子ちゃんぶっていられない、やるなら徹底的にだ。

 それからお前たちにはこれからの話がどれだけ重要か話しておく」


 詳細を語るミッドレア、その語られる内容に半数以上は表情を暗くしていた。

 そして30分ほどして村が見えてくる。


「……こいつは」


 酷い惨状であった。

 村があった場所は焼け、周囲の木々も未だに火の手が上がりもくもくと黒い煙を吐き続けていた。


「十分警戒して散開、何かあれば逐一知らせてくれ、村人を見ても不用意に近づくなよ」


 恐る恐る警戒しながら探索を始める。

 時に木々が倒れる音に驚き、緊張感が最高潮の状態で探し続ける。

 すると一部の班が生存者らしき影を見つけ、身を潜めているという報告を受ける。


(三人で当たらせるわけにはいかないか、合流するのが一番か?)


 少数での接触は避けることにし、全員が生存者らしき影を見た場所へと集める。

 山側にある洞窟前、村人達が氷室にしている場所であった。

 警戒しながら数名が先行して前に進んでいく、すると洞窟の暗闇から女性がゆっくりと顔を出した。


「プ、プレイヤー?」


 女性はプリスターその人であった。

 互いにプレイヤーであることが分かり、驚きながらも警戒する。

 ミッドレアが前に躍り出て、プリスターに尋ねた。


「天雷のメイアによる救助要請で来た、村人はどうした?」


「……守って、いました。……ほ、他の人は」


 憔悴した様子で、幽かな希望に縋る様に尋ねるが、その様子は諦めの色を隠し切れない。


「いや、お前たちだけだ」


「それじゃ、もう……」


 プリスターは尻もちをついて一息ついた。

 すると洞窟の奥から様子を見ていたNPCが恐れながら顔を出す。


「NPC全員収容急げ! この場に居る者だけでも連れて帰る!」


「了解!」


 助けに来たと村人に話しかけるも、NPC達は怖がって奥へと逃げていく。


「君、あの人達を説得して欲しい。

 それから我々について来てもらう、強引だろうが拒否権は無いと思ってほしい」


「……分かりました」


 プリスターはよろよろと立ち上がり洞窟の方へ向かっていく。

 木々の隙間から朝日が仕込み、ミッドレアはやっと一息つく事が出来た。


「地獄の様な場所だ…」


 奥から恐る恐る出てくる、たった7人の生き残りを眺め、ここが安心安全な最初の街メルテトブルクの近くなのかと疑問に感じるのであった。

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