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ひねくれ少女ネトゲに入り浸る~強いってだけじゃ駄目なんですか?~  作者: せいゆ


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 血の匂いと悲鳴が広がり、火の手が空を照らす。

 叫び声を聞きつけたミナモ達は渦中の白い人型と対峙する。


「な、なんだ、あれ……」


「ひ、人?」


 その中で知っているのはミナモ1人。そして畏怖を抱く人々の中でもミナモだけが懐かしさを抱き眺めていた。


「久しぶりに見たよ、『清廉の子兵』」


「清廉の子兵?」


「肉体が変化しきった、人間の姿」


 絶句。その一言に尽きる。


「……間に、合わなかった?」


「そりゃそうだ。

 まあそんな強くないし、さっさと倒して他の子兵も倒さないと大変だよ」


「ほ、他だと!?」


「そう、この家以外に、あっちの民家とあっち、それからそっちの森の方に三体村人虐殺中だよ」


「どうしてこんな事に……」


「さあ? 何か理由があるんだろうけど、私には分からない」


 山で戦っていたメイアが清廉の子兵を撃破したのを確認し、それが引き金になったのではないかと予想するが、本当の所は不明である。


「ほらほら襲ってくるぞ」


 手をパンパンと鳴らして注意を促すが、プリスターも店主も呆けたままであった。

 判断が遅れた。清廉の子兵が身を縮め、バネの様に解放したところで高速で飛び店主を轢いた。

 衝撃でプリスターが吹き飛び転がり、見上げた時には店主が血の池と肉片と化していた。

 それを見た瞬間プリスターは刀を抜き飛び出し清廉の子兵へと切りかかる。


「―――――ッッ!!」


 しかし。


「カハッ!?」


 膨れ上がった剛腕が振り下ろされ、再びプリスターが吹き飛んだ。

 同じくしてミナモのそばに居たイトウが跡形もなく消し飛び、天に召され消えて逝った。


「あ~あ、イトウさんの無死亡記録が終わっちゃった……」


 従魔は死んでも復活が可能だ。

 しかし死亡時にペナルティがあると言われていて、進化や何かに影響があるともっぱらの噂である。

 死亡時のペナルティについて検証しようにも、育て方や個体で差がある為検証しようもなく、あくまで噂だけが広まっていた。


「まあ、仕方ないか、何時かどっかで終わると思ってたから」


「姫!」


「姫じゃないよ」


 プリスターが再び戦線に復帰し、居合切りを仕掛けるが、攻撃は腕にめり込み途中で止まる。


「此奴ッ!?」


「武器を離して逃げた方が良いよ」


 驚くプリスターに警告するが、切った場所が瞬時に回復していきどんどん刀を取り込んでいく。

 なんとしてでも引き抜こうとするプリスターだが、腕を振り回されてプリスターが吹き飛んで行ってしまった。


「予備とか無いの?」


 地面に叩きつけらたプリスターに尋ねるが、返答する余裕はない。

 予備ではなく別な剣、鋭いサーベルを取り出してなんとか起き上がり武器を構える。


「がんばれがんばれ、これを倒して後16匹ともう一匹別な奴だ」


(何が、弱い、ですか……、滅茶苦茶、強すぎますよ。おまけに後16? 冗談でしょ?)


 ミナモ基準というよりも、ヴァルアク基準で言えば清廉の子兵は雑魚の部類に入る。

 ヴァルアクでの出現時期を考えると中盤付近。その頃には色々と対天使用の武具や魔法などあり、道中に出てくる雑魚でしかなかった。


「それよりも姫! 攻撃来るよ!」


「あー、そうだね」


 ぐぐぐっと清廉の子兵が手を挙げて拳を握る、天高く掲げた手はミナモの方を向くと今にでも振り下ろそうとしていた。


「五月蠅い奴ね」


 清廉の子兵の口から女性の声が聞こえてくる、それにプリスターは驚き目を白黒していた。


「一応言っておくけど、私に攻撃しちゃダメだよ、死ぬよ」


「それが命乞い? もっと必死に強請ったらどう? 貴女のちっぽけな命よりも大きく、ね」


「本当に攻撃しちゃダメだよ、フリじゃないからね、絶対だよ」


「どちらにしろ生かさない、この世界を浄化しなくてはならないのだから」


「姫ぇッ!?」


「だから攻撃は――」


 次の瞬間鮮血が迸った。

 プリスターが叫ぶと清廉の子兵は巨大な拳を振り降ろされ、鮮血を周囲へまき散らす。


「姫ッ……、え?」


 潰された、そう思っていたはずだが、目を閉じた次の瞬間には清廉の子兵の腕が消し炭になっていた。

 尻もちをつき、何が起きたのかわからぬまま清廉の子兵がミナモに視線を向けると、そこにはミナモは居ない。


「浄化が何なのかを教えて差し上げましょう」


 代わりにそこに居たのは真っ赤な炎のドレスを纏い、長い薄紅色の髪を靡かせる、ミナモと瓜二つの少女であった。

 髪の色と服以外にも、瞼の切れ目から青紫色の炎が零れそれが瞳の様に見える。

 ミナモが手に持っていた大剣は、ひび割れた場所はまるで血管のように深紅が張り巡らされ胎動しはじめる。


「……姫?」


 プリスターが小さく呼びかける、それに答えることなく、プリスターが瞬きした次の瞬間には清廉の子兵が上半身から蒸発するように消え去っていた。

 ミナモは大剣を突き出していただけで、何をしたのか理解できない。


「強さはたいして変わらない、かもしれないなぁ」


 瞬き、次の瞬間にはミナモがプリスターの傍に立っていた。


「姫、一体何が、起きてるの?」


「クックックッ、我はこの世界を滅ぼす破壊神なり~、って、そういうロールプレイの雰囲気じゃないよねぇ」


 腰を抜かしていた一般人が慌ててミナモ達の元へやってくる。


「た、助かるのか?」


「え~、助けるのぉ? どうしよっかなぁ」


 ぶりっこの様な声色は場違いで、悪夢でも見ている気分であった。


「……竜神様、助けてくれぇ」


 村人が無意識に祈りを捧げる。

 そこでプリスターが竜と言う単語にハッとなり村人の肩を掴んだ。


「竜神、竜神様です! そうです! 竜神様を祭る場所になにかあるかもしれません!!」


「竜神様の、……祠がある! 西の湖、西の湖だ!」


 村人が先導して走る、ミナモという不確定要素に縋る事はしない。

 プリスターは一瞬走り出すが、ミナモに求める様な視線を向ける。


「まあ、頑張ってきなさい。

 私は行かないよ」


 口を開き、何かを訴えようとしたが、その言葉を飲み込み涙をためて走り出す。

 その後ろ姿を見送り、ミナモは深々とため息を吐いた。


「今回は、まあ、特別って感じで」


 一度メイアの居る山の頂上を眺めて、人差し指を向ける。


「テイマーという暇つぶしを教えてくれたお礼だぞ」


 その刹那光の柱が山の一角に二つ降り注ぐ。

 一呼吸するとるとミナモの姿が消え、清廉の子兵が一体、また一体と消滅していった。


 ☆☆☆


 メイアは片手を必死に動かして這いつくばり、倒れているユニコーンの元へと向かう。

 ライオンはユニコーンの攻撃に巻き込まれて力尽き姿は無かった。


「もう少し、……ヘムイ頑張って」


 跡形もなく消え去ったキートの事よりも、今は子供達を連れて一刻も早くこの場を去ることを考えていた。

 自然回復したMPを使い、倒れるているユニコーンに回復を行う。自分は残ったポーションを飲み干しユニコーンに近づく。

 ユニコーンがよろよろと身を起こし、そこへ必死に騎乗した。


「よく頑張りました、とても素晴らしかったです。

 けど、もう少し頑張ってください、子供達を街まで非難させます」


 背につかまっているのが手一杯でヘムイを撫でることは出来ない。

 言葉だけでもヘムイはしっかりと伝わっており、必死になり立ち上がり、子供たちの方へと足を向ける。


「みなさん、もう大丈夫です、出てきてください」


 呼び掛けると木々の影から恐る恐る泣きじゃくりながら顔を覗かせる。

 出てきたのは三人しかおらず男女二人が消えていた。


「三人だけ? 二人ははどうしたんですか?」


「光が、ぱーって、消えちゃった」


「光?」


 ユニコーンの攻撃を受けたにしては距離があり、その光というのも該当する魔法などが思いつかない。


(敵の攻撃? もう分けわからない、けど迷っている時間はない、あんなのがもう一回現れたらもうお終いよ……)


 行方知れずの子供を探している余裕はない。

 メイアはヘムイに指示をして座らせ、子供達に乗る様に言いかける。


「わたくしは腕がふさがっています、どうかしっかりと捕まっていてください」


「ミイちゃんは?」


「……すみません、ですが今は貴方達の方が重要です、お願いします」


 女の子と仲の良かった子はしゅんとしながら背に乗り込む。


「姉ちゃん大丈夫?」


「ええ、大丈夫です、とは言いづらいですが、今は大丈夫です。

 全員しっかり乗りましたか?」


「……うん」

「だい、じょぶ」


 返事は弱弱しい、乗り込んだところでこの場から逃げるようにして空を駆けだした。

 村の方を見ると火の手が上がっており、その光景に子供達は言葉をなくしていた。


(もう、滅茶苦茶、……一体何が起きてるのよ)


 意味の分からないことに巻き込まれて、訳の分からぬ敵を倒し、一度たりとも死んだことのなかった従魔が力尽き、散々な結果であった。

 ただすべて悪い事ばかりではない。


(……一歩踏み出した、様な気がします、色々犠牲になった気がしますが)


 言葉では表せないが、達成感や進展した気がしている。あくまで感覚だけの話である。


(一先ず強力な戦力を連れてこないと、ロードオブテンス、その一人は確実にメルテトブルクに居るはず)


 Lo10を頼る理由はただ一つ、それぞれが強力な力があるからだ。

 メイアもそのLo10の一人であるが、存在を公表しているわけではない。とは言え、その知名度からLo10の一人ではないかという声が多く上がっていた。


(ロードは基本的に暇なしの人が多い、けどご意見番の様に、メルテトブルクに居城を構えているのは幸いですね)


 Lo10は納得の人選が多い、それゆえ多忙で出会うことすらままならない。

 不測の事態に備えてLo10の一人が最初の街メルテトブルクに拠点を構えていた。

 他にも白狼近衛騎士団が居るが、メイアとは付き合いも無く、街を離れているという事もあり頼る事はできない。


(くっ、流石に遅い、わたくし以外は子供ですが、怪我を治し切れていないと、こうも……)


 ヘムイは翼の一部が負傷しており回復魔法をかけても治ることは無い。その為速度が出ず、20分もかからない距離が40分以上かかりそうであった。

 切断などの大きな怪我は専用の魔法を何分か続けてかけないと効果が無く、メイアはそういった魔法を覚えてはいない。


(朝が来る、……今日ばかりはこの時間がもどかしい)


 空が光に滲み始め、紫紺の色に染まっていく。

 街の明かりが見えるのにそこまで辿り着くのがとてももどかしかった。


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